1 平成24年10月10日判決言渡
2 本件訴訟は,特許出願の拒絶審決の取消訴訟であり、争点は進歩性の有無です。
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本判決は、容易想到性の判断の誤りについて、「補正発明の動翼プラットフォーム前縁(70)のフレア状構造の技術的意義は,流路内の主流の流れの乱れを小さくし,またより半径方向内側に設けられたシール構造(シール突出部(42)及びラビリンス歯(46))と相まって漏洩流を小さくし,かつ主流の流線型流れを促進する点にあるということができる」と認定し、他方、「抑制すべき漏れ出る流れが,引用文献3ではホイールスペースから流路に流れ込む高圧のシール用空気である一方,補正発明では流路からホイールスペースに流れ込む主流の一部である点において両者は異なり,また,補正発明では主流と順方向に漏洩流を吹き出すという点が考慮されていないから,引用文献3に記載された周知技術ないし技術的事項と補正発明とはその技術的意義が大きく異なる」と認定した上で、「引用文献1の図3のシール構造が具体的にいかなる機能を果たすものであるか直ちに断定できず,したがって流路内の主流の流れの乱れを小さくし,漏洩流を小さくし,かつ主流の流線型流れを促進するという補正発明の動翼プラットフォーム前縁(70)のフレア状構造を採用する動機付けが引用文献1に記載ないし示唆されているとはいい難いところ,引用文献2,3の周知技術ないし技術的事項は補正発明のフレア状構造とは技術的意義が大きく異なるし,また本件優先日当時,当業者の間では,蒸気タービン等の軸流タービンにおいて,静翼のノズルの根元付近で主流を乱す境界層が発生し,主流の流れを阻害して,タービン効率を低下させることが知られており,引用文献2のように,あえて主流の一部をホイールスペースに漏洩させて,上記境界層を除去することが試みられていたものである(甲7~11を参照)」と認定し。「仮に引用文献1記載発明に上記周知技術ないし技術的事項を適用したとしても,当業者において補正発明との相違点3に係る構成に容易に想到することはできない」と判断しました。
4 本判決は、想到性を否定した例として参考になるものと思われます。
以上
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