「マンタらしきもの、探知!」
探知員が興奮して叫ぶ。
明らかに今までの沈底機雷UDMとは違う映像だった。 「また、海亀と違うんか。」
EOD員が確認潜水してみると、紛うかたなき“マンタ”だった。
安全を期し、“マンタ”の処理実績を持つ、アメリカ海軍のEODチームの協力を仰ぐことになった。
連絡船でやってきた彼らは、いかにも実戦で鍛えられた精鋭、といった感じだ。
彼らのリモートコントロール潜水艇は小型で操作しやすく、テレビカメラが付いている。
また、彼らのEOD用潜水具は呼気を外に出さない全閉式で、音に敏感に感応する機雷処分時の危険を減らせる。
対する日本の潜水具は呼気の半分を水中に出すため、音が常に出てしまう。
日本掃海隊の幹部とアメリカ軍指揮官との打合せに入る。
彼は必要なことだけを、単刀直入に話す。
大塚は乏しい英語力を振り絞って、質問した。
大塚らが“マンタ”までガイドする。
彼らは慎重に起爆装置を破壊した。
日米協力して、200キロもある機雷のフックにバルーンを付け、海面に浮上させる。
それを安全な海域まで移動させ、爆破処分した。
“マンタ”は外殻がFRP製である上、形状が台形をしていて、ソナーに探知されにくい。
感応装置もいろいろなバリエーションを持っている。
我らが掃海艇は、“マンタ”の上を何回となく通っていたはずで、触雷しなかったのは、幸運というしかない。
何日かして2個目の“マンタ”を発見、処分した。
こうして、日本の掃海部隊がペルシャ湾で処分した機雷は34個に達した。
“マンタ”2個を含む沈底機雷が21個、係維機雷が13個である。
これらのうち、処分にリモートコントロール潜水艇S-4が使われたのは、最初の頃の6個だけで、29個はEODにより直接処分された。(1個はS-4による失敗後、EODにより処分)
EOD員による危険と隣り合わせの活躍がなければ、この作戦は成功しなかったのである。
参考図:Wikipedia、”MANTA”
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