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■ワクチン会社から謝礼を受け取っていた番組コメンテーター医師の実名 週刊ポスト(2021.04.26)

2022-07-22 06:58:17 | 日記

 


■ワクチン会社から謝礼を受け取っていた番組コメンテーター医師の実名

週刊ポスト(2021.04.26)

https://www.news-postseven.com/archives/20210426_1654810.html?DETAIL


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テレビで連日、コロナワクチンの有効性についてコメントをする医師たち。


ワクチン接種を待つ視聴者にとって、専門家の発言は判断を左右する重要な情報だが、気になるデータが存在する。

NPO法人「医療ガバナンス研究所」と探査報道メディアの「Tansa」は、共同で「製薬会社から医師個人に支払われた金銭」をデータベースとして公開している。


医療ガバナンス研究所の調査責任者である尾崎章彦医師が言う。

「医療者(医師)が処方する薬の売り上げが製薬会社の収益の大部分を占めている。両者の関係性について透明性を高める必要があると考え、作成しました。製薬会社がホームページで公開している医療者への支払い情報を基に、金額を調査した」


製薬会社が医療機関や医師に支払う謝礼は、「研究開発費」「学術研究助成費」「原稿執筆料等」「情報提供関連費」「その他の費用」に分類されるが、尾崎医師らが着目したのは、病院を通すことなく医師個人に渡される「原稿執筆料等(講演料や新薬開発のコンサル料)」だ。


そうした金銭を受け取る医師たちには、テレビでコメンテーターとして活躍する専門家もいる。

本誌・週刊ポストが確認すると、「2020新型コロナ関連専門家・テレビ番組出演本数ランキング」(ニホンモニター調べ)の上位10人のうち4人がワクチンメーカーから謝礼を受け取っていた。


一番金額が多かったのは、昭和大学医学部客員教授の二木芳人医師(出演本数1位)だ。


すでに公開されている2016年度(337万9300円)と2017年度(286万3811円)、未公開の2018年度分(90万3690円)を合わせると、3年間でファイザーから約714万円、アストラゼネカからは11万1370円(2017年度)、ジョンソン・エンド・ジョンソンの製薬部門であるヤンセンファーマからも5万5685円(2017年度)を受け取っていた。


「コロナ前」のものとはいえ、製薬会社から謝礼を受け取っていて、客観的なコメントができるのか。二木医師に質した。


「全部講演料で、肺炎球菌のワクチンに関する講演をファイザーさんから頼まれることが多かった。昨年医療現場をリタイアしてからは、ほとんど講演をしていません。今はワクチンに対する不安が必要以上に大きくならないよういろんな情報をお伝えするように努めている。特定のメーカーの肩を持つことはありません」


次に金額が多かったのは愛知医科大学大学院教授の三鴨廣繁医師(出演本数10位)。

ファイザーからは約504万円、ヤンセンファーマから17万6366円となっている。


国際医療福祉大学主任教授の松本哲哉医師(出演本数4位)はファイザーから2017年に約154万円など計約348万円、東京歯科大学市川総合病院教授の寺嶋毅医師(出演本数5位)もアストラゼネカから約139万円を受け取っていた(いずれも2016~2018年度の合計)。

 

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■ワクチン会社から謝礼を受け取っていた番組コメンテーター医師の実名
週刊ポスト(2021.04.26)
https://www.news-postseven.com/archives/20210426_1654810.html?DETAIL

 

 


■なぜ“日本製ワクチン”は出来上がらないのか? 〈専門家に聞いた「ワクチン敗戦」11の疑問〉 文春オンライン 2021/05/01 長田昭二

2022-07-22 06:57:56 | 日記

 

■なぜ“日本製ワクチン”は出来上がらないのか?

〈専門家に聞いた「ワクチン敗戦」11の疑問〉

文春オンライン 2021/05/01 長田昭二

https://bunshun.jp/articles/-/45219

 

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期待されていた「国産ワクチン」はどうなっているのか。

日本ウイルス学会理事長で、大阪大学感染症総合教育研究拠点の松浦善治特任教授に、いまさら人に聞けない「新型コロナの国産ワクチンに関する11の疑問」を解説してもらった。

 

・どうして、これほど日本の接種は進まないのか?


