kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ

2019年07月18日 | ★★★☆☆
日時:7月10日
映画館:八丁座

1930年代、ナチが政権を取り、ユダヤ人差別を激化させる過程で、形式上合法的に数限りない美術品を略奪、それらを国家資産とする一方、ヒトラーとゲーリングがお気に入りの作品を購入。古典的な作品はドイツ的な美術として扱われた一方、前衛主義などの作品は退廃芸術として扱われた。
ナチスと略奪美術品を巡るその顛末を様々な視点から描いたドキュメンタリー映画。

となると原題・邦題ともに語弊アリで、ピカソが芸術を武器にナチやファシストに対抗したかという話ではない。
ピカソ一辺倒だったら足が遠のいたかも知れないが、予告編で退廃芸術展が出てきたおかげで俄然観る気になるというもの。

取り上げられる事件は多岐にわたり、次々と話題が切り替わる。
ユダヤ人や美術品の物語、ナチのお抱え画商、ニュールンベルグ裁判、映画「ミケランジェロプロジェクト」でも取り上げられたモニュメントメンの活動、ヒトラーとゲーリングの確執、贋作画家、大ドイツ芸術展と退廃芸術展、戦後の略奪芸術品の返還、ローゼンベルグが率いるERR部隊の活動、秘匿美術品と2012年に発覚したグリュリット事件・・・と盛りだくさんの展開。(何しろ、開幕20分で終戦になってしまうので、その後の展開が心配になるほどだ。)

既知の話題もあれば新しい発見もあり、なかなか興味深く面白い。特にSSがドイツ国内の国家内国家として存在していたのも伺い知れる。現在でもヨーロッパの各所にナチが略奪した金銀や美術品が人知れず眠っているかと思うと、悪魔的な誘惑を感じるなあ。

が、それらの話が時系列でストーリー展開するわけではなく、コラージュ的にあっちこっちに行くものだから、映画としてとっ散らかった印象はまぬがれない。結果として、映画のどこに自分の感情を寄り添わせたらいいのか、ちょっと迷ってしまう。

もちろん、最大のテーマはナチの悪行なのだが、そこから考えさせられるのは「美術品を誰が所有するのが正しいのか」、さらに言うと「美術品とは何なのか」という根源的な問題だ。
映画には出ないが、IS等による歴史的遺産の破壊を見ると「人類と美術品の価値の関わり」とは何なのかと改めて思う。

ところで、この作品、ナレーションの入りなどが劇場用映画というより、ドキュメンタリー番組を思わせる。徐々に双方の境界線がなくなってきている。






題名:ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ
原題:HITLER VERSUS PICASSO AND THE OTHERS
監督:クラウディオ・ポリ
出演:トニ・セルヴィッロ


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