*** june typhoon tokyo ***

MY FAVORITES ALBUM AWARD 2012

■ MY FAVORITES ALBUM AWARD 2012

 
 前回のベスト・ライヴ・アワードに続いて、2012年の超独断と偏見的なベスト・アルバム企画“マイ・フェイヴァリッツ・アルバム・アワード”の2012年篇をお送りしたいと思います。

 2012年を全体的に見ると、CD購入量や音楽に触れる機会などは2011年に引き続いて横ばいだった印象があります。新譜を追わなくなった訳ではないけれど、以前ほど早く手に入れたいというスピード感を気にしなくなってきたというのが心的変化といえるでしょうか。もちろん、早く情報を手に入れて、いち早く音楽に触れ合えることは理想なんですが、流行や勢いだけで吸収する、手にすることに意味を求めなくなったというか。いい音楽は、いつ手に入れてもそのもの自体が持つ鮮度は変わらないですし。

 あと、ここ数年ですが、本当に邦楽へのアンテナが鈍ってきたというか、洋楽へのふり幅が大きくなっているというか、全体的な許容量や包括力が小さく、衰えてきたというのか。パッケージから配信、ネットへと中心が移行するなかで、瞬間的にいいと思う音楽はあっても、俯瞰して、長期的に考えても残りそうなものとなると…と考えると、いまだにパッケージに魅力を感じる自身としては、アルバムとしてトータルにいいものと感じないと手を出しづらくなる(=購入機会が減る)……という。簡単に言うと、「そんなに音楽に金遣えないし、聴く余裕もないし」という、まぁ元も子もないことになってしまうんですが、そんな思いが邦楽には特にあったりしたのは否めません。おそらく、自分が変に凝り固まって扉を開いてないだけだとは思うんですけれども。

 というなかで、2012年に良かったと思うものを、狭い範囲からではありますが、挙げていきたいと思います。原則的に2012年にオリジナルとしてリリースされたものが対象となってますので、実際には2012年に手に入れられたものでも、2011年リリースだと省いている可能性があるものもあります。そのあたりは非常にアバウトな選出ですのでご容赦を。

 では、ひとまず、前回までの授賞作品をおさらいしておこうと思います。


◇◇◇

【過去の授賞作品】

2005年
ERIC BENET『HURRICANE』

2006年
NATE JAMES『SET THE TONE』

2007年
≪洋楽部門≫
LEDISI『LOST & FOUND』
≪邦楽部門≫
AI『DON'T STOP A.I.』
≪新人賞≫
CHRISETTE MICHELE『I AM』
≪功労賞≫
ICE

2008年
≪洋楽部門≫
Raheem DeVaughn『Love Behind The Melody』
≪邦楽部門≫
有坂美香『アクアンタム』
≪新人賞≫
Estelle『Shine』

2009年
≪洋楽部門≫
CHOKLATE『To Whom It May Concern』
≪邦楽部門≫
該当作品なし
≪新人賞≫
RYAN LESLIE『Ryan Leslie』
 
2010年
≪洋楽部門≫
ERIC BENET『lost in time』
≪邦楽部門≫
久保田利伸『TIMELESS FLY』
≪新人賞≫
JANELLE MONAE『THE ARCHANDROID』
≪特別賞≫
『SR2 サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム オリジナルサウンドトラック』 

2011年
≪洋楽部門≫
KELLY PRICE『KELLY』
≪邦楽部門≫
MISIA『SOUL QUEST』<“77 Minutes Of MISIA”Mixed By MURO>


◇◇◇

【総評】

 2012年はというと、実はあんまりパッとしないというのが率直な印象。だからといって不作だったかというとそうでもないような。前回の総評で「猫も杓子もエレクトロという流行がようやく沈静化してきた」「エポックメイキングな年ではないが、その過渡期にあるとはいえなくもない」というようなことを述べていたが、2012年はその延長線にあったような気がする。
 たとえば、邦楽シーンではAKB48、K-POP、アイドル戦国時代といった潮流も一定の評価を得たものはそれなりに残り、役目を終えたものはシーンから遠ざかり、消えていくという“ろ過”的な年であったのではないかと。人ごみに溢れていた街がようやく通常の街並みに戻りつつあるような(その顔ぶれは多少変わっていたとしても)、そんな印象を持ったのが2012年だった。

