私は五・七幹部学校から、元の職場の機械研究所に戻ることができた。
職場の革命委員会では軍の影響力が弱まり、各派閥同士の抗争も消えて、職員は皆、友好的だった。
しかし、それは表面上のことのように感じた。
彼らの心の内では、相互不信と相手への疑惑がくすぶっていたのである。
いつ政治状況が変化して、また左に行くか、わからないからだ。
しかし、私にとっては、設計の仕事ができる喜びが、それらの不安を打ち消してくれた。
そのような中、政治状況は劇的に変化した。
今まで、仮想敵国No.1であり、帝国主義の元凶として非難してきたアメリカの大統領、ニクソンが中国を訪れ、毛沢東と握手したのである。
研究所の幹部をはじめ私たちは、人民日報のこの記事を読み、息をのんだ。
「どうなっているんだ、どうなるのだろう ---------- 」
続いて、我が国を侵略した、かっての敵国、日本の田中首相が周恩来首相と会談を行い、中日国交正常化へと動き出した。
これらの対外方針の大転換をめぐる指導部内の対立が、林彪のクーデター未遂を生んだのである。
周恩来、とう小平らは、文革の混乱により低下した国力を回復させるためには、西側との関係改善が不可欠と考えた。
毛沢東も渋々、それに同意したのだった。
しばらくして、とう小平が副首相に復帰し、経済優先は決定的となった。
しかし、毛沢東の妻、江青らの文革派はそれに激しく反発し、反撃の機会を狙っていた。
参考図:「中国文化大革命の大宣伝」、草森紳一、芸術新聞社、2009
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