【Q1】海外ではワクチン接種率が上昇し、成果も上がっているのに、日本ではようやく高齢者の接種が始まったばかりです。どうしてこのような状況になってしまったのですか。


【A1】ワクチンを作れる国はまず自国民の接種を優先するので、他国への供給は後回しになります。

もし日本が自前のワクチンを持っていたとしても、同じことをしたはずです。

つまり、ワクチンは「安全保障の切り札」なのです。

 海外の多くの国は、今回のような緊急時には通常時とは違って、新しい薬剤の承認を迅速に進められる仕組みを整えています。

日本は「安全性を優先する」という理由で、国内で使う薬剤の承認には慎重で、どうしても時間がかかります。

安全性を追求することは悪いことではないけれど、結果として最前線で働く医療者や重症化リスクの高い高齢者も、なかなかワクチンを打つことができずに待たされる、という結果を招いているのです。

 

・ファイザーのワクチンがいち早く大量生産できた理由とは?


【Q2】日本でも、これまで様々なワクチンが開発されてきました。従来のインフルエンザのワクチンなどと同じように、新型コロナウイルスのワクチンも速やかに作れないのでしょうか。


【A2】新型コロナウイルスに向けて開発されているワクチンには、全く新しいタイプと、従来からあるタイプがあります。

 そもそもワクチンとは、病原体の毒性を弱めたり、無毒化したもの、あるいはその一部を体内に接種して免疫システムに記憶をさせておき、次にその病原体が体内に侵入してきた時に、免疫システムに「あいつだ!」と判らせるために打つもの。

外敵の正体がわかれば免疫システムが作動して排除してくれます。

 そこで従来型のワクチンには、病原体そのものを弱毒化させた「生ワクチン」、病原体の感染性を無くした「不活化ワクチン」、病原体の感染に重要なタンパクの一部を接種する「タンパクワクチン」などがあります。

このようなワクチンはこれまで日本でも多く開発されており、通常は10年以上の開発期間を要します。

 これに対して、日本でも接種が始まったファイザー社のワクチンは「mRNAワクチン」とよばれるもので、これは病原体そのものは使いません。

対象となるウイルスの遺伝子(設計図)を体内に入れることで、「こんなヤツが来たら攻撃しろ!」と命令する、新しいタイプのワクチンです。

この設計図は遺伝子の配列さえわかれば簡単に作れて、すぐに生産に入ることが可能です。

 


・「日本製」が出来た頃には、日本人は他国製を接種済み?


【Q3】では、国産ワクチンの開発はどんな状況なのでしょう。日本はmRNAワクチンを作れないのですか。


【A3】今回ファイザーが開発したmRNAワクチンは、じつは以前から、日本でも開発に向けた研究が行われていました。

しかし、研究費が継続されず、研究そのものが立ち消えになってしまったため、たとえ試作品は作れても、スピーディーに治験(薬やワクチンの有効性や安全性を検証する試験)をして、大量生産する体制が整備されていませんでした。

 とはいえ、そんな中でも日本のいくつかの企業がワクチンの製品化に向けて取り組んでいることはご存じのとおりです。

 ファイザーなどと同じmRNAワクチンの開発に取り組んでいるのが、第一三共と東大医科学研究所。

また、遺伝子創薬企業アンジェスのDNAワクチンは、mRNAワクチン同様、ウイルスの表面にある「スパイクタンパク質」という突起物(受容体)の遺伝子を増殖させたもので、これを打つことで体内にそのウイルスのスパイクタンパクを作り出して抗体にするという、やはり従来にはなかった新しいタイプのワクチンです。

また、KMバイオロジクス(旧化学及血清療法研究所)の不活化ワクチン、塩野義製薬のタンパクワクチンなど、従来型のワクチンの開発も進められています。

 ただ、それらのワクチンが製品化される頃にはファイザーやモデルナの既存ワクチンを多くの国民が接種し終えていることでしょう。

せっかく出来上っても、ウイルスの流行期に間に合わないかも知れません。

 また、mRNAワクチンが「95%」という極めて高い有効性を示しているのに、あえて新しいワクチンの治験に参加する人がどの程度いるのか、という問題もあります。

すでに有効なワクチンがあるのに、治験に参加することで副反応が出る危険性もゼロではないのに、です。

 このように、最初の出遅れが大きく影響を及ぼしてしまった日本のワクチン開発ですが、今後新しいパンデミックが出現したときには、海外のメーカーに依存しないために、ここでワクチン開発の実績を残し、その技術を継続して持ち続けることが重要です。

 

・なぜ、ここまでワクチン開発のスピードに差が出るのか?


