「見ろ!あれがボジャドール岬だ。」
甲板長のペドロが指さす方向を見ると、変化のない褐色の海岸が続き、その向こうには果てしない砂漠が広がっている。
「あそこの白波が立っているところだ。」
それは、岬とは名ばかりの小さな岩礁だった。
“ボジャドール岬 ― 過ぎし者は帰らず”
ヨーロッパの船乗りが30年前まで、最も恐れていた場所だ。
北アフリカのこの岬から先の海は炎熱のため煮えたぎり、陸地には草木一本生えていない。
海は難所ばかりで、怪物が住み、この岬を越えた者は二度と戻れない。
この恐れはとても強く船乗り達を捉えていた。
ポルトガルが西アフリカの探検事業を始めた後、何人もの探検家がこの岬を越えようと試み、失敗を繰り返した。
そして、この迷信を打ち破り、この岬を越えるのに30年もかかったのである。
マルコは16歳、エストレマドゥーラの小さな漁村に生まれた。
5人兄弟の末っ子で、10歳の時から漁舟に乗り込み、海に出ていた。
不漁や嵐の時は、粟やひえをかじり、飢えをしのいだ。
村には羽振りのよい若者がいた。
探検船に乗り、西アフリカに行ってきた男だ。
「給与はよいし、金や奴隷を見つけられれば報償がでるぞ。」
「帰ってこられる保障はあるのか?」
「運がよければな。ここで腹を空かしているより、ましだろう。」
参考図:「朝日百科世界の歴史16世紀」、朝日新聞社、1992
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