ブログ しみぬき見聞録

しみ抜きを生業とし昭和、平成、令和、不肖の二代目です
仕事を通して日々感じたこと、思うことを、勝手気ままに書いてみたい

価値

2015年04月24日 | Weblog
過日、お客様が、着物のお手入れの相談に来られた

お稽古事の先生から、お譲りしていただいた物らしい
発表会があるので、その時に、御礼をかねて、お召しになりたいという事らしい

衿、袖口、脇、背なか帯下、汗と汚れによる黄変がひどく、上前にも経時変化したシミがある
お預かり後、シミ抜きのテストをして見積もりのお電話を入れさせて頂く事にする

地色の染料は比較的丈夫で、しみ抜きにも十分耐えそうで、最後に補正はきあわせをすれば大丈夫そう
しかし、上前の柄の中は書き直し、金彩の置き直しが必要

見積もりの金額も、高額になる事、作業内容と合わせて、連絡させていただいた

長年の着用により、一部裾の部分のすじキレもあることもお伝えした

どうしても、その着物を先生の前で着て、見せてあげたい
大変お世話になった方なので、費用は問わないので是非とも引き受けて欲しいとの返事を頂いた

物の価値とは何だろう?

高い金額を払って手に入れた品物でも、しみ抜きに数千円かかりますと話すと、もう使わない
処分しますと言われる方もいる

値打ちと言うように、金額で物の価値を判断するのが当たり前だと普通思われるが、それだけではないだろう

思い入れが加味されて、本当の価値が決まると思う
また、難しいのは、思い入れ、こだわりとかは、時の経過、状況の変化によってドンドン変わる

断捨離、何が残るのか? 何を残すのか?






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職人

2015年04月12日 | Weblog
以前から、○○総本家と言う番組を見ている
あまり、日の当たる事のなかった職人の技にスポットを当ていることが面白く、楽しみにしている

登場する職人の皆さんに共通するのは、良い顔をしているという事だ

男前とか、美人とか下世話に言うのではなく、風格があるとでもいうのか

先日の放送で、もう僅かで廃業するという職人さんが、瞳を潤ませながら、「やめれば寂しいけれど」

「この仕事一筋でやりきってこられて」

その言葉を聞いて、言葉に出来ないその方の思いにグッと胸に迫るものがあった

一所懸命、一生懸命じゃない 一筋にその道を極める事の大切さを教えられたように思う

燃え尽きるように仕事に打ち込めるのは、幸せともいえるかもしれない

あの方に比べれば、まだまだ、はなたれ小僧だと反省する

もっと、情熱をかきたてて、頑張ってみよう

最近、とみに増えていく酒量も反省

でも、止められないんだよなぁ~   憂さ晴らしを言い訳に




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伝える

2015年04月06日 | Weblog
今、着物といえば晴れ着、礼装、晴れの場に着るものと言うイメージが強い
それが、ごく当たり前と、皆、考えている

しかし、文明開化の明治、大正、昭和の初期までは、洋服の方が、ハイカラで特別なものだったように思う
その当時の写真を見ると、よくわかります

衣服として、体の保護、機能性の面からは、洋服に軍配が上がるのは間違いない

それだけの理由で、和服が日々の生活から、姿を消してゆく事になったのだろうか?

ハイカラ、舶来至上主義の考えが、当時の日本人の中に広がって行った事

確かに目新しいものに飛びついてしまう事は、誰しもある事だと思う

その事で、日々の生活が便利、快適になり社会が元気になる事は、いいことだと思う
その反面、古い物はダメな物といわんばかりに、伝統を全て否定してしまうのは、どうだろう?

母は、自分の着物を、解いて、洗い、板張り又は、しんし張りをしていた
幼いころ、それを当たり前のように目にしていた

当然、仕立てもお手の物であった

母の世代では、それは当たり前の事であったし、躾、女性の嗜みの一つとして、教えられたのだろう
自分はそんな事はできても、自分の娘には、教えなかった

伝える、その必要も無かった そんな時代が続く

着物は、普段の生活から、離れたところに、追いやられてゆく
しかし、和服のあでやかさだけは、変わるものではなく、女性の憧れの物として残ったのだ思う

暴論と承知で言うと、需要が段々と縮小していく中、より豪華な物、高価な物にシフトしていった産地の
流れにも一つの要因があったと思う

ここ一番の時に、使いたい
その消費者の需要に答えるべき 当然の成り行き

バブル時代の、高価な物ほど、良いものだと言う、舞い上がった和服ブームの時代を遠く離れて、今

これから、何を伝え、残していくべきなのか?

私、着物の事、何も知らないの どうお手入れしていいか? たたみ方さえしらないのよ

お客様のそんな声をお聞きすると、これからどうなるの? 

考え込んでしまう

私見、暴論であります



 







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2015年04月02日 | Weblog
仕事柄、手、特に指先の手入れに気を遣う
手先の荒れ、爪の割れなどが少しでもあると、デリケートな絹の生地に引っ掛かり作業に
支障をきたすからである

しかし、寄る年波には勝てず、かさつきがひどくなるばかり
汚れを気にして、手洗いをしすぎるのもあるのだが

携帯電話をスマホしてみて、タッチが上手くいかなくて、イライラする

冬場は特に最悪だ
携帯ショップに行くと、同じような悩みの人が多いのか、タッチペンがオプション品で置いてあった

じっと手のひらを見ると、確かにくたびれて皺は随分増えてしまったが、不自由なく動いてくれ、感謝あるのみ

以前、同業の先輩に 「オイ、手を見せてみろ」と言われ両手を出すと、手のひらを交互に見ながら

「何だ この手は こんな華奢な手、職人の手じゃない」笑いながら、ぴしゃりと叩かれた

確かに先輩の手は節くれだち、アイロンを握る、右手のひらには分厚いタコができていた

人の手は、その人の生き方を、表してしているのかもしれない

息子たちの手を見ると、ペンだこを気にしていた細い指が、いつの間にか骨太の男の手になっている

ごつごつした指、洗っても、なかなか落ちない指紋の中にこびりついた汚れ、そんな事を気にも留めないで
手をつないでくれる 心優しき人を早く見つけろ





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