【Q4】日本と海外で、ここまでワクチン開発のスピードに差が出たのは、技術的な問題以外にも理由があったのでしょうか。


【A4】一番大きいのは、「感染症に対する危機感の違い」です。

多くの国々では、感染症対策を「国防」という視点で捉えています。

いい例がアメリカで、2001年の同時多発テロ以降、生物兵器に対する警戒感を強めており、ウイルス対策もその延長線上に置いています。

事実、今回新型コロナ用ワクチンを開発したモデルナは、アメリカ国防省から多額の支援を受けています。

イスラエルがワクチン接種率で群を抜いていることも話題になっていますが、ここも常に戦時下のような状態にあったため、バイオテロから国を守る、という意識の高さが積極的な取り組みの根底にあるといえるでしょう。

 一方、台湾や韓国は、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)で痛い目に遭っているので、感染症対策に本腰を入れていました。

ところが日本は過去にそうした経験を持たないため、感染症対策を重視することなく来てしまいました。

 

(中略)

 

・日本のワクチン開発の実力は?


【Q6】日本のワクチン開発技術は世界の中でどのあたりに位置しているのでしょう。


【A6】技術力は決して劣ってはいません。

ただ、マンパワーとインフラの面で圧倒的な遅れを取っています。

研究費がなければ研究者は育ちません。

そのため優秀な人材は海外に引き抜かれたり、国内に残った貴重な研究者も、少ない予算を切り詰めて研究するしかないのです。

 研究施設にしても同様で、日本にはBSL4(バイオセーフティーレベル4=ウイルスや細菌などの微生物を安全に取り扱うことのできる最高水準の施設)は国立感染症研究所と今年の夏に竣工予定の長崎大学の2カ所しかありません。

新型コロナが落ち着いたとしても、いつエボラやラッサなどの危険なウイルスが入って来るかも分からない中で、その体制はあまりにも脆弱過ぎるといえるでしょう。

 

・mRNAワクチンの効果をどう評価するか?


【Q7】mRNAワクチンの効果について、当初は疑いの目もありました。どのようにご覧になっていますか。


【A7】じつは私も最初は半信半疑でした。

でも、これだけの効果を見せつけられると、「早く打ちたい!」と心待ちにするようになりました。

 今回のコロナ禍で私たち人類が得た最も大きな収穫は、mRNAワクチンの有効性が証明されたことです。

じつは20年も前から、mRNAを治療薬に使う動きがあり、2009年の新型インフルエンザ流行時には、アメリカでmRNAワクチンの試作もされていました。

それが今回初めて多くの人に投与され、圧倒的な有効性を示すことができたのです。

 mRNAワクチンは製造にあたって、従来のワクチンのようにウイルスを増やして、不活化して、何年もかけて有効性と安全性を評価する手間がかかりません。

今回mRNAワクチンの優位性が示されたことで、ワクチン開発の仕組みがガラッと変わるはずです。

これは人類にとって非常に大きな出来事です。

 

・ウイルスが変異しても、ワクチンの効果は持続するのか?


