ブログ しみぬき見聞録

しみ抜きを生業とし昭和、平成、令和、不肖の二代目です
仕事を通して日々感じたこと、思うことを、勝手気ままに書いてみたい

無常 追記

2024年04月05日 | Weblog
前回投稿の追記になります

亡くなった、おじさんの身元判明の記事が小さく新聞に、昨日載りました
現場から数キロ離れた所に、お住いの八十歳の男性でした
遠目からではありましたが、そんな、お歳とは

事故から、ひと月半 長かった
たぶん、掃除七つ道具を、お手製のカートに乗せて歩いてこられたのだろう
どういういきさつで、掃除をされていたのかもわかりません

一度でもお話ができなかったのが悔やまれます
   
長年、一人、黙々と暑さにも寒さにも負けず、あらためて、本当に、お疲れさまでした
新聞に、ほんの小さく載った記事でしたが、身元確認、良かった、ホッとしたと感じたのは、私だけではないと思う

竹箒で掃く シャー シャーの音  忘れませんから

ご冥福をお祈りします


無常

2024年03月24日 | Weblog
先月、近くで交通事故がありました
商店街のアーケードのはずれ近くに我が家はあります
アーケードのはずれが、随分以前に、小さな公園のように整備され、植栽、石造りの小さなベンチ、カラー舗装もあり、
ほっと一息 素敵な空間になっています
小さな木も大きくなり、夏には木陰を楽しませて、一服の涼を楽しませてくれます

いつの頃からか、記憶は定かではないけれど、早朝にシャー、シャーと、竹ぼうきで掃く音が聞こえるようになりました
それとなく屋上から見ていると、小柄な男性が歩道に落ちた枯れ葉、捨てられたゴミを掃除しています
手作りらしいカートに掃除道具、ゴミ袋をぶら下げ
最初は、朝早くからご苦労様です と 只 そう思っていました

それは、ほぼ毎日に、暑い時も寒い時も、続いて
しかし、私が店のシャッターを開ける頃には、掃除を終えて、姿はいつも見えませんでした
何処の誰かは知らないけれど、 どこから来て、何処へ帰っていくのか?
ほんの一時間程のことです

シャー、シャーの箒の音が聞こえないと、アレ 今日はお休みかな?
それが続くと、おっちゃん調子悪いのか?  
気になるようになり、朝食を食べながら、「おっちゃん今日も来てないで」と妻と話すようになりました
音が聞こえてたから、今日は元気にしてると、勝手に安心したり  
当たり前の日常のように思っていました

そうした日々が数年、長く続くなかで、おっちゃんと話をしてみたいと思うようになってきました

しかし、それは叶いませんでした

いつものように、掃除をしていた折に、交通事故にあってしまったからです
救急車のサイレンの音を仕事中に聞きながら、アレ いやに近いななどと思っていましたが
事故の件は夕方のニュースで知りました
70代らしき男性、清掃作業中事故     あの人や  なんで  どうして!!!!!
救急車で運ばれ、少し意識はあったようでしたが、翌日容態が急変して亡くなったようです

大ショックだったのは、身元確認が出来ず、住所、お名前も、判らないと報道された事でした
悲しくてやりきれない  
黙々と一人で掃除をして、植栽の世話をして花を咲かせて   何で  こんな終わりに

はや、ひと月が過ぎてしまいました
これからも、何度となくその場所を通ります
忘れず、心の中で黙礼して、「お疲れ様でした」 と 呟くだろう

このブログは、楽しく、嬉しく、面白い事を少し皮肉をこめて書き込む事をしてきました

しかしながら今回は、おっちゃんの為に、感謝をこめて、書き込みました
それしか、私に出来る事は、思い浮かばないから










振り返って

2024年01月07日 | Weblog
コロナ渦も話題になることも少なくなり、世情は一見落ち着いたように見えましたが、年明け早々に大難が降ってきました
今年は辰年、私の当たり年です
我慢、我慢の時を経て、さあ此れからと希望に想いを巡らしていました
しかし、青菜に塩のごとく、心が折れそうになってしまいました

阪神淡路大震災、東北大震災の再来です
先の大震災の折には、身内と呼べる程の長年来のの友人が、神戸、仙台で被災しました
阿鼻叫喚とも言える事も、実際に見聞きしました
不屈の精神で、それを乗り越えて来た、その後の姿も見てきました
励ましているつもりが、逆に彼らに励まされていたのではないか 振り返ってみると、そう思います

