バニャーニャ物語

 日々虫目で歩く鈴木海花がときどき遊びに行く、風変わりな生きものの国バニャーニャのものがたり。

バニャーニャ物語 その14 迷探偵!バショー

2012-03-15 15:47:01 | ものがたり


                    その14 迷探偵!バショー


作・鈴木海花
挿絵・中山泰
 


国境の町のむこう、
<ナメナメクジの森>を越えると
そこには、
ちょっと風変わりな生きものたちの暮らす国がある


*はじめてお読みの方は、「その7」にあるバニャーニャ・ミニガイドを
 ご覧ください。
 







 霧のふかい夜でした。
「これじゃまるで、白いスープのなかを歩いているみたいだな」
スープ屋のジロは、半島の東のはずれにあるバニャーニャ・アパートの1号室にすむ
ダロウェイ夫人にとどけるスープをだいじにかかえながら、
道をいそいでいました。

「ジロ、こんどの夏にはこの霧みたいなひんやりしたスープ、つくって」
とつぜんカイサの声がきこえて、
ひとの形をした霧がジロのほうに流れてきたと思うと、
カイサが姿をあらわしました。



「わあ、びっくりしたー。
あれ、カイサひさしぶりだね、何かに姿を変えたのって」
「うん、もののなかにはいってその姿になると、
あとで、すんごくつかれちゃうんだ。
だから、このごろはずっとやってなかったんだけどね」
 そう、カイサは、どんなもののなかにも入り込めて
姿を変えることができる特別な力を
ひいおばあさんから受けついでいるのです。
でもカイサはひいおばあさんが言い残した言葉とおり、
この力をむやみに使うことはありません。

「でもね、今夜はなんだか、
霧のなかに入ってみたい気分になっちゃったんだ。
霧になるのって、すてきよ。
ちょっとつめたくて、体がなくなったみたいに軽くて、
ゆっくり踊っているみたいで。
ジロは今夜もダロウェイおばあちゃんのとこにとどけもの?
霧で迷子にならないように、いっしょに行こうか」
「うん、助かるよ。今夜のスープはね、バラの花のコンソメ。
ダロウェイさんの大こうぶつだよ」

 ふたりがバニャーニャ・アパートの入り口にやってきたときでした。



1階の2号室に住むパンプルムースさんが、
大声でわめきながら、部屋から飛び出してきました。
「なんてこった、おれの大傑作が消えちまったんだ!」
パンプルムースさんは、バニャーニャの東の山から切り出した石灰石をつかって
作品をつくる彫刻家。
彫刻は、ひとつできあがるまでにたいへん時間がかかるものです。
いままでにつくった作品は9つ。
それがみんな姿を消してしまったというのですから、
パンプルムースさんがとりみだすのも無理ありません。



ジロとカイサは、興奮してわめきつづけるパンプルムースさんを
なんとか落ちつかせて話をきくことにしました。

「霧がではじめた3日前から、
おれは新しい作品のアイディアをもとめて、
野山をさまよっていたんだ。
霧にすっぽりつつまれていると、
すごいアイディアがわいてきた。
そいでさっそく石を彫りはじめようと家にもどってきたら、
今までの作品がひとつのこらず姿を消してたってわけだ。
いったい誰だ!
おれの命よりだいじな作品をもってっちまったのは」

パンプルムースさんがまた興奮しはじめたのをみて、カイサがいいました。
「あたし、バショーを呼んでくる。
霧に乗っていけば、丘の上までそんなにかからないから。
できるだけ急いでいってくるね」
そう、こんなときはやっぱり、
もの知りのバショーに来てもらうのがいちばんです。

 霧のなかを、
カイサの案内でバニャーニャ・アパートまでたどり着いたバショーは、
消えた9つの彫刻のゆくえをさがして、さっそく調査を開始しました。



「ふむ、まずはアパートの住人をしらべてみよう」
今夜のバショーは、すっかり名探偵のような口ぶりです。

 バニャーニャ・アパートは、ちょっと変わった形と色をした
3階建ての建物で、住んでいるのは5人。
バショーはまず、1階のダロウェイ夫人の部屋をノックしました。
「どうぞ、ドアはいつも開いているわ」
なかから鈴をならしたような、小さくてキレイな声が聞こえました。

