gooブログはじめました!

第3話(4)

 崩壊(4)

 1991年8月のある日、造船所食堂のテレビの前に、大勢の従業員が集まっている。
ヒョードルが覗き込むと、皆、固唾をのんで画面に見入っている。

 「何があったんですか?」
「クレムリンで政変だ!」

 内相が声明文を読んでいる。
“ゴルバチョフ大統領は解任された。”
“我が祖国を襲っている未曾有の食糧危機と社会不安は、彼の政策の失敗によるものである。”
“ここに国家非常事態委員会を発足させ、全権を掌握する。”

 続いて、国防相、KGB議長が国民に平静を呼びかけた。
クレムリンの前に並ぶ、赤旗を掲げた戦車群が映し出される。

 「保守派によるクーデターだ!」
改革運動を進めている若者が叫ぶ。
「この混乱の責任をゴルバチョフにとらせるのは、当然だ。」

 「戦車で政権を倒すことには、断固反対する。」
「あの老人達が権力を握ったら、スターリン時代に逆戻りだぞ!」

 従業員達の間で、この武力行動には反対する声が次第に高くなった。
その後の事態は、この食堂の雰囲気と同じように進む。

 この保守派のクーデターに、ロシア共和国大統領エリツィンが立ちはだかる。
市民も立ち上がり、クーデター派の部隊と衝突した。

 空軍やウクライナ、カザフの指導部も、このクーデターに反対の意を表す。
クーデター側の内部分裂もあり、このクーデターは僅か3日間で、あっけなく失敗した。

 参考図:「ソ連崩壊」、日本テレビソ連横断特別取材班、日本テレビ放送網(株)、1991
     
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「大西洋」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事