高強度部品審取
平成23年(行ケ)第10134号 審決取消請求事件
請求認容
本件は拒絶査定不服審判不成立審決に対して取消を求めるものです。
争点は容易推考性の存否です。
裁判所の判断は15ページ以下。
本判決は、まず、引用発明の認定に関し、「刊行物1においては,鋼板の部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却し,得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させて剛性低下部を形成し,その剛性低下部を成形型内で加工する技術が密接に関連したひとまとまりの技術として開示されているというべきであるから,そこから鋼板の部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却し,得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させて剛性低下部を形成し,その剛性低下部を加工するという技術事項を切り離して,成形型内で加工を行う技術事項のみを抜き出し引用発明の技術的思想として認定することは許されない」と述べて、「審決の引用発明の認定には誤りがある」と判断し、審決には,「成形型内で加工する点を一致点として認定するに当たり,これと関連する相違点として, 本願発明は,「成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造する際に,…剪断加工を施す」のに対して,引用発明では,「成形品形状部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却」する点,「得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させ, 剛性低下部を形成」する点,「剛性低下部にピアス加工を施す」点を看過した誤りがある」として審決の誤りを指摘しました。
本判決は,次に、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすかどうかについて、「刊行物1記載の引用発明は,焼入れ硬度を低下させた部位を設けることで加工を容易にすることを中心的な技術的思想としているのであって,これを前提として成形型内で加工を行う技術事項も開示されているにとどまると理解すべきであるから,これらの技術事項を切り離して,成形型内で加工を行う技術事項のみを抜き出しそこにのみ着眼して,看過された相違点に係る本願発明の構成とすることができるかの視点に基づく判断は,容易推考性判断の手法として許されない」と述べて、この誤りは「審決の結論に影響を及ぼすものである」と結論づけました。
引用発明の認定の困難さを示す一事例として参考になります。なお、「審決の結論に影響を及ぼす」とは、必ずしも、審決の容易推考性を肯定した結論が誤りであることを意味するものではないことに留意が必要です。
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