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『緑衣の女』 アーナルデュル・インドリダソン(著),柳沢由実子(翻訳)

2024年08月30日 20時49分22秒 | ■読書
アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンの長篇ミステリ作品『緑衣の女(原題:Grafartogn)』を読みました。
アーナルデュル・インドリダソンの作品は5年前に読んだ『声』以来なので久し振りですね。

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2003年ガラスの鍵賞、2005年CWAゴールドダガー賞受賞

男の子が拾った人間の骨は、最近埋められたものではなかった。
発見現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近には英米の軍のバラックもあったらしい。
付近の住人の証言に現れる緑のコートの女。
封印されていた哀しい事件が長いときを経て捜査官エーレンデュルの手で明らかになる。
CWAゴールドダガー賞・ガラスの鍵賞を受賞。
世界中が戦慄し涙した、究極の北欧ミステリ登場。
訳者あとがき/文庫版に寄せて=柳沢由実子
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2001年(平成13年)に刊行された作品……エーレンデュル警部シリーズの第4作で、翻訳された作品としては2作目のようです。

幼い男の子が住宅建設地で拾ってきたその骨は、なんと人間の肋骨の一部だった……レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、親からの通報を受けて急ぎ現場に駆けつける、、、

だが、その骨はどう見ても最近埋められたものではなさそうだった……考古学者によると、その骨は埋められてからすくなくとも50年は経っているらしい。

現場近くにはかつて数件のサマーハウスが建っていて、付近にはイギリスやアメリカ軍のバラックもあったらしい……サマーハウスに住んでいた誰かのものか、、、

それとも軍の関係者か……エーレンデュルら捜査陣が調べていくと、付近の住人の証言の端々に緑のコートの女が現れる。

そして、封印されていた哀しい事件が長いときを経て明らかに……人はなぜここまで酷くなれるのか、そしてなぜここまで毅くなれるのか。

土の中に埋められていた骨の主の正体を追うレイキャヴィク警察の捜査、ある家族のドメスティック・バイオレンス、そして、娘エヴァ=リンドの危機をきっかけに語られるエーレンデュルの過去……物語は3つの方向から語られます、、、

閉ざされた家の中で夫が妻に向かって振るう暴力シーンの凄まじさ……殴られ、蹴られ、精神が壊れていく様は目をそらしたくなるほどですが、その心理状態の描写がリアルで納得感がありましたね。

そして、エーレンデュルが自らの過去を振り返りつつ、限られた証言や証拠を一つひとつ丹念に確認し、過去に起こった事件を再現していく展開に、ぐいぐいと物語に惹き込まれました……全体的に暗いトーンの物語で陰惨な場面もあるのですが、それでもページを捲る手を止めることができない、そんな作品でした、、、

家族の在り方、そして、夫婦とは、親子とは……考えさせられることの多い作品だったと思います。

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