【Q8】すでに接種が始まったワクチンの効果の持続性や変異株への有効性、副反応の危険性はどうなのでしょう。


【A8】ファイザー社のワクチンは接種回数が2回とされ、同社のアルバート・ブーラCEOが「3回目の追加接種が必要になる可能性がある」と発言したとの報道もありました。

しかし、データでは1回の接種でプラセボ群との明らかな差が出ており、また接種から6カ月が過ぎても中和抗体価が下がっていない、つまりワクチンの有効性は落ちていないようです。

 しかも、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンやアストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、変異株に対しても中和効果はわずかに落ちるものの、それは全く問題ないレベルです。

mRNAワクチンについて言えば、90%の確率で感染を防ぎ、もし感染したとしても病気を発症させることはなく、さらに重症化を防ぐ作用も持っています。

つまり、ウイルス感染を3段階にわたってブロックしているので、それを逃れた変異株が体内で増殖することは考えにくい。

そもそもmRNAワクチンはウイルスが変異しても変異に合わせた調整が可能なので、その点でも有利と言えます。

 副反応については長期的な観察が必要になりますが、現状を見る限り深刻な問題は出ていないようです。

もちろん、ワクチンに抵抗感を持つ人には「打たない権利」があるので、それは尊重されるべきでしょう。

ただ、国民の7割が免疫を持てば集団免疫が成立するとされているので、これも大きな問題にはならないと考えます。

 

(中略)

 

・なぜ接種率が高いのに感染者数が下がらない国がある?


【Q10】インドではアストラゼネカ社のワクチンを接種しているのに効果が出ていないようです。他にもワクチン接種率が高いのに感染者数が思うように下がっていない国もあるようですが、どんな理由が考えられますか。


【A10】インドでは自国で生産したアストラゼネカ社のワクチンと、国産ワクチン「コバクシン」を接種しているようですが、9割はアストラゼネカのワクチンを接種しているとの報道がありました。

インドでは既に1億人以上がワクチンを接種していますが、人口当たりの接種率は決して高くなく、1日当たり感染者が30万人を超えるという厳しい状況にあるようです。

このようなインドの状況をもって、ワクチンを接種しても感染を制御できないと判断するのは無理があると思います。

 ワクチンは、感染を防ぐ、感染しても病気の発症を防ぐ、あるいは発症しても重症化を防ぐ、の3つのステップで効果を発揮します。

したがって、ワクチンを接種してもウイルスに感染し、ウイルスを体内で増やしながら発症していない人も沢山いるわけですから、三密を避けるなど、行動変容が重要です。

 

・「甘い考えのツケが回ってきた状況」


【Q11】今回の“コロナ禍”で日本人が学んだことは何でしょうか。


【A11】すでに触れた通り、ワクチンの研究基盤の脆弱性により、新型コロナウイルスのワクチン開発が遅々として進まなかったことは事実です。

だからといって、急に巨額のお金を出しさえすればワクチンが簡単に作れるというものでもありません。

時間をかけた基礎研究で積み重ねたデータと技術、そしてインフラが、いざという時に威力を発揮するのです。

 日本はこれまで「“いざという時”は来ないもの」、と甘く考えてきました。

いまはまさに、そのツケが回ってきた状況。国策として広い分野の基礎研究者を手厚く育成し、有事に備えた研究施設を整備し、つねにメンテナンスをしておく……。

そうした「備え」の重要性を、身をもって体験しているのです。

この反省を元に、今回は外国製のワクチンに助けてもらうとしても、次のパンデミックに向けた強固な備えを整備するために、いまこそ意識を変えて取りかかるべきでしょう。


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なぜ“日本製ワクチン”は出来上がらないのか?
〈専門家に聞いた「ワクチン敗戦」11の疑問〉
文春オンライン 2021/05/01 長田昭二
https://bunshun.jp/articles/-/45219


■国産ワクチン、なぜ出てこない? 塩野義・手代木社長に聞く 日経ビジネス 2021.3.30 大竹剛 日経ビジネス副編集長

2022-07-22 06:57:37 | 日記

 

■国産ワクチン、なぜ出てこない?

塩野義・手代木社長に聞く

日経ビジネス 2021.3.30 大竹剛 日経ビジネス副編集長

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/032600173/


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ー塩野義製薬を含む日本の製薬会社のワクチン開発が欧米勢より遅いのはなぜでしょうか。

 

手代木功・塩野義製薬社長(以下、手代木氏):ワクチンや治療薬、診断薬を開発するフットワークが重いのではないかと見られていることについては、真摯に受け止めないといけないと思っています。