「まあまあ、こんなにみなさんできてくれるなんて、うれしいこと」
バショー、パンプルムース、ジロ、カイサが部屋にはいっていくと、
ダロウェイ夫人はベッドに横たわったまま、
栗色のつやつやした長い長い髪の毛をひとたば、
指のあいだからサラサラと流しながらいいました。

「ダロウェイおばあちゃん、びっくりさせてごめんね」
ここによく遊びにくるカイサが、
ダロウェイ夫人の手をとっていいました。
部屋のなかには、いたるところ、
鉢植えの花や天井までとどく木があふれ、
かべにはツタがはって、まるで温室のようです。

ダロウェイ夫人は、自分でももう何歳か忘れてしまった、
というほど年をとっています。
カイサに手伝ってもらって植物の世話をするほかは、
一日のほとんどをマホガニーでできた大きなベッドで過ごしています。

顔も手足も小さくちぢみ、
シワだけでできているように見えるのですが、
夫人の髪の毛だけは、まるで別の人生を生きているかのように、
いまもつやつやと輝きながら、元気にのびつづけているのです。
「これはわたしに残された、たったひとつの美しいもの」
とダロウェイ夫人は、この部屋をおとずれる人にいいます。

「おっほん。ダロウェイ夫人、夜分におさわがせしてもうしわけありません。
じつはおとなりの2号室から、
パンプルムースさんの作品が消失しましてな。
アパートのみなさんに、なにかあやしいものを見たり音を聞いたりしなかったか、
話をきいてまわっているのです」バショーがいいました。

「まあ、パンプルムースさんのあのすてきな彫刻が消えるなんて!
そう、そういえば、きのうの晩だったかしら?
ほら、ジロがおいしい夜光貝のスープをとどけてくれて、しばらくたったころ。
うとうとしていると
パンプルムースさんの部屋でドッタンバタッンって大きな音がしていたわ」
「おさわがせして、すみませんでした。
このバラのコンソメを飲んだら、ゆっくり休んでくださいね。
だいじょうぶです、バショーがきっと犯人を見つけてくれますから」
ジロが、冷めないように厚鍋に入れて運んできたスープをわたしながら
いいました。

「バショー、これ見て!
部屋の前に、こんなにたくさん足跡があるよ」
ダロウェイ夫人の部屋から出ると、
カイサが、パンプルムースの部屋の前の床を見て叫びました。
「むっ、これは犯人たちのゲソ痕(足跡)に違いない!」
バショーは大きな天眼鏡を床に近づけて
たんねんに見てからいいました。
「ゲソ痕の種類と数からみて、犯人は複数じゃ」


 つぎに一行は2階のカパブランカの部屋を訪れました。
カパブランカは、昼間はテラスで、夜は暖炉のそばのテーブルで、
日がな一日ひとりでチェスをさしています。
伝説の天才チェスマスターとよばれ、
むかしはチェストーナメント世界チャンピオンだったのだそうです。
食後のチェスにぼっとうしているところをじゃまされて、
カパブランカはごきげんななめのようです。

「ふん、いつもやかましい音をたてる彫刻家だと思っておったが、
きのうはこれがまた特別に大きな音をたておって。
がまんづよい私もさすがに文句を言いにいこうと思ったが、
ちょうどいい手を思いついたんで、そのまま忘れてしまったのだ」
手にナイトの駒をもったまま戸口にあらわれたカパブランカが、
太く濃い眉毛をしかめながらいいました。



「その物音をきいたのは、何時ごろだったかおぼえていますか?」
バショーがききました。
「ふん、あれはたしか白のキングをチェックメイトしたときだから、
10時ころだったはずだ。
・・・・ところであんたがたは、
「チェックメイト」というのが
どんな意味か知っとるのかね?」
カパブランカはそういうと、
ぎょろっとした大きな目でみんなを見回しました。
みんなはお互いに顔を見合わせながら、首をふりました。
「チェックメイトとは、王に死を!という意味だ。
つまり、わたしは常に生きるか死ぬかの勝負の世界にいるのだ。
あのうるさい彫刻とやらがなくなったのは、ありがたい」
カパブランカはえんじ色の絹のガウンのエリにさしている
しおれた白バラの匂いをかぎながらいいました。

