*** june typhoon tokyo ***

MY IMPRESSIVE ALBUMS in 2010s ERA



 心に残る2010年代のマイ・フェイヴァリッツ・アルバム。

 自身の聴き込み不足のため、年末恒例の年間フェイヴァリッツ・アルバム選出企画の休止を先日の記事「MY FAVORITES LIVE AWARD 2019」内にて告知させていただきましたが、その代わりといってはなんですが、2010年代において自身が印象深かった作品10枚を紹介しておきたいと思います。

 2010年からの10年間における10枚ということで、その年のアウォード受賞作を10年分並べればいいのでは? と思われるかもしれませんが、そこは微妙に異なります。もちろんベースとなるのは年末恒例企画〈マイ・フェイヴァリッツ・アウォード〉でノミネートしてきた作品となりますが、各年の〈マイ・フェイヴァリッツ・アルバム〉はその1年においてインパクトを残したアルバムだとすると、当〈マイ・インプレッシヴ・アルバムズ・イン・2010sエラ〉においては、発表年のみならず、“それ以降も長く自身の脳裏に残るアルバムとなった”ことが加味されています。最もよく聴いた作品群とも言えず、何とも説明が難しいところですが、耳にした時に「オッ」と少なからず驚きや興奮を感じた濃度の高い作品といえばいいでしょうか。

 10枚という制約を設けたため(自分で勝手に設けたんだろうがという声が聞こえ……ない聞こえない……)、あれやこれやと選考しながらもスッキリした感じもないので(苦笑)、タイトルを「ベスト10」ではなく「インプレッシヴ」としたのはそういった理由もあります。(;´∀`) 

 あくまでも、独断と偏見&身勝手極まりない超私的アウォードのスピンオフ企画なので、肩肘張らず適当に覗いてくだされば喜びます。意見などありましたら、お気軽にどうぞ。

 それでは、アーティストのアルファベット順に紹介していきます。

◇◇◇

■ The Internet/Ego Death(2015)


 ヒップホップとネオソウルを融合させ、オルタナティヴR&Bシーンという道筋を拓いたジ・インターネットの2015年作で、グラミー賞にもノミネート。オルタナティヴR&B濃度ではジ・インターネットのヴォーカル、シドのソロ作の方が深度は高いと思うが、2010年代末において珍しくもなくなったオルタナティヴR&Bの先鞭をつけた革新性という意味では、そのクラシックスといえる。




■ Janelle Monae/The Archandroid(2010)


 2019年に初来日公演を果たしてくれたジャネール・モネイ。女優でも活躍し、表現力に長けた彼女のデビュー・スタジオ・アルバムで、グラミー賞ノミネート。章立ての構成や映画『メトロポリス』を想起させるアートワークなど、物語性に重心を置いた内容はやや小難しさもあるかもしれないが、細部まで妥協なく練られていて、アルバムならではの独自性と創造性が見事。




■ Jesse Boykins III/Love Apparatus(2014)


 2014年の〈マイ・フェイヴァリッツ・アルバム〉受賞作に選んだ、ジェシー・ボイキンス3世の2作目。メロー・Xとコラボレートした『ズールー・グールー』の幻想的でカオスなムードから輪郭を際立たせ、艶やかで上質なソウルネスへと寄せた生々しさが魅力。ジャズ、ソウルとエレクトロニックとの化学反応が絶妙なセンシュアルなアルバムだ。




■ Joe/Doubleback:Evolution Of R&B(2013)


 2013年に”R&Bの進化”を掲げて、”俺こそが生身(=真の)R&B”だと言わんばかりの裸ジャケットで放った決意作。当時のカジュアルやポップ・ライクなR&B楽曲群を尻目に、進化といいながらR&Bの王道をぶち込んでくる気概が胸を打つ。ファンテイジアとの「ラヴ・アンド・セックス」ほかストレートなタイトル曲もあり、これぞ良質なエロティックR&Bという一枚。




■ Justin Timberlake/The 20/20 Experience(2013)

 2006年の『フューチャーセックス/ラヴサウンズ』から7年ぶりも、ブランクを一切感じさせないどころか、ソウル・ポップの最高峰みたいなクオリティの楽曲群を凝縮。タイトルは”20日間で20曲を作った経験”みたいな意味らしいが、直後にその第2弾『20/20 エクスペリエンス 2/2』をリリースするのだから、非凡極まれり。ジェイ・Z客演の「スーツ&タイ」から漂うエレガントな佇まいに脱帽。




Lalah Hathaway/Where It All Begins(2011)


 通算6枚目、〈スタックス〉からは2枚目となるアルバムでは、冒頭の「ストロング・ウーマン」のタイトルからも分かるように自立した女性像を歌う。これほど低音を美しく歌う人もいないのでは。スムースなネオソウル「スモール・オブ・マイ・バック」は珠玉。父ダニー・ハサウェイ作品のジャケットを模した(自分の顔に入れ替えた)図柄を髪部分に配したアートワークにも、ダニーへの愛と尊敬が見える。




■ Robert Glasper Experiment/Black Radio(2012)