 もちろん、日本の製薬会社は規模が欧米に比べて小さいとか、バイオ医薬品の潮流に全体として乗り遅れたとか、そういった理由もあるでしょう。

ただ今回、欧米で接種が始まっているメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンにしても、ウイルスベクターワクチンにしても、日本にそうしたプロジェクトをやるベンチャーや製薬会社がなかったのは、産官学でそうした基盤を育ててこなかったからです。

その点については、欧米に学ぶところは多いと思います。

 また、緊急事態だという割には、緊急時に備える制度が不十分という点もあります。

米国では、Emergency Use Authorization(EUA、緊急使用許可)という、通常の薬事承認ではない制度があります。

今、日本で接種が始まっている米ファイザーのワクチンなどは、通常の承認ではなくてEUAを受けています。

 いわば、「平時」と「戦時」の体制の違いが、日本と欧米との間で際立ってしまったと思います。

 


ーワクチンの開発で、日本は「戦時」への備えが十分ではなかったということですか。


手代木氏:一言で評価するのは難しいのですが、ワクチンの開発については当初想定していなかった状況になりました。

 ワクチンの種類で分けると、ファイザーと米モデルナのmRNAワクチン、英アストラゼネカと米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のウイルスベクターワクチン、米ノババックスの組み換えタンパク質ワクチンの3つが、圧倒的に開発が速かった。

しかし、日本にはこれらの開発基盤がなくて、不活化ワクチンという伝統的な技術しかありませんでした。

これは、インフルエンザのワクチンをつくるために使っている技術で、卵で培養したウイルスを不活化するものです。

 新型コロナウイルスのワクチンには、卵でウイルスを培養して不活化するという伝統的な手法が一切使えませんでした。

この状況から「ヨーイ・ドン」で開発競争が始まったので、スピードの面ではかないません。

さらに、ファイザーやアストラゼネカは従来ならどんなに早くても開発に3~5年かかるところを、8カ月ほどで製品化してきました。

 そして、後発組にとって厳しい状況が生じます。

ファイザーなどのワクチンが急ピッチで進んだことに加えて、現時点で分かる範囲のデータでは、高い有効性が確認されたことです。

その結果、後発組が治験のフェーズ3(第3相)に必要なプラセボ(偽薬)との比較をする大規模試験を実施することが難しくなってきています。

 


ーどういうことですか?


手代木氏:有効性が確認されているワクチンが既にあるなかで、健康な人にプラセボを接種することは倫理的な観点から難しいからです。

プラセボは健康な人にとっては、デメリットしかありませんから。

 何もワクチンがない時点なら、プラセボとワクチン候補の比較試験をするしかありません。

しかし、有効性のあるワクチンができた後では、健康な人にプラセボを打つことは正当化しにくい。

そのため、ファイザーなどがワクチンを提供し始めた後は、世界中の会社がプラセボとの比較をするフェーズ3を実施することが難しくなっています。

 ただ、今先行しているワクチンがベストなワクチンなのかどうかは、まだ分かりません。

そうした中で今後どうしていくのかに、今、世界中が迷っています。

 フェーズ3を実施する代わりに、例えば、フェーズ1、2を経て一定の規模感でテスト投与をしてみて安全性を確認する。

そして、ウイルスをなるべく無毒化する中和抗体とウイルスを排除しようとする細胞性免疫がきっちり機能していることを確認したうえで、接種後の副反応や、発症した人の状況を細かくデータを取ってモニタリングすることを条件に仮承認するといった対策が必要ではないでしょうか。

 さもなければ、残された手段は「チャレンジ試験」くらいしかありません。

これは意図的にウイルスに感染させて、ワクチンを打った人とそうでない人を比較するという試験です。

これも1つの選択肢だとは思いますが、本当に切れ味のいい治療薬がまだない中で、どこまで現実的に可能なのか。英国はチャレンジ試験を許可しましたが、背景にはそこまでしなければ新しいワクチンが出てこないという危機感があります。

 

・ワクチンだけでは「平時」には戻れない


ーそうした状況で、塩野義のワクチン開発はどのような段階にありますか。

 

