現在の佃島(2006.8.3撮影)
東京都心は、ヨーロッパの都市
などに比べ活気はあっても、建
物の形状や高低などもさざまで、
雑然としていて街並みの景観という点では著しく見劣りがする。
1997年末になって、ようやく都の景観条例が公布・施行され、景
観問題に取り組み始めた。それでも、経済界や産業界の意向もあり、
まだまだ開発に軸足が置かれ、景観はおろそかにされてきた。この1
0年ほどの間の高層ビルや高層マンションのすごい増え方をみればわ
かる。
最近になり、都は「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」なるもの
を制定し、個性豊かで魅力のあるしゃれた街並みづくりを進めている
が、これは大いに歓迎できる。そして、この条例に基づき、現在10
ヶ所ほどの「街並み景観重点地区」を指定している。
ところで、僕は、現在指定されている約10ヶ所がどういう条件で選
ばれたかわからないが、柴又帝釈天周辺地区などを除いて依然として
開発重視の臭いが強いと思う。それが残念である。
もっと古い街並みを、保全、整備する観点が必要ではないか。古い街
並みとは、例えば、浅草や根津神社周辺(柴又が入っているのだから
)、神楽坂、神田神保町、巣鴨、谷中、両国などなどの周辺。そして、
僕の個人的な好みでいえば、佃島なども。
また一方、景観に悪影響を与える要素は色々あるが、最大のじゃまも
のは高層マンションだと思う。平成5年に、僕が撮った佃島の写真と
今の風景では、様相が一変している。その犯人は高層マンションであ
る。
かつての古い街並み(佃島の場合ちょっと入り組んではいるが)を、
こんなに簡単に破壊していいものだろうか。
すでに遅い。土門拳の写真(昭和20年代後半から30年代前半)の
風景はもちろん、荒木経惟の写真(平成元年頃)にある風景を、もう
再び見ることはない。
<参考>
「街並み景観重点地区の名称と景観づくりの方向」
(東京都都市整備局)
<平成16年3月3日指定>
(1)赤坂九丁目地区(約10ha)
「良好なオープンスペースを備えた新たな複合市街地景観の形成」
(2)豊洲二・三丁目地区(約53 ha)
「運河や産業遺産などを活用した魅力あるウォーターフロント景観の
形成」
(3)豊洲五丁目地区(約13 ha)
「水辺や緑のうるおいのある歩行者空間を確保した複合市街地景観の
形成」
(4)豊洲六丁目地区(約110 ha)
「東京の海の玄関に相応しい多彩なウォーターフロント景観の形成」
(5)常盤台一・二丁目地区(約39ha)
「緑豊かで落着きのある住環境を整備・保全し、住環境と調和した
魅力ある駅前商業施設等を誘導するうるおいにあふれた景観づくり」
(6)柴又帝釈天周辺地区(約9ha)
「帝釈天を中心に歴史的景観資源をネットワーク化した景観づくり」
<平成16年5月14日指定>
(7)大手町・丸の内・有楽町地区(約119ha)
「首都東京の顔として都心にふさわしい風格のある新しい都市景観の
形成」
<平成17年3月25日指定>
(8)汐留西地区(約5.5ha)
「西欧の香りが漂う魅力的な街並み景観の形成」
<平成18年2月8日指定>
(9)大橋一丁目周辺地区(約11.3ha)
「目黒川とR246を軸に、人にやさしく歩く楽しみのあるしゃれた
街並み景観づくり」