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あっけない最期

2007-04-25 18:05:34 | book club
「ベスト&ブライテスト」著者・ハルバースタム氏事故死(産経新聞) - goo ニュース
David Halberstam, 73, Reporter and Author, Dies(New York Times)
A tribute to my hero(ESPN)


人の死に対して「あっけない」というものがあるのであれば、ベトナム戦争の戦火の中取材を
続けたこともあるデイビッド・ハルバースタムが、交通事故で亡くなったというのは、
偉大なジャーナリストの最期としては、あまりにも突然でかつあっけないものかもしれません。

でもハルバースタムの功績はものすごいものであることには変わりありませんし、73歳だった
今でも大学へ講義に呼ばれるほど、アメリカではジャーナリストを目指す人たちにとっての
「神様」でありました。そしてなおかつ、今でも現役で取材活動を続ける姿にもすごいと
思わせてくれます。ちなみに事故に遭ったときには、1958年のNFLチャンピオンシップについての
書籍のために、Y.A・リトルに取材を行おうかというときだったようです。

ハルバースタムがすごいと思うのは、産経の記事にもあるように、守備範囲の広さにあると
思います。ただなんでも軽くクビを突っ込むというのではなく、例えばベトナム戦争時の政権の
内幕
にしろ、自動車産業にしろ、スポーツにしろ、尋常ではない突っ込み方が受けたのでしょう。

同時にハルバースタムは、もちろん現代について書くこともありましたが、1950年代、60年代の
アメリカについて言及するものが多いなという印象を受けます。ベトナム戦争に入らんかなと
しているところで、アメリカが最も輝いていた時期へのわずかながらの郷愁と、同時にアメリカの
短い歴史の中において、この時期こそが、アメリカの潮目が変わったと考えていたからでは
ないでしょうか。

こんな偉そうなことを言いながらも、自分がハルバースタムの本で「唯一」持っているのは、
「さらばヤンキース」という本です。この本は1964年のワールドシリーズを題材にして
書かれています。戦前戦後に渡って栄華を誇っていたヤンキーズは、日本では東京オリンピックに
燃えている最中に行われたワールドシリーズで、寡黙に仕事を成し遂げるボブ・ギブソンや、
今でもセントルイスのヒーロー、スタン・ミュージアル率いるカーディナルスに負けて以降、
落ち目の時代を迎えるわけです。このあたりは当時のアメリカという国家と重ねわせることが
できるんじゃないかと思います。失礼な話、ハルバースタムの著作、殊にアメリカ国外向けでは、
やや地味な部類に入るかもしれませんが、オススメの本です。

さらばヤンキース〈上〉―運命のワールドシリーズ
デイビッド ハルバースタム, David Halberstam, 水上 峰雄

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さらばヤンキース〈下〉―運命のワールドシリーズ
デイビッド ハルバースタム, David Halberstam, 水上 峰雄

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