
水没した道路を渡る人
(ロイター:2005.8.29撮影)
巨大ハリケーン「カトリーナ」が29日(現地時間)に
ルイジアナ州ニューオーリンズ市を直撃して、早くも
1週間がたった。
連日、その被害状況がメディアで伝えられているも
のの、いまだにその被害の実態がはっきりしない
状況は、僕ら日本人にはすいぶんと奇異に写る。
推計では、死者が数千人、あるいはそれ以上と言
われているが、実態把握には、まだ大分時間がか
かりそうである。
(1)今回のハリケーン
今回のハリケーンは、25日にフロリダ州に上陸する前から、その
巨大さから警告が出されていた。風速はルイジアナ州上陸時で60
m/秒であった。その10時間ほど前には75m/秒を示していて、
この時の中心付近の気圧は902ヘクトパスカル、米史上4番目に強いハ
リケーンであった。
日本の台風で、一番被害の大きかった1959年(昭和34年)の伊
勢湾台風と比較しても、その強力さがわかる。
「カトリーナ」 「伊勢湾台風」
中心気圧(hPa) 910-920 930
最大風速(m/秒) 60 45(伊良湖)
死者・行方不明者(名) ? 5,098
(2)大被害の原因
伊勢湾台風の時もそうであるが、強風による「高波」と極端に低い気
圧による「高潮」によって堤防が決壊したことが直接的な原因である。
ミシシッピ川の下流域に位置するルイジアナ州やミシシッピ州と日
本の伊勢湾、特に揖斐・長良・木曽川の下流域とは、大きな河川を
持つ点、そして川の水面より住宅地が低く、堤防により住宅が守ら
れている点できわめて類似している。そして、今回のルイジアナ州
やミシシッピ州も、昭和34年当時の伊勢湾も「高波」と「高潮」に
対し、十分とはいえない堤防の備えであった。
結局、ハリケーンの場合も台風の場合も、大きな被害の原因は水害
にあるといえる。特に堤防決壊による水害は、突発なだけに恐ろし
い。
特に、ニューオーリンズ市は、全米で水害の危険性が最も高いと指
摘されていた。ニューオーリンズ市の堤防が決壊する危険性は5年
前から指摘されていたのに、堤防の強化計画に対し、テロ対策やイ
ラク戦争の影響で連邦政府からの予算は年々削られる方向にあった。
さらに、今回のニューオーリンズ市の場合は、28日ネーギン市長
が「避難勧告」より強い「避難命令」を48万人の市民に出してい
た。しかし、報じられているように車を持たず、お金もない多くの
住民がそれに従わなかった。また、ハリケーン慣れにより、たかを
くくって避難しなかった人も多かったようである。
(3)被害の把握の遅れ
ニューオーリンズ市などでは、被災から1週間近くたってようやく、
取り残された人々の避難場所への移動や、救援物資の供給が順調に
進み始めたようである。しかし、被害実態の把握はこれからである。
遅れの原因は、まず政府自身、最近ハリケーンによる大きな被害が
なかったためか、最初たかをくくっていたように思う。そのため、
初動が緩慢であった。ブッシュ大統領は、被災者救援の遅れが大き
な問題になってきて、被災から5日目になってようやく現地を視察
した。
また、いまだに80%の地域が水没しているのも、被害実態の把握
を妨げている大きな原因である。
また、日本のように本籍・住民登録の制度がないこと、不法移民や
不法就労者が多いことも実態の把握を難しくしている。
そしてまた、この1週間続いている一部住民の略奪行為や暴徒化に
よる治安悪化も大きな問題である。治安の悪化が救援活動を遅らせ、
救援活動の遅れが被害実態の調査を遅らせている、といえる。
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