 一つ大きなトピックとしては、エレクトロやクラブ・チューンを取り入れる動きが活発化した結果、EDM(Electronic Dance Music)というジャンルが出現したこと。厳密にいえば、かつてからこのEDMというジャンルは存在していたので、“出現”というには違うかもしれない。その言葉が浸透してきたといった方が適切か。ただし、以前の解釈と違って、エレクトロ・ハウス、ダンサブルなプログレッシヴ・ハウスやダブ・ステップあたりを特に指すジャンルを言うようになってきた。大雑把に、乱暴にいうと、デヴィッド・ゲッタをはじめ、スウェディッシュ・ハウス・マフィア、カルヴィン・ハリス、アフロジャック、カスケード、ニッキー・ロメロ、スクリレックス、ゼッドあたりがやってるクラブ・ミュージックということになるか(本当に大雑把)。これらが手掛けた楽曲が“EDM”としてR&Bシーンにも導入され…というより、むしろ、これを核とする作品を発表するR&Bアーティストたちが主戦力となってきたともいえる。これはレディー・ガガあたりの成功の影響も大きいのかもしれない。
 このEDMの潮流は全世界的に広まっていて、邦楽でもPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅといった、いわゆる中田ヤスタカ・サウンドの認知の広まりとともにすっかりシーンに溶け込み、SMAPや嵐などのトップ・アイドルから雨後の筍のように輩出されたアイドル・グループにまでその影響を及ぼしている。そういう意味では、単純にダンサブルなエレクトロ・ハウスのアレンジやリミックスの楽曲という片付け方を出来なくなったと思う。
 これは、それまでのブームが定着して一般的市民権を得たというひとつの例かもしれない。

 ところで、個人的に、特にブラック・ミュージック・シーンでの大きな出来事といえば、やはりホイットニー・ヒューストンの死亡ということになるか。自分の音楽的感性に大きく影響を与えたのは、男ではマイケル・ジャクソン、女性ではホイットニーだった。おそらく初めて購入した“CD”もホイットニーだったように思う。近年では安直に使われることの多い“ディーヴァ”という言葉だが、真の意味でこの言葉に相応しい数少ない一人だった。モニカは14年ぶりのブランディとの共演曲「イット・オール・ビロングス・トゥ・ミー」でホイットニーへのトリビュートとしたし(アルバム『ニュー・ライフ』収録)、そのブランディはアルバム・タイトルに自身の誕生日とホイットニーの命日となる2月11日を冠したりした(『トゥー・イレヴン』)。薬漬けからの復帰するも、やはり全盛期と比べてしまうとイマイチだった新作や世界各地で酷評を浴びたライヴなど落胆することも少なくなかったが、懸命に戦ってのことだし、第二のスタイルを模索してもいいと思った矢先の出来事だった。亡くなってみると、その存在はあまりにも大き過ぎたことを実感した。
 また、ソウル・シンガーのエタ・ジェイムス、『ソウル・トレイン』司会者のドン・コーネリアス、“ゴッドファーザー・オブ・ゴーゴー”ことチャック・ブラウン、ディスコ界のセクシー・クイーンのドナ・サマー、アシッド・ジャズやレア・グルーヴあたりで人気だったテリー・キャリアー、デルフォニックスで活躍後のソロではルーサー・ヴァンドロスのカヴァー「ラヴ・ウォント・レット・ミー・ウェイト」でも知られるヒットを持つメイジャー・ハリスがこの世を去った。“和製トム・ジョーンズ”こと尾崎紀世彦も。多くのタレントを失ったが、彼らの足跡をもう一度耳にしていく時間を持ちたいものだ。リーラ・ジェイムスはエタ・ジェイムスへのトリュビート作『ラヴィング・ユー・モア~イン・ザ・スピリット・オブ・エタ・ジェイムス』をリリース。先達の名曲をどのように受け継いでいるか、今後も長くじっくり味わってみたい。 

 まとまりもなく述べてきたが、一言でいい表わすと、2012年は“進化”“熟成”の年といえるかもしれない。良いものを良いものとして発展、継承させる“発酵期”として、将来振り返った時に年輪として重ねられた2011年の延長期として、語られるのではないだろうか。

◇◇◇

 と、またもや説得力となる検証もない身勝手な総評となってしまいましたが、2013