 それをきいたバショーの目が、きらりと光りました。
「ほう。そうすると、あなたはあの彫刻がなくなればいい、
とそう思っていらしたんですね」
「だったら、どうだというんだ!」
カパブランカはまたかんしゃくをおこしてどなりました。
「そのぉ、動機があると・・・・」
バショーがそう言いかけると、
カパブランカはドアをバタン、としめてしまいました。( )
「うーむ、カパブランカには動機があって、
 ひとりでチェスを指していたのだから、アリバイはない、と」
バショーがつぶやきながら、向いの部屋のドアをノックしました。
 
 2階のもうひとりの住人は、
去年からあめふり図書館の司書をしているデルモンテです。
どういうわけか、この霧深い夜に留守のようで、
いくらノックしても出てきません。
「うーむ・・・図書館はもうしまっている時間なのに」
バショーは考えこんでいます。

 そのあと一行は、屋根裏部屋へつづくせまい階段をのぼっていきました。
ここにはティキという、石のような灰色の肌をしたちいさなひとが住んでいます。
なんでもティキさんはむかし、
遠い南の島の<神さまのようなもの>だったことがあるそうですが、
あるとき悪者に追い出され、
島から島へとにげてバニャーニャにながれつき、
いらい、悪者に見つからないように、
この小さな窓しかない屋根裏部屋に
ひっそりと住んでいる、ということです。

 バショーが、きのうの晩なにか怪しい物音や人をみなかったか、
ときくと、ティキは、
「イアオラナ。アイタ・ペアペア」
と自分の島の言葉でいいました。
「???」
「あのね、ティキさんは、コンバンワ、私はなにも知らない、気にしない、っていったのよ」
カイサが通訳しました。
「なるほど・・・・・どうやらパンプルムースさんが出かけているうちに、
だれかが彫刻をぬすみだしたようですな。
犯行時間は昨夜の10時すぎ、とみて間違いないと思うが・・・・・」
バショーがいいました。

 夜も更けてきたので一行はジャマイカ・インに向かうことにしました。
今夜はもうみんなねむれそうもないので、
ジャマイカ・インでコルネのいれるとびきり濃いコーヒーを飲みながら、
夜通し彫刻のゆくえを推理してみよう、ということになったのです。

 ジャマイカ・インに着くと、
主人のコルネと砂屋のフェイがいて、
「パンプルムースの彫刻がぬすまれたんだって?」
というので、バショーたちはびっくり。
霧のバニャーニャをかけめぐって、
ウワサははやくも広まっているようです。

 「でもあんな重くて大きいもの、
どうやってもっていったんだろう?」
ジロがいいます。
「ところでデルモンテさんは、
こんな晩にどこへ行ったんだろう?」
カイサがいいました。
「そうだ、やっぱしかぎりなく、あいつがあやしいぞ!」
パンプルムースさんが叫びました。
「デルモンテだって?そういや、きのう海辺へ向かう道でやつを見かけたぞ。
なんだか見慣れない奴らといっしょで、
ひどく急いでいるようだったがな」コルネがいい香りのするコーヒーを
みんなのカップに注ぎながらいいました。

 霧の夜がふけていきました。
みんなはいつしか、興奮していたパンプルムースさんも疲れ果て、
ジャマイカ・インの食堂で、眠りこんでしまいました。

 「おーい、たいへんだぁ!」
朝早く、みんなはシンカとモーデカイの声で目をさましました。
霧は3日ぶりにすっきり晴れて、
今朝はすきとおるように青い空と海が、
バニャーニャをすっぽりとりかこんでいます。

 「きのうの夜、アイソポッドに呼ばれているような気がして、
海底へおりていったんだ」
シンカが話しはじめました。
アイソポッドは、巨大な白いダンゴムシ型をした生きもので、
海のあらゆる知恵と情報をその頭のなかにしまっている、
バニャーニャの生きた百科辞典です。

 「アイソ先生が体を向けているほうへシンカが歩いていくと、
海底の砂の上に、白い彫刻が9つも立っているのをみつけたんだそうだ」
モーデカイがいいました。
「そいつはおれの彫刻だ!」
パンプルムースがいすを蹴とばして叫びました。
「シンカ、すぐ、そこへ案内してくれ!コルネ、ボートだ、ボートをかしてくれ」

 みんながコルネのボートのところへ急ぐと、
ボートのかげから、ヤシノミ族のウルが顔をのぞかせて、
ふるえる声でいいました。
「きのうの夜おそく、う、う、海をみてたら、
き、き、きりのなかを幽霊船が、
沖へこぎだしていったよ・・・」
「それは幽霊船じゃなくて、
デルモンテとやつの悪い仲間が、
ぬすみだしたパンプルムースの彫刻を運ぼうとした船じゃ!」
バショーがいいました。
 
 シンカの案内で、パンプルムースは力のかぎりボートをこぎました。
「おーい、この下だ」
シンカが、水面から顔をだして呼んでいるところへ着くと、
パンプルムースはボートから身をのりだして、海のなかをのぞきました。
そこはもうかなり深い場所でしたが、
海はまるで青いゼリーのようにすきとおり、
上からでも、波のせいでゆれているように見える、
9つの白い彫刻をはっきりと見ることができました。

 そのとき、パンプルムースはカミナリにうたれたように、
さとったのでした
―今あるこの場所ほど、自分の彫刻が美しくみえるところはない、と。
「おれのつくった像が、まるで海にいのちをふきこまれたようだ・・・」
 
 デルモンテはあれきり、
バニャーニャから姿を消しました。
「まんまと運び出したものの、
重すぎて船が沈みそうになったんで、
沖でほうりだしたんじゃろ」
バショーは事件が解決して満足そうです。

 パンプルムースは、海の底にしずめられた彫刻をそのままにしておくことにしました。
それどころか、新しいのができあがると、
わざわざそこへ沈めにいくようになりました。
時がたつと、白い彫刻には海草や藻がからみつき、
いっそう芸術的に見えるようになったのです。

 誰ともなく、「海底美術館」と呼ぶようになったこの場所は、
最近では沖を通りかかる船のあいだで評判を呼んでいるそうです。
晴れた日、海がことさら透きとおって見えるときには、
何艘もの船が、ここへパンプルムースの彫刻を見にたち寄ることもあります。

 ジロたちも、かわるがわるこの評判の美術館をボートで観に行きました。
青い水のなかで、立ち並ぶ白い彫刻が波にゆらめいて、
まるで生きているように見えます。
そしてその間を、色とりどりの魚や海の生きものたちが泳いでいく様子は
幻想的で、いつまで見ていても飽きないのでした。

 霧があがったあと、半島の緑はいちだんと色濃くなり、
初夏の気配が満ちてきました。
野菜畑ではソラマメの大きなサヤが天をさしてぐんぐん育ち、
明日あたり、
ソラマメのポタージュをメニューにのせようかな、
とジロは考えています。






***************************************


 いつも登場する面々の他にも、
バニャーニャにはたくさんの生きものが住んでいます。
カイサのようなヒト型の生きものをはじめ
シンカのようにギル族と呼ばれる(ギルとはエラの意)水陸を自由に行き来できるもの、
ジロやモーデカイのような動物型もいるし、
フェイのようななんだかわからないカテゴリーの生きものもいるわけで。
今回登場したバニャーニャ・アパートの住人たちも
それぞれ違う生きものなので
自由に想像して楽しんでください。

 今では引退してバニャーニャにひっそり住んでいる(?)カパブランカは
キューバ出身のホセ・ラウル・カパブランカという実在のチェスマスターがモデル。
4歳でチェスを覚え、12歳でキューバチャンピオンを破り、
その天才度、美男度の高さから
チェス界、社交界の花形としてもてはやされた伝説のグランドマスター。
老後はバニャーニャで、チェス三昧の生活をおくっているようです。

 最近あそぶのはPS3、DS、PSP(オンライン以外)などが中心だけれど
いまだにボードゲームも大好きです。
我が家ではときどきの流行があり、
オセロだったりヤッツィーだったりバックギャモンだったり人生ゲームだったり。
ボードゲームの魅力はプレイそのものに加え、
ボードや駒のデザインの楽しさというのがけっこう大きく、
そのなかでもチェスセットの美しさ、
そのロジックの冷酷なまでの完璧さは
群を抜いていると思う。

 外国の街を歩くときは
チェスセット専門店を必ずチェックします。
意外だったのは、モルジブへダイビングに行ったときに寄った首都マーレの土産物屋で
大理石製のチェスセットがたくさん売られていたこと。
なんで南の島にチェスが?と思ったのですが。
チェスは古代インド起源のゲームだったのですね。


チェコのプラハの街のチェスショップの看板には、珍しい3人用チェスが。


拙著『チェコA to Z』の表紙にもさりげなくチェス駒。


チェコで買ったチェスセット。


ポーンたちはみんな手にチェコビールのジョッキをもっている。


 チェスの起源は紀元前にさかのぼり、
古代インドのチャトランガというゲームがもとになっている、といわれています。
 市松模様の盤上で
白のキングと黒のキングが、クイーン、ポーン、ビショップ、ルーク、
そしてナイトと共に戦うゲーム。

 チャトランガは戦いの好きな王に戦争を止めさせるためにつくられた、
という説もあるほど、好戦的な男性のゲーム、
ということもできますが、
世界チャンピオンにも、ごくわずかながら女性棋士がいます。
ハンガリー出身のユディット・ポルガーはそのひとり。
歴代最年少の15歳4か月でグランドマスターとなりました。

 チェスには、ゲームそのもの以外の盤外の楽しみも多く、
世界に伝播していく過程で、
ヨーロッパの王侯貴族たちは
権力、財力、知力を誇示するために、
歴史、民俗性、地域の素材、モチーフを異にする
工芸品、財宝といっていいような盤と駒をつくりました。
莫大な費用と職人の技を駆使してつくられたものは、
秘宝として代々伝えられ、
中世美術の傑作として大英博物館に収められている「ルイスの駒」のように、
謎めいた物語をもつものもあります。
「ルイスの駒」はセイウチの骨でつくられた駒で、
19世紀、スコットランドのルイス島に袋詰めで埋められているのが発見されました。
 チェス駒の素材は、実用的なものは木やプラスチック製ですが、
石、黒檀、象牙、骨、陶、金銀、宝石など、
じつに90種以上もあるといわれます。


 シンプルの美を極めた将棋の駒も美しいけれど、
その対極にあるような、
駒と盤の無限のバラエティが楽しいのがチェスセットなら、
誰でもが自分のチェスセットをつくることができる!
たとえば、テーブルウェアをモチーフにしたこんなチェスセットも。
かわいい!




 自分でテーマを決めて、チェスセットをつくってみたいな。
虫チェスセットとか。
虫がモチーフだったら・・・・キングはゴライアスハナムグリ?
ルークはハチの巣?ポーンはやっぱりアリかしら・・・・・。

 
ラングラーのノヴェルティグッズとして企画編集した『COWBOY CHESS』の表紙。
デザインはバニャーニャの挿絵を描いている中山泰。


カウボーイのモチーフで、紙のチェスセットがつくれる趣向。


チェスセットの紹介ページには我が家の駒たちが。
一番下に見えるのは、謎を秘めた「ルイスの駒」のレプリカ。



 最新テクノロジーを駆使したコンピュータチェスも興味深い。
初めて人間がコンピュータとチェスの対戦をしたのは1967年。
その後1990年代までは人間がコンピュータに勝っていたのですが、
1997年、IBMの「ディープ・ブルー」というコンピュータが
ついに世界チャンピオンを負かしました。
しかし1秒間に2億近い手を考えることができるコンピュータも、
ゲームの進行を先読みする能力は人間の半分くらいらしい。

 現在では、レイティング1600(中級ぐらい)のプレイヤーの90パーセントはコンピュータに負ける、
というデータがあるけれど、
人間には機械にない感情というものがあり、
それが戦いを微妙に左右するという。
それにしても、2億以上もの手を読むことができる機械に人間が勝つって
すごくないですか。人間、がんばれ!

 チェスはまたダイナミックなロマンを秘めたゲーム。
絵になるゲームでもあるところから、
映画や小説にもときおり登場します。
テレビでも、ガラスのチェスセットを愛用する『相棒』の右京さんとか、
コロンボ刑事シリーズにもチェスマスターの殺人事件があったし、
『ハリー・ポッター』のあの巨大なチェスセットは迫力!

 チェスが出てくる小説もいくつかあります。
『鏡の国のアリス』(ルイス・キャロル)はもちろん、
『ディフェンス』(ウラジミール・ナボコフ)、
『僧正殺人事件』(ヴァン・ダイン)、
『高い窓』(レイモンド・チャンドラー)などなど。
どれも名著ですが、断トツに面白いのが、キャサリン・ネヴィル著『8エイト』。
宇宙を司る「8」の公式。
その謎は伝説のチェスセット「モングラン・サーヴィス」に秘められていた
―時空を超えて広がる壮大で知的な冒険ファンタジーです。





 バニャーニャ・アパートの住人のひとりであるティキさん。
「ティキ」というのは、南太平洋の島々の古代信仰の神さまでした。
しかし17世紀にキリスト教がこの地域にはいってきたとき、
偶像崇拝として、あとかたなく一掃されてしまったのです。

 イースター島のモアイは残りましたが、
ティキは今はもう、この地域の島々を訪れても、
その姿は土産物やレプリカにしか見ることができず、
わずかにマルケサス諸島に残っているだけです。

 でも、土産物に身をやつした今も
どこかブキミなこの神さまは同時にユーモラスで
なんとなく、追放されても世界のどこかにしぶとく生きているような気がします。


うちのティキさんたち。

 不遇な運命をたどった神さまでも、
バニャーニャでなら生き残っていけそうな気がします。

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして。 (ジャワカ零)
2012-03-25 18:54:55
えーと、「虫目であるけば」の《多摩動物公園昆虫館のサイエンズーカフェ》の最初の写真はクリシギゾウムシでなくエゴシギゾウムシの様に見えるのですが、あちらにはコメントが出来ない様なので、ここに書き込みました。
私も、生田緑地でエゴシギゾウムシなら撮った事があります。
それと、《緑濃い、石垣島へ 前半》の"かわいいハムシ"は、ペレレガンスツツハムシではないでしょうか。
[ツツハムシ&小笠原]で検索したら、似た様なのが出てきました。

ツツハムシ亜科 Cryptocephalinae その1
http://www5c.biglobe.ne.jp/%257emmmworld/s2/s2s3/s2s3s4/s234_haCryp1.html

追伸:唐突な質問ですが、今日ご主人は、東高根森林公園に出かけましたか?
返信する
Unknown (ジャワカ零)
2012-03-25 19:29:18
和名ですと、キボシツツハムシで良いようですね。
返信する
名前ありがとうございました (kaika)
2012-03-27 09:00:15
 ジャワカ零さま

 はじめまして!
おお!ハムシの名前がわかってうれしいです。
さっそくブログのほうにも書き加えさせていただきます。
工芸品みたいなきれいなハムシでした。
 クリシギゾウムシ、間違えましたー。
エゴシギですよね。
これも今訂正しました。ご指摘いただいて、
助かりました。
 はい、きのうは私はブログの仕上げで観察に行けず、主人が一人で東高根へ行きました。
写真を撮っていらした方とお話しした、といっていましたが、ジャワカさんだったんですね。
そのうちお会いするかもしれませんね。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (ジャワカ零)
2012-03-27 10:21:28
>個体変異なのか、頭部が黄色いものもいるようです。

「夢惑う世界・昆虫たち」や「島の生きもの【キボシツツハムシ】」下記参照

http://www.hachijo-vc.com/creature/archives/2007/05/post_244.php

の写真を見ると、所謂図鑑に出てくるモノと頭部の色合いが違うのですが
暖かい地域、特に離島だとこの様な変異があるのかも知れませんね。
返信する
頭部が黄色 (kaika)
2012-03-27 18:17:52
 たしかに、頭部が黄色のものも、
キボシツツハムシで出てきますね。
個体変異の範囲なのか、ちょっとわかりませんが、見かけはかなり違うように感じます。
 ハムシは大好きなので
もっともっと見たいです。
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