kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ようこそ映画音響の世界へ

2020年11月28日 | ★★★★☆
「映画の見方が変わる」という惹句によくお目にかかるのだが、このドキュメンタリー映画もまさにそんな一本。

音にフォーカスして映画の製作現場を語り、前半はサイレントから5.1chまでの音から見た映画史、後半は声、ガヤ音、効果音、環境音、音楽など各ジャンルでの説明となっている。

元々、メイキング映画とか映画史映画は大好きだし、職人のこだわり抜いた仕事ぶりを見せられると心からワクワクする。

世の中、鈍感な方が生きやすいから自らシャットダウンしていると思うが、耳を澄ますと世の中には様々な音に満ちている。今のキーボードをたたく音に、外を走る自動車のエンジン音、遠くでなくカラス、何かのモーター音・・・
それら1つ1つの音に様々なエンジニアが関わっているかと思うと、当然、映画の見方も変わろうというもの。

スクリーンには多くの関係者が登場するが、その中でも特にウォルター・マーチ、ベン・バート、ゲイリー・ライドストロムの3人を中心にフューチャリングされている。にしてもベン・バートなど思ったより若い。よく考えれば「スターウォーズ/新たなる希望」に関わっていたとはいえ、USCの学生として参画していたなら、私と15歳とか20歳くらいしか違わない訳だ。

みんな技術者なのでそんな気の効いた面白いことが言えるわけではない中、やはりジョン・ラセター監督は数シーンとはいえ面白い。本当にアニメキャラみたいな人。

登場する作品も数多いが、改めて指摘されると確かに印象的な音はよく覚えている。「プライベートライアン」のオマハビーチをわずかとはいえスクリーンで再見できるのは嬉しいなあ。(ちなみにパンフレットに記載された映画音響史には見事に同作が落ちている。オイオイ、オスカーも取っているんだぞ。)

気になったのは、ヌーベルバーグには触れてレオーネ作品には触れていないこと。いやいや、音が語るという点でレオーネ映画の役割は重要でしょう。

さらに字幕含めスクリーン上のテキストが多すぎて、ついていくのに一苦労。モノラル、ドルビー、5.1chなどの図解は分かりやすいのだが。

最後にベン・バートが、若くしてオスカーを獲った後のスランプについて語るのだが、それがハリウッドの世界ではなく、ものすごく身近に感じる肌感覚がある。そこに本作の作り手の「仕事に対する愛情」を感じさせてくれます。






題名:ようこそ映画音響の世界へ
原題:MAKING WAVES
監督:ミッジ・コスティン 
出演:ヴィーゴ・モーセンテン、マハーシャラ・アリ


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