青空文庫

徒然なるまま自分の面白いと思う本の書評や感想を書き綴っていきたいです。最新の本だけではなく、古書にも興味を持っています。

自然は真空を嫌うか

2013-09-23 06:55:36 | 日々思うこと

自然は真空を嫌うか

西條敏美「物理学史断章」の第4章「自然は真空を嫌うか」を読んで長年の謎がやっと解けました。どんな謎を持っていたかというと、万学の祖と言われるアリストテレスがその著「自然学」という書物の中で、「空虚はいかなる仕方でも存在しない」という説を唱えていて、それが後々のガリレオやパスカルの時代まで影響を及ぼしたそうですが、その根拠はどこにあったのか??ということです。‐アリストテレスがBC400年頃、ガリレオがAC1600年頃と考えると、なんと2000年にわたって引き継がれる世界観をつくったことになるわけです!!‐

実験を基礎とせず、思弁・空想的なアイデアが多いように感じられる古代ギリシャの哲学者の書いていることはよくわからないですが、当時はそれが最先端の「科学」であり、やはりなんらかの根拠をもって述べられていたことは間違いないだろうと思われます。だとすると「自然が真空を嫌う」と唱えたアリストテレスの根拠はいずこにあったのだろうか??これが長年の疑問でした。その回答がまるまる出ていたので、納得しました。アリストテレスの書いた本を読めばよかったのですけれどもね(笑)アリストテレスの考えた内容は下記のようなことのようです。

①同じ長さのガラス管を2本用意し、一方には濃いシロップを満たし、一方には水を満たす。そこに小さな鉛球を同時に落とす

②鉛球は当然濃いシロップのほうがゆっくり落ち、水に入れたほうが速く落ちる

③以上の結果から、密度の大きい媒質中では球に対する抵抗力が大きくなるため球はゆっくり落下し、密度が小さく抵抗力も小さい媒質中では球は速く落下する

④もし仮に真空が存在するとすると、そこでは抵抗が0と考えられるから、球の落下速度は無限大となる

⑤もしこの宇宙で、速さが無限大となるとすると同時に2か所以上に同一の球が存在できることになってしまう

⑥よって自然は真空を嫌う

というわけです。ガッテンです。。。

第4章はこの「自然は真空を嫌う」という考え方から、いかに人類が「真空」「大気圧」という概念をつかんでいったのかが説明されます。ガリレイ、トリチェリ、パスカル、ゲーリッケ、ドルトンという系譜にそって、最後は真空に対する現代物理学の解釈が少しだけ述べられています。トリチェリの実験も教科書ではさらりと大気圧の測定としか説明されませんが、そもそものトリチェリの研究動機をしっかり説明しないと、本当の目的やなぜそれが歴史に残るような実験だったのか?が見えてきませんね。

 

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