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[book club]東西逆転―アジア・30億人の資本主義者たち

2006-05-23 15:22:09 | book club
東西逆転―アジア・30億人の資本主義者たち 日本放送出版協会ここのところ世界的に株価が下がり気味です。月曜日も日経平均は後場に入って一気に
下げ足を早めました。その理由の一つに、インドのムンバイ株式市場が急落したからだと
言われています。ムンバイ市場が下げた要因は、インド経済が落ち目になったということではなく、
市場の需給面であったり、バブルを抑えるためのインド税制の変更に関わる点だったのようです。

それはともかく、今やインドの株式市場の下落が東京やロンドンにまで影響を与えかねないほど、
インドや中国の影響力が強まっています。この本は著者がインドや中国、その他世界の主要な
経済人から、著者の家の近所にある床屋に至るまで訪ねて(床屋へはただ単に髪を切ってもらうために
行ったのですけど)、世界経済の流れがいかに変わっているのかを紹介し、そのときアメリカは
どういった行動を採るべきかを書いたものです。

特にこの本で強調されている国家は、本の帯にあるように中国とインドです。世界史の視点から見て、
この2か国は影響力があった時代の方が長かったわけです。しかし程度の差こそあれ、中国もインドも
第二次大戦後に社会主義体制または厳格な官僚制度を選んだため、巨大な人口を抱えながらも、
世界の資本市場から見放されていました。

しかし冷戦が終わると、この二つの国家も冷戦の呪縛から解き離れたかのように、急速な
市場経済化が進みだしています。それは今の中国、インドの隆盛を見ればわかることですが、
長い世界史から見た場合、本来の軌道に戻ったとも言えるかもしれません。

その一方で、第二次大戦後しばらくの間、アメリカ経済は右肩上がりを続けました。これもアメリカが
西側諸国を引っ張っていくという一種の国策に由来しています。その裏でアメリカは技術開発を怠り、
日本に繊維、家電、自動車部門で抜かれ、製造業の多くはアメリカを離れ中国やベトナムに移り、
ソフトウェア開発はインドに任せるようになります(製薬・バイオの一部は逆にアメリカに流れ込んでいる
という事実も紹介されていますが)。しかし工場が海外に移っても、アメリカドルという最強の武器を
大量に刷っていれば、アメリカは安泰であるという考えに陥っています。今のアメリカは、ドルを大量に
刷ることで世界を助ける「浪費島」に成り下がっているというのです。

そうした状況において、今後各国が現在の基軸通貨であるアメリカドルやアメリカ国債の保有量を低め、
一気にドル安になるといわれる近未来、果たしてアメリカは「浪費島」のままでいいのかというのが、
この本の大きなテーマといってもいいでしょう。しかし同時にこの本で紹介されてる現実と将来とを
考えた場合、日本もこのままでいいのだろうかと不安になってきます。日本企業は著者も賞賛するように、
世界の市場で太刀打ちできるだけのものを持ち合わせていると思います。しかし政策担当者や、
規制、天下りなどにしがみついている人たちの間では、そうした競争認識があるのかは大いなる疑問です。

日本の場合には、企業のがんばりが官の怠惰でオフセットされているようにすら思えてくるのです。
そうした官の人たちにこそ、こうした本を読んでもらい、インドや中国の先回りをするほどの政策を
出していかなければと痛感します。


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