 グラミー賞最優秀R&Bアルバム受賞、ジャズ・チャート1位獲得という記録のみならず、音楽シーンに大きな変革を起こしたといえる、ジャズとヒップホップの架け橋的なアルバム。ロバート・グラスパーはじめ気鋭ジャズ・ミュージシャンたちによる即興的クロスオーヴァー作で、グラスパーの芳醇な鍵盤を下敷きに、抽象的で複雑なビートが絡むなかでも、甘美なムードが横溢する。




■ Solange/A Seat At The Table(2016)


 ”ビヨンセの妹”という肩書きを吹っ飛ばしたフル・アルバム第3弾。派手な振る舞いはなく、淡々とした抑揚の少ないアンビエントなムードが通底するが、その面持ちとは対照的に内なる炎が揺らぎ続ける力強さを持っている。冷ややかだが生命を感じるようなヴォーカルも秀逸。音数は少ないが、それでいてR&Bの質を感じさせるのは、クエストラヴ、Q・ティップ、ラファエル・サディークあたりの功績か。




■ Sy Smith/Fast And Curious(2012)


 ホイットニー・ヒューストンのバックをはじめ、ブラン・ニュー・ヘヴィーズへの参加やクリス・ボッティのツアー・ヴォーカルなどもこなす”サイバーフューチャーソウル”の才女ことサイ・スミス。マーク・ド・クライヴ・ロウのプロデュースにより、エレクトリックな色合いを深めたネオソウル/クロスオーヴァー作品へと昇華。キュートな声色とブロークンビーツの融合がサイバー濃度を深める佳作。




■ Tinashe/Aquarius(2014)

 ソングライター、ダンサー、プロデューサー、女優とさまざまなフィールドで才能を発揮するティナーシェの初作。クールに佇むミステリアスなムードが覆うアンビエントR&Bからコケティッシュに振る舞うビタースウィートな楽曲まで、振幅の大きさも魅力。”ネクスト・アリーヤ”との惹句は短絡的だが、才知としては見紛うなき逸材。フェロモン系ながらそれがクドくならないところも妙味。




◇◇◇



 いかがだったでしょうか。超個人的な10年間の10枚を選んだ訳ですが、僅差にて泣く泣く選外とした作品も数知れず。結果的ではありますが、2017年以降の作品を選ばなかったのは、10年間というタームにおいて、まだ自分の中で2010年代前半の作品と同等の評価をするまでに咀嚼しきれていなかったのかもしれません。FKJやムラ・マサ、ネイオ、H.E.R.など、これから時間を経て自分のなかで評価を高めていく作品も多くなると思いますので、またしかるべきタイミングで2010年代のベスト10企画をやってみようかなと考えている次第です(しばらくはやりませんが…苦笑)。

 2019年は本当に意識の面で新作アルバムに無頓着なところがあったので(別な言い方をすれば、2018年までの作品を聴きまわすことで十分に音楽を味わえていたともいえますが)、2020年は新たな才能の登場やあっと驚くような斬新作にも期待しながら、自身に無理強いすることなく(これ大事)音楽に触れていけたらいいなあと思います。

 2020年、みなさまも良きミュージックライフをお送りくださいませ。

◇◇◇

※ 参考

【MY FAVORITES ALBUM AWARD 歴代受賞作】
2005年
ERIC BENET『HURRICANE』
2006年
NATE JAMES『SET THE TONE』
2007年
洋楽部門:LEDISI『LOST & FOUND』
邦楽部門:AI『DON'T STOP A.I.』
新人賞 :CHRISETTE MICHELE『I AM』
功労賞 :ICE
2008年
洋楽部門:Raheem DeVaughn『Love Behind The Melody』
邦楽部門:有坂美香『アクアンタム』
新人賞 :Estelle『Shine』
2009年
洋楽部門:CHOKLATE『To Whom It May Concern』
邦楽部門:該当作品なし
新人賞 :RYAN LESLIE『Ryan Leslie』
2010年
洋楽部門:ERIC BENET『lost in time』
邦楽部門:久保田利伸『TIMELESS FLY』
新人賞 :JANELLE MONAE『THE ARCHANDROID』
特別賞 :『SR2 サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム オリジナルサウンドトラック』 
2011年
洋楽部門:KELLY PRICE『KELLY』
邦楽部門:MISIA『SOUL QUEST』<“77 Minutes Of MISIA”Mixed By MURO>
2012年
洋楽部門:SY SMITH『Fast And Curious』
邦楽部門:AISHA『I,Shout!!!』
2013年
最優秀作:Joe『Doubleback:Evolution Of R&B』
特別賞 :Maxine Ashley『MOOD SWINGs』(配信作品)
2014年
最優秀作:Jesse Boykins III『Love Apparatus』
新人賞 :Tinashe『Aquarius』
2015年
最優秀作:Dornik『Dornik』
2016年
最優秀作:Bruno Mars『24K Magic』
2017年
最優秀作:FKJ『French Kiwi Juice』
2018年
最優秀作:Nile Rodgers & Chic『It's About Time』



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