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第1話(3)

ペルー1989(3)

 JICAのペルー事務所に出かけ、着任の挨拶をする。
今後の予定について、担当者と打ち合わせをする。
きわめて事務的だ。
後でわかったことだが、専門家たちが、いろいろな機材の追加要求をしてくるので、両者の間がしっくりいっていないようだ。
JICAの人にとって、専門家は事務方のことを考えない気ままな連中と写っているように見える。

 現地職員の黒田さんに、細かい説明を受ける。
「1ヶ月毎に行動予定表を出してください。」
「地方に行くときは届け出ること。」
「あなたが現在居る場所を第3者にわかるようにしておくこと。」

 次に生活上の注意点をいろいろ教えてくれた。
「何に関しても、”自分の身は自分で守る“に尽きます。」

 事務所を出て、語学研修を受けるペルー・カトリカ大学へと案内してもらう。
碁盤目状の通り、所々にある石畳、立派な教会が目に入る。
全体が赤っぽく見える。
歩いている人々の髪は黒く、肌は浅黒い。

 「10年ぐらい前までは、のんびりした良い街だったんですけれどね。」
黒田さんは十数年前にビジネスマンとしてペルーに来て、ペルーの虜になり、ペルー女性と結婚して、こちらに居着いてしまった、とのこと。

 「今では、インフレは天井知らず、泥棒だらけで、おまけに爆弾が時々破裂する。」
「でも、元々のペルー人は陽気で、気の良いやつが多いですよ。」

 大学での手続きを終え、ホテルに戻る。
予想以上に肌寒かったので、冬用の下着とジャンパーを買いに近くのスーパーマーケットに出かける。
道路沿いでまず目に付くのは、各々の建物が2m以上ある鉄製の頑丈な柵に囲まれていることだ。そして、ガードマンが目を光らしている。

 道路には物売りが多い。
歩いていると、新聞売りの少年が声をかけてくる。
「1ソル、1ソル」
手を振って、「ノーノー」といったが、しつっこく付いてくる。
何か気配を感じて横を向くと、少年が、片方の手に持った新聞で相手の視線を遮りながら、武田の肩掛けバックのチャックに手をかけている。

 「ノーッ!」
少年はものすごい形相で武田をにらみつけ、悪態をつきながら去って行った。
黒田さんの言葉を思い出した。
「ペルーでは、金持ちは歩かない。(車で移動する)」
     
     
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