◆目的地
大菩薩嶺(2056,9m)
全行程約17,7km
標高差約1157m
総歩行時間6時間30分
◆行程タイム
2012年10月19日(金)
※前日夜に、塩山温泉に泊まり、塩山駅よりバス約30分
大菩薩峠登山口(8時着[体操]8時5分発)
→千石茶屋(8時35分通過)
→第2展望台(9時5分着[休憩]9時10分発)
→上日川峠(10時着[休憩]10時10分発)
→福ちゃん荘(10時30分着[休憩]10時40分発)
→大菩薩峠(11時30分着[昼食]12時10分発)
→雷岩(13時20分着[休憩]13時30分発)
→大菩薩嶺(13時40分着[休憩]13時45分発)
→雷岩(13時55分通過)
→福ちゃん荘(14時40分着[休憩]14時50分発)
→上日川峠(15時5分着[休憩]15時15分発)
→大菩薩峠登山口(16時15分着)
大菩薩の湯に寄り、バスにて塩山駅。帰途へ。
……
台風一過となり安心した。バスに乗り込む頃はまだ雨が少し降っていたが、次第に止み登山口より歩き始めると、薄日が射してきた。
出発前に宿の風呂にて、湯船にじっくり浸かり、かなり体が柔らかくなっていたため、出だしはスムーズ。裂石山・雲峰寺に上がる長い階段を横目に、民家や工場の合間にある、舗装された道を歩く。下ろし立ての登山靴であったが、靴下を二重に履いたので、靴擦れの心配も無さそうだ。
しばらく歩くと大樹の根本にお地蔵さんがいた。赤い帽子を被り、優しく迎えてくれた。ここから車道を離れる。芦倉沢川を渡った直ぐにある千石茶屋は、閉まっていた。熊出没注意の看板があり、熊鈴を装着。下の登山口から登ってくる人は少なく、ここから上日川峠まではあまり歩いている人が居そうにないので、熊に自分の存在を知らせることを考え鼻唄を歌いながら、登山道へ入った。
進んでも進んでも、私より数分前に同じところから歩きだした、バスに乗っていた大菩薩嶺まで行くという年配の男性は見えない。かなりの健脚だ。先を行ってくれたお陰で蜘蛛の糸が顔にかかることはなく助かった。霧が所々で発生していたが、木立の合間から太陽が見えた瞬間、目の前に虹が見えた。太陽を中心にドーナツのように七色のリングを描いていて、思わず立ち止まり観察した。都会の雑踏では見ることのできない幻想的な光景。神秘の一瞬を味わうことができた。
途中、崩壊しているので迂回をし再び舗装された道へ。二、三分でもとのルートに戻る。この辺りは栗の木が多くトゲの付いた殻が一面に転がり、まるで絨毯のようになっていた。踏んだ感触が心地よい。お手玉しようと、ひとつ拾った。軍手はしていたがトゲが肌に刺さり痛くて曲芸は諦めた。ブナ林もあり、食糧豊富で動物には住みやすいところだろう。
上日川峠に到着。車で来た方は、ここまで乗り入れ停めて、登るようである。大菩薩峠へ行くというご夫妻に、ここで長兵衛山荘を背景にカメラのシャッターをお願いした。このあと、福ちゃん荘を出て暫くすると再び会うのだが、聞けば埼玉在住で、夫婦で登山を毎月のようにされているとのこと。大菩薩も常連さん。昔に大菩薩峠にある介山荘でもらった、登頂記念の栞を拝見する。「ここから富士山がよく見えますよ」と、見張らし良い場所を教えてくれた。私は先に歩き始めたが、二人は私とほぼ同じぐらいの歩くペースらしく、カランコロンと、夫婦の熊鈴が仲良く心地よく鳴る音が、大菩薩峠に着くまでよく聞こえていた。
大菩薩峠に立った。北は八ヶ岳、南アルプスの連山、そして富士山が眼前に現れた。視界を邪魔する雲はない。三千メートルを越える山々の頂き部分は雪を冠していた。周囲の木々は赤や黄に色付きはじめ、ススキも揺らいでいた。東京方面もよく望めた。東京スカイツリーが見える場合もあると聞いてはいたが、生憎遠くは霞んでいて見られなかった。
営業していた介山荘で、おでんを注文。今日の最高気温は山頂で20度ぐらいとは把握していたが、風もあり体感温度は低いであろう。登っていた時は汗だくだか、やはり止まると山頂は寒いので、温かいものが食べたい。先程のご夫婦と再会し、昼食をご一緒させていただく。有り難くも、おかずや味噌汁を分けて頂いたので、お返しに大根や卵を差し上げた。私が芸人だと言うと、芸能の話でが盛り上がった。南アルプスをバックに写真を撮ってもらい、先に行かれるお二人を見送った。
十分に休憩を取ったあと、大菩薩嶺を目指し出発。稜線は左右とも展望が開けていて素晴らしい。歩く速度はこんなに見晴らしが良いと、どうしても遅くなる。岩に腰掛けて何ヵ所かで富士の山に見とれていた。朝早くから構えていたであろうカメラマンが、機材を沢山備え真剣に写真を撮っていた。しかし、次第に霧に覆われた。そんな中、下界から甲高い鳴き声が聞こえてきた。雄鹿が求愛するときに出す声だと、下山してから湯で一緒になった地元の方から教えてもらったのだが、このあとも頻繁に聞くこととなる。
雷岩で、中高年のツアーの皆さんとすれ違い、すぐに大菩薩嶺。視界はないが、日本百名山に登れたことは嬉しい。セルフタイマーで写真を撮り、雷岩まで戻り唐松尾根から下山していく。
やはり午後に入ると空は曇ってくる。肌寒くなったため、一枚羽織る。急激に下るが道は比較的歩きやすく、スイスイと。福ちゃん山荘に着きアイスキャンデーを食べる。疲れたときは、やはり甘いものが欲しくなる。椅子に座り大菩薩を眺め、上を見ると、雲はなくなり晴れてきた。青い天井は、幼少のころ見た故郷の空と同じだった。自分自身も童心にかえったのだろう。
陽が次第に傾いてきた。木陰は薄暗くなってきたので、熊に遭遇しないようペースを上げる。瞬時に足を置く場所を探し、腰を落として歩くことは、バランス感覚を養うことになり。曲芸する人にとっては、よき修練だ。
登山口に無事到着。天候にも恵まれ、充実した山行であった。なお、後日談であるが山でご一緒したご夫婦に写真をお送りしたら、お肉屋さんを生業とされているそうで、美味しいすき焼き用のお肉を頂戴した。山の出会いは不思議なものである。