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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

ケミカルメカニカル審取

2013-01-14 16:41:00 | 最新知財裁判例

1 平成24年(行ケ)第10117号審決取消請求事件
2 本件は、無効審判不成立審決の取消を求めるものです。
3 本件の主たる争点は、新規事項の追加の有無及び容易想到性の成否です。
4 新規事項の追加の有無
4-1 この点について、本判決は、「本件明細書には,プラグを通るレーザービームの弱化を最小化する目的で,レーザービームの有害な散乱を生じさせるスラリが殆ど存在しないようにするとの作用効果を得るために,研磨パッドとプラグの間にギャップが存在せず「ほぼ共面」となっている構成が採用されることが示されていると理解される。そうすると,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1記載の発明において,上記の技術的意味で,「(中実な)プラグ」の上面と「研磨パッド」における表面の間にギャップが存在せず,「ほぼ共面」となっている構成を備えることにより,プラグを通るレーザービームの弱化を最小化する目的で,レーザービームの有害な散乱を生じさせるスラリが殆ど存在しないようにするとの作用効果を奏することは,本件明細書の記載から明らかというべきである」と述べ、「本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に,「前記プラグは前記研磨パッドの表面とほぼ共面の上面を有する」を加入する訂正は,新規事項を追加するものとはいえない。また,同じく,請求項40及び42に,「前記プラグは前記研磨パッドの第2の非透過性部分の表面とほぼ共面の上面を有し」を加入する訂正も,同様の理由により,新規事項を追加するものとはいえない」と判断しました。
また、原告の「 ①本件明細書に「ほぼ共面」なる記載はなく,図3(c)の説明に該当する段落【0029】にも「ポリウレタンプラグ42の上面が研磨パッドの表面とほぼ共面となっていること」の記載はない, ②「共面」とは,隙間のない連続した面を指すのか,隙間があっても同一高さの面を指すのか等,一般的な工業用語としても意味が特定できず,「ほぼ」とは,どの程度の「共面」を指すのかも不明である, ③本件明細書の図3(c)をみても,どのような状態が「ほぼ共面」なのか,図面内のどこを根拠にそのようにいえるのかが不明である」旨の主張に対し,「本件明細書に,「ポリウレタンプラグ42の上面が研磨パッドの表面とほぼ共面となっていること」の記載はないとしても,この点は,上記アのとおり,本件明細書の記載から明らかな事項と認められる。また,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1記載の発明において,「ケミカルスラリ40」の一部が「プラーテン16」の底部から漏出できないように構成することは,本件明細書の段落【0027】に記載されており,図3(c)に示された「(中実な)ポリウレタンプラグ42」の上面と「パッド18」における「カバー層22」の表面がほぼ同一平面上に位置する(「ほぼ共面」)構成で,「ケミカルスラリ40」の一部が漏出できないように,上記「ポリウレタンプラグ42」と上記「カバー層22」とが隙間なく接していることは,本件明細書(図面を含む。)の記載に接した当業者には自明である」ことから、「上記 ①及び ③の原告の主張は理由がない」と判断し、さらに、本件明細書の記載によれば,「(中実な)ポリウレタンプラグ42」の上面と「パッド18」における「カバー層22」の表面がほぼ共面となっている構成を備えることにより,レーザービームの有害な散乱を生じさせるスラリが殆ど存在しないとの作用効果を奏するというのであるから,本件訂正に係る「ほぼ共面」とは,「プラグ」の上面と「研磨パッド」の表面との間に「ギャップが存在しないこと」をいうことは,本件明細書(図面を含む。)の記載から明らかである」ことから、「上記 ②の原告の主張も理由がない」と判断しました。
4-2 容易想到性の成否
本判決は、「本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1における「ほぼ共面」とは,上記1のとおり,「プラグ」の上面と「研磨パッド」の表面との間にギャップが存在しない構成であることは,本件明細書から明らかである」とする一方,「甲1発明1における「透明窓材4」の上面と「研磨布5」の表面との間にはギャップが存在すると認められるから(【0023】),両者が「ほぼ共面」となっているとはいえない」と述べ、さらに、「甲1の記載によれば,甲1発明1は,本件発明1の「プラグ」に相当すると認められる透明窓材とウエハとの間にできる研磨液の膜を通してウエハの研磨面に照射した光の反射光を観察あるいは評価するものであるから,透明窓材の表面とウエハの研磨面との間の間隔は小さい方がよいとしても,透明窓材の上面とウエハが押し付けられる研磨布の表面とのギャップが存在しない,「ほぼ共面」にすることの動機付けはないというべきである(【0006】,【0007】,【0015】)」と判断し、さらに、「甲2には,研磨面全体が透明な部材からなるパッドが,甲3には,研磨面全体が石英等の光学的に透明な材料からなるポリッシャが,甲4には,研磨面全体が透明な合成樹脂等からなるポリシャが,それぞれ記載されているが,甲2ないし4には,全体を同じ材料からなる透明な研磨面として,レーザ光線を透過させて研磨することが記載されるにとどまり,プラグに相当する部材の上面とパッドに相当する部材の表面とのギャップが存在しない「ほぼ共面」にすることについての示唆があるとはいえない。ケミカルメカニカルポリシングシステムが研磨すべき面を平面化するものであることを考慮すれば,研磨面全体を同じ材料で構成することは当然であるが,このことから,プラグに相当する部材の上面とパッドに相当する部材の表面とのギャップが存在しない「ほぼ共面」にすることが示唆されるわけではない」ことから,「甲1発明1に,甲2ないし4記載の技術を適用して,「透明ガラス製の中実な材料からなる透明窓材4」の上面と「発泡材料からなる表面を有する研磨布5」の表面との間にギャップが存在しない構成,すなわち,両者が「ほぼ共面」である構成(相違点5に係る本件発明1の構成)とすることを当業者が容易に想到し得るとは認められない」と判断し、また,「甲9の発明の詳細な説明には,「ガラス板4は,前記研磨定盤6に張られた研磨クロス5の表面からわずかに後退してほぼ同一平面を形成するように該研磨定盤6の適宜部位に形成された取付孔6bに嵌着されており,その表面は前記研磨クロス5が張られることなく露出している。」と記載されることから,「ガラス板4」の上面と「研磨クロス5」の表面との「ギャップが小さい」ことが記載されるにとどまり,両者の間に「ギャップが存在しない」ことが記載されているとは認められない」と認定し、「第1図及び第3図には,ガラス板の上面と研磨クロスの表面が一直線で記載されているが,上記の発明の詳細な説明の記載からすれば,作図上の便宜のために,そのような記載がなされたものと理解すべきである」ことから「「本件発明1における「プラグは研磨パッドの表面のほぼ共面の上面を有すること」が,甲9の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たともいえない」と判断しました。
5 本判決は、引用例の図の読み方について、「第1図及び第3図には,ガラス板の上面と研磨クロスの表面が一直線で記載されているが,上記の発明の詳細な説明の記載からすれば,作図上の便宜のために,そのような記載がなされたものと理解すべきである」と述べたものであり、図の記載そのものは作図の便宜のために簡略化した記載がなされることを踏まえつつ、「詳細な説明」と合わせて読むことが必要であることを明示したものとして参考になると想われます。、
以上


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