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第3話(3)

 最悪のMDA-10海域(3)

 パートナーの中村3曹が胃痛を起こし、戦列を離れることになった。
交代要員として予備EOD員の田丸2曹がやってきた。

 「田丸2曹です。宜しくお願いします。」
今まで活躍の場がなかったので、えらく張り切っている。
「わかっていると思うが、これはチームワークだ。常に自分のこれからすることを、相手にわからせること、いいね。」

 やっかいな係維機雷が見つかった。
近くの海底に太い原油パイプが走っているので、現場での爆破処分はできない。
そこで、指向性の強い手製の爆薬キットを機雷の信管部分にゴムで結びつけ、発火装置のみを破壊、無能化する方法を、掃海部隊内部で開発した。

 ミネラルウォーター容器を使った爆薬を2個ずつ持って機雷に向かう。
今日は波があり、いつもより視界が悪い。
機雷が揺れている。
田丸2曹に、少し離れて見張るように合図する。

 機雷の触角が目の前に迫る。
大きく息を吐く。
慣れることはない。

 機雷の信管部分に爆薬の付いたゴムロープを引っかける。
触角は4つある。
次の触角に移ろうとしたとき、機雷がフッと動き、触角が目の前を通りすぎた。

 “ぎょっ”として機雷の反対側を見ると、ウエットスーツの足が見える。
“馬鹿野郎、同時に作業するやつがあるか!”
怒りを抑え、見張りに回る。

 発火装置を破壊した機雷にはバルーンを付け、それを圧縮空気で膨らませ、その浮力で海面まで上げる。
浮上した機雷を安全海域まで移動させ、爆破処分した。

 作業が終わった後、大塚は顔を真っ赤にして、田丸2曹をどなりつけた。
「すみませんでした。合図を早合点しました。」

 参考図:「写真集・湾岸の夜明け作戦全記録」、神崎宏他、朝雲新聞社、1991
     
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