手代木氏:2020年12月に治験を始めて、生産体制の構築も同時に進めています。

4月からは生産設備を増強して、年間3000万人分のワクチンをつくれる体制を2021年中に整えます。

ワクチンの開発と生産体制の構築については、当初計画からの遅れはありません。

フェーズ3を実施するための体制はできています。

 ただ、先ほどお話ししたように、現時点ではフェーズ3を実施することが難しくなってきている点がネックなのです。

そのため、しっかりデータを取ってモニタリングをするのでフェーズ3の代替手段を認めていただけないかと、国に相談させていただいています。

 

ー国産ワクチンは安全保障上の観点からも重要だと指摘していますね。

 

手代木氏:例えば変異株の問題があります。

インフルエンザウイルスも毎年、自然変異しています。

世界保健機関(WHO)がそのシーズンに流行するのはこのウイルス株ではないかという予想を出しています。

ワクチンメーカーは、それに合ったワクチンをつくっているんです。

 日本で毒性の強い変異株が新たに出たとしましょう。

そんなときに、日本株向けのワクチンを海外メーカーが迅速につくってくれるでしょうか。

また、創薬国である日本が、新型コロナのワクチンを自らつくらず、海外から買い占めるような行為には批判がつきまといます。

 国産ワクチンを提供できない現状では、国民を守るために政府ができる限りのことをして人数分のワクチンを確保するのは正しいと思います。

しかし、この先もそれを続けていいのでしょうか。

むしろ、世界的に見れば、日本はワクチンを供給する側に立つべきですし、その力はあります。

世界も日本にそう期待しているのではないでしょうか。

 中国は、アジアの国々に対してワクチンを供給することで関係を強化しようとしています。

困ったときの助けがあってこそ、平時の関係が強化されるのです。

我が国も、そういうことをもっと考えてもいいのではないでしょうか。

 

ー日本でもワクチン接種が始まっていますが、今がまだ「戦時」の状況だとすると、「平時」に戻るのはいつごろになるとみていますか。


手代木氏:ワクチンは決して、コロナ対策のゴールではないんです。

ワクチンは1回打って終わり、という話ではなくて、安全性や有効性を継続的に判断していくために、中長期的にきっちりと接種した人の状況をデータベース化してフォローしていく体制も必要になってきます。

 日本はかかりつけ医の先生方がいるので、本来はかかりつけ医で接種してもらい、何か異常があったら先生に相談するということができる体制が整っていますが、集団接種ではそれが機能しません。

今後は、日本の医療体制を考えたワクチンを作ることが必要でしょう。

とりあえず、急いで全国民にワクチンを打てば生活は正常化するんだ、という状況ではないのです。

 ゴールは、診断薬、ワクチン、治療薬の3セットが具備されて、インフルエンザと同じような状況になって国民が安心して生活できるようになることです。

一刻も早く安心して生活が送れるように、私たちもワクチンや治療薬、診断薬の開発に夜を徹して努力していますが、そのような状況になるのは22~23年ではないでしょうか。

 

・次のパンデミックへ国全体で備えを


ー「平時」に戻っても、次のパンデミックが起きる可能性もあります。


手代木氏:次のパンデミックが起きるときに備えて、重症化した際の医療体制を構築することが大切です。

そして、今回はワクチン、治療薬、診断薬の3つがそろうまでに2~3年かかる見込みですが、それを1年でできるような体制づくりを、産業界や学術界も含め国全体として進めておくことが必要でしょう。

 ただ、現状では国内の感染症研究者はどんどん減ってきて非常に少ない。

どうしてこのような状況になったかというと、感染症の研究をする人にお金が回らないからです。

製薬会社も悪い。

ほとんどのメーカーが感染症をやらずに、がんなどお金になるものばかりやってきました。

 がん研究者には潤沢にお金が回るんですよね。

一方、感染症はお金にならないから、大学も研究室を維持できずにどんどん縮小してきました。

 こうした状況を何とか変えなければなりません。

パンデミックが起きたら、何十兆円もの経済的な損失が出ます。

それほどの損失が仮に10年に1回出るとしたら、研究体制や生産体制の構築に、平時から毎年数千億円の規模で基盤整備を進めた方が安くないですか。

それには、国のサポートと国民のコンセンサスが不可欠です。


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国産ワクチン、なぜ出てこない?
日経ビジネス 2021.3.30
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/032600173/