ブログ しみぬき見聞録

しみ抜きを生業とし昭和、平成、令和、不肖の二代目です
仕事を通して日々感じたこと、思うことを、勝手気ままに書いてみたい

流れ

2021年10月31日 | Weblog
選挙に行ってきました
当然の義務であり、毎回欠かすことはありません
淡々と事務的に進み、所要時間、数分
小雨ちらつく中、人の流れはパラパラながら尽きません

暖簾に腕押しのように、手ごたえが無いと言うのが、本心です
しかし、なすべき事をなさずして、文句を言うなかれ 
これで、少なくとも政治家(政治屋)?に対して、対等に意見を言えます

時代、世情の流れに、個の声は虚しいと感じる事は多々あります
しかし、変わらない事も在ります

七五三お祝い、お宮参りなど、子供たちの晴れ着のしみ抜きのご依頼が、増えてきました
本来、和服は、一代限りの物ではなく、お譲りが当たり前の文化が根底にありました
お客様の声をお聞きすれば、異口同音に、私の為に父母がしつらえたものだから、祖父、祖母の想いがあるから
綺麗にしてほしい   その言葉を耳にします

どんな時代になっても、流れの中に変わらない物 我が子、孫達に対する想いを感じて、胸を熱くする

ご依頼に、全力でお応えします       それしかない





中綴じ  その後

2021年10月26日 | Weblog
先日のお召し物、しみ抜き補正後、納品しました
お客様に充分に説明をして、了解の上、仕立て屋にお願いして、中綴じの直しを依頼する事になったようです

着物の生き死には、仕立てで決まる
この道に踏み込んで、何度も聞かされた言葉です
張りすぎず、緩すぎず、一筋の糸で生地を合わせる
生地の性質は、素材、糸の撚り、様々要素で決まります   伸び縮み 個性のあるものです
それらを、知り尽くした、職人技の仕立てをして頂いているお召し物こそが、お値打ち品だと思う

しみ抜きの作業上、濯ぎなどの為に、水を多用しますが、当然生地の変形を引き起こします
それを修正して、仕上げをする為の目安にするのが仕立て糸、中綴じの糸の状態です
仕上げの物差しにするのです

表に見えず、裏にも見えず 大切なもの

こじつけに、なるかもしれないけれど、昨今の世情、人と人との繋がりを切ってしまう様な事を
連想してしまう

家族、妻との中綴じは、?????? きれてないかな
引っ張って試してみたいけど、怖い  怖い




中綴じ

2021年10月24日 | Weblog
袷着物には、中綴じがされている
表地と裏地八掛を縫い合わせて、一体化させるのが中綴じです
基本的に、表地と裏地は性質が違うので、それぞれの伸び、縮みの兼ね合いをとって、とじ付けます
表にも、裏にも縫い目を見せず、縁の下の力持ちとも言えます

仕立て屋さんにお聞きすると、以前は綿糸を使っていたそうですが、変色(カビなどによる)の問題があり、合繊の糸に
変えられているそうです

さて、先日 同業者の方から、しみ抜きのご依頼を承りました附下着物

衣紋掛にかけてみると、表地と裏地の釣り合いがおかしいい
裾周りに、ぶかつき 表地のゆるみが集中している
背筋の表地をつまんでみると、付いてくるべき裏地が、付いてこない
脇、背筋とも中綴じが外れている

平台に着物を置いてみると、裏地と八掛け(裾回し)の継ぎの部分に、焦げ茶色に変色した糸が引っ掛かている
縫い目の間に細いピンセットを差し込み、つまみ出してみた
顕微鏡で見ると、絹糸のようではあるが、軽く引っ張るだけで、切れてしまう
切断面は、綿毛のように毛羽立ち、完全に脆化している

中綴じには普通、綿糸を使用すると思うのだが、おかしい
糸、そのものに原因があるのは確かで、裏地、表地にも変色は見られない

依頼業者様に、状況を説明して、顧客様にその旨連絡、抜き出した中綴じ糸を見ていただくようお願いしました

これまで、数えきれないほどの着物のお手入れをさせて頂いていますが、この様な事は初めての奇妙な経験です