青空文庫

徒然なるまま自分の面白いと思う本の書評や感想を書き綴っていきたいです。最新の本だけではなく、古書にも興味を持っています。

山本義隆「世界の見方の転換」

2014-03-26 09:56:04 | 日々思うこと

本日は私用で有休いただいています。先日みすず書房から山本義隆「世界の見方の転換」という書籍が出版されました。氏は「磁力と重力の発見」「16世紀文化革命」「世界の見方の転換」の3部作をもって、なぜ近代科学が西洋に誕生したのか?という疑問に対する自分なりの答えを書くことができた、と書かれています。

まだ読み始めたばかりですが、「16世紀文化革命」では職人や専門職の間に蓄積されていた経験知が母国語で出版され始めたことがアリストテレス世界観の打破につながったという点に力点がおかれていましたが(あくまでも私の理解です)、「世界の見方の転換」ではいわゆる貴族側からの理論知がいかに変革されていったのかが書かれており「16世紀文化革命」を補完するような内容になっているそうです。

氏は「磁力と重力の発見」を出版したのちは20世紀のボーアとアインシュタインの論争を追跡したいと思っていたそうですが、福島・原発事故の問題から「明治以降の科学技術のどこに問題があったのか?」に正面から向き合いたいとの表明をしています。そういう意味ではアカデミズムの中にいて科学史を専攻している人たちが原発問題についてどのように考えているのか興味あるところです。

実践的学問としての科学史というのであれば今・現在の問題である原発問題について科学史家の立場から何らかの表明をしてほしいとは思いますが、書店を見回しても原発について科学史関係者の書籍が見当たらない気がします。フクシマの問題に対しても山本義隆氏が出版した「福島の原発事故をめぐって」しか私は今のところ知りません。もしどなたかご存じであればぜひ教えてください。

※それにしても山本義隆氏の物理学(ひいてはこの世界)に対する認識はあまりにも深く、自分の一生でどれだけこの人に近づけるのだろうか?と感じてしまいます。数学、物理学、社会科学、歴史観、哲学・思想、、、以前このブログで書いたかもしれませんが、私の好きな写真家・星野道夫が「オーロラの彼方へ」という写真集のなかでこんなことを書いています。

・・・この土地に暮らしていこうと思った。そう思い始めたら、再び僕はこの土地の入り口に立たされていた。目の前の地図が消え、風景さえも違っていた。また、一から歩き出さねばならなかった。・・・

文字通りに受け取って良いのか分かりませんが、私は物理学という世界で星野道夫が受けたような経験をしました。そう、正直に白状しますが社会人となり山本義隆氏の著書を読んで今まで自分がやってきた物理学がすべて崩れ去り、「また、一から歩き出さねばならなかった」のです。おそらく今見ている物理と学生時代の物理の風景は大きく異なると思います。

最後に私がすきな「ケプラーの世界地図」を載せて今回はおわります。出典は下記ウィキペディアページです。ちなみに山本義隆氏の「重力と力学的世界」の裏表紙にも使われており、この地図については色々と調べてみたいことがあります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Kepler-world.jpg

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