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第3話(1)

 崩壊(1)

 ヒョードルが製図室で船体設計の実習をしていると、友人のミハイルが側に来て、小声でささやく。
”ベルリンで東西を分けていた壁が崩れた。ホーネッカー(東ドイツ国家評議隊議長)は、つぶれるぞ。”

 
 ゴルバチョフのペレストロイカ以降、ソ連影響下の東ヨーロッパで社会主義政権を揺るがす動きが拡がっていた。
1989年にそれが一挙に表に吹き出し、民主革命になり、いままでの社会主義政権を次々と倒していった。

 ポーランドでは労働組合組織「連帯」が政権を取り、東ドイツではホーネッカー政権が自壊した。
そして、東西ドイツ統一が実現する。
ハンガリー、ブルガリア、チェコスロバキア、ルーマニアがそれに続く。


 ヒョードル達は、それを恐ろしい思いで見つめていた。
「何と言うことだ。数十年もしっかりと団結してきたのに。」
「確かに、ハンガリーやチェコのように騒乱はあったが、こうもあっさり社会主義政権が倒れるとは!」

 皮肉屋のゴルチャコフがつぶやく。
「社会主義政権そのものに無理があったんだ。全てを計画し、統制することは長くは続けられないのさ。」

 「わがロシアは大丈夫だ。我が国が社会主義体制をつくり、発展させてきたのだから。」
「この難局を皆で団結すれば、切り抜けられる。」

 ヒョードルは不安に駆られた。
“その団結が、我がロシアでも危うくなっている。”

 革命当初は皆が貧しく、平等だった。
しかし今は、官僚や党の幹部など特権階級が、社会的富を独占している。

 参考図:「世界の国々の歴史・ポーランド」、河合美喜夫、岩崎書店、1991
     
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