心折れている場合では無いのです
悪意に満ちたデマ、間違った情報に振り回されていては、あきません
何とか、何かしなければ
復興とは目に見える物と見えない物があると思います
目に見える街並みが戻ったとしても、それ以上に傷ついた心が回復するのには時間がかかります
長い、長い時間、振り返り、振り返り、心を奮い立たせて生きていくしかない

報道を見ながら、「何かせないかん 何か 何とかせないかん」 妻が呟いている

「そらそうや 知らん顔はできん」 私も呟く


芯となるもの

2022年05月04日 | Weblog
本業に入り、師匠に先ず叩き込まれたのは、着物、和服とは何か? 考えなさいと言う事でした
それを一番に知る事が出来るのは、着物を解く、ほどきに原点がある
反物を裁断し、一針、一針縫って仕立てる事で、形を現す
それを、逆に、ほどくことで反物の状態に戻す過程で着物、和服を理解する
それこそが、本業に携わることの芯になる と 教えられたように思います

修行中には一日一枚、和服のほどきが課題として与えられました

一見、仕立ては同じように思われがちですが、素材、織り、その他様々な要素によって異なります
色々な着物をほどくうちに、手際は良くなり所要時間も短くなりました
タイムアタック 多少ゲーム感覚もありました

着物の縫い目にはキセがかけられています
キセ  生地を縫い目にかぶせて、縫い糸が見えなくしてあります
縫い糸に、はさみを入れ糸を引く  生地を傷つけないように  これが基本です
解きに入って、見えなかった所が目に入る

先日、男物大島アンサンブルの洗い張りをお引き受けしました
息子様の為に、お母さんが仕立てをされたとの事

ほどき始めてみると、とにかく縫い目が細かい そして返し縫いが、細かく入っている
お召しになっている時の所作、おめしの回数、縫い糸の弱りなど、様々な原因で部分的な、縫いのほつれは起こります
返し縫いがあると、そこでほつれは、一時停止 広がりません
しかし、ほどきには、ひどく厄介で、手間がかかります

ほどきを進めながら、正直 イライラ 手間かかる    はっと気が付いた
返し縫い、袖付けの留め、裾、褄の仕立ての細かさ 仕立てをされたお母様の息子様への思い入れがあったかもしれません
何か、グッと来るものを感じて、嬉しくなりました

「そこに、愛はあるんか???」  よく目にする TVコマーシャル

確かに、着物に込められた 愛 あると思います

カチカチになった肩をストレッチしながら、我が家に 愛はあるんか?  怖くて聞けん


 








塩梅  いいかげん

2022年04月18日 | Weblog
いい加減て何??
無責任でチャランポランな事と捉えるのが、昨今の風潮です

しかし、本来は、程良き加減と解釈されていたのだろうと思います
塩梅が良い とも 言われます

私の大好きな芸人さんの漫才で、「ええ加減にせえよ!!」 の締めで落ちる
このイメージから、現代風に、受け取り方が180度変わってしまったのだと、勝手に思っています

先日、NHKまる得マガジン おうちで極上洗濯術と言うテキストを手に入れました
一般消費者向けに、家庭洗濯の基本を教える 教本です

これが良い とにかく解りやすく、丁寧で初心者向けとは言う物の、基本の筋がしっかりしている
洗濯とはという問いに、真正面から答えている

御来店のお客様に色々なお話をさせて頂き、お仕事をお引き受けする
ごく当たり前のことですが、どうしても職人気質の悲しさ、平易に、丁寧にお話しする事に
欠けてしまいがちです
私は、反省すべき点です
和服、着物の文化、わかっていただきたいと言う気持ちが強すぎて、お客様の気持ちに沿えない
その様な事があったかもしれません

ほど良き加減、塩梅 難しい事です

心がけます









困惑  その2

2022年04月08日 | Weblog
先日、更新を受けた、伝統工芸士証が届きました
2001年認定を受けて、何も変わらず、がむしゃらに、日々の仕事に追われて過ごしてきました
何も、変わらない気持ち、情熱を持ってきたつもりです

しかし、時は恐ろしい
前回更新時の顔写真と比べると、   自分自身でも 「うっ 」と思う程 険しい顔
年を重ねて、味のある顔とは程遠い

大ファンでもある、クリント イーストウッドのようには成れない  残念
イーストウッドいわく、「元気はつらつとした若き頃の自分に恋をしてはならない」  
「今の自分自身を受け入れる事 老いていく事を認める  それこそが大切なのだ」

まさしく名言ではある

へこんでいる私の横で、写真を覗き込みながら、「ウワア~ツ!!」なんて言う わが妻

見慣れているだろう  よけいにへこんでしまう

 




困惑

2022年03月28日 | Weblog
私の仕事は、手慣れた道具、資材を駆使して、結果が出せると思っています
しかし、残念な事に、それが手に入りにくくなっています

染料にしても、発色、定着、染め足 それぞれに特徴があります
使い勝手が良い様に工夫して、自分なりのやり方とみつけ、重宝していたのに、廃盤、 ガックリ

道具にしても同様です
伝統産業といえども、沢山の職人さんたちの技、知恵の結晶です
その職人さん達をささえているのは、手先となる道具、資材を作っている人達なんです

駕籠に乗る人担ぐ人、そのまた、草鞋を作る人

どんどん、縮まって行く、その息苦しさに、困惑しています

代替の物を見つけるアンテナ、使いこなす勉強、大変だ





足跡 その2

2022年03月05日 | Weblog
足跡   残してはいけない?  残しておくべき?

いかなる時も前向きに、希望を持って進む これこそが全てだろうか?
前に進めば、足跡は必ず残る
振り返って、進んで来た足跡を見てみる事も大切だろうと思います

今、はるか離れた地で、戦火が燃え盛っています
阿鼻叫喚と言える状況が、リアルタイムで流されています
フェイクと片付ける事は出来ないかもしれない、玉石混交の情報にハラハラしています

戦争の悲惨さを、実感のないまま知らずに育った私は、情緒的に可哀そうと感じているだけ
そう、非難されることも、承知していますが

有史以来、どれだけ戦争という争いを繰り返してきたのだろうか
我に正義在りと旗を振りたてて、どれだけの血を流してきたのだろう

暴力の連鎖、その行き着く先は、怨念の種をばら撒くことにしか過ぎない  

先人の残して来た、足跡、歴史に、しっかりと学ばなければ、これからも愚行は続く

命に代わりなし  皆 知っているはずだ

人は皆、地球という大家さんにお世話になり、生きている
かけがいのない地球 自然を汚し、傷つけ 争い この星、地球が声をはっすれば 
「出ていきなはれ!!!!」
きっと、怒鳴りつけるだろう

力を持つ一握りの人達の為に、苦しむのは、御免だ

ごまめの歯ぎしりと言われても、書かずにはいられない



足跡

2022年02月21日 | Weblog
仕事について、心がけている事が二つあります
汚れ、しみ 充分落とし去る事 これは、本業に携わる職人としては、当たり前のことです
もう一つは、しみ抜きの作業の痕跡、つまり足跡を残さないと言う事です

充分シミは取りました、でも、作業の後は、こうなっています これはあきまへん
生地に、全く負担をかけずに、しみ抜き作業する事はできません
しみ抜き作業の痕跡は残る これは必然の事です
いかに、その作業の痕跡を残さないか 足跡を残さないか
それが、仕上がりの成否の指標になると考えているからです

平和とスポーツの祭典と言われるオリンピックも過日終わりました
パラリンピックは間もなく開催されますが、今回の冬季オリンピック程、喜怒哀楽の激しかったことはありません
全く、個人的な感想ではありますが

メダル獲得至上主義に賛成はできませんが、ついつい外野としては期待してしまいます
しかし、その競技の裏に隠れたドラマが垣間見えて、胸が詰まる思いをしました
選手、スタッフ、裏方さんも含めて 皆さんの残した足跡は、決して無ではありません

残すべき足跡を、きっちり残したのだと、心から拍手したいと思います
日々、鬱々とした我慢を強いられた生活の中で、泣き、笑い、ワクワクさせて頂いた事に 感謝あるのみ

ありがとうございました




   

ブースター接種 その4

2022年02月19日 | Weblog
接種からほぼ48時間経過しました
腕の痛みは、随分軽快して気にならなくなりました
発熱は、昨晩の36度9分が最高で、微熱程度で済みました

私の場合は、副反応は接種後30時間がピークだったように思います
もちろん、個人差があり、それぞれです

この所、わが県で、感染者は過去最高を更新し続けています
様々な事情、考え方により、いまだワクチン接種については賛否両論あります
無理強いすべきものではありません
副反応は怖い  打ってみなくちゃ、わからない

でも、本家本元に感染すれば、副反応どころじゃない
自分自身だけの問題じゃなくなってしまうから

私は、するべき事は全て成し、後は天命を待つのみと考えています
何もせず、感染し、七転八倒の苦しみ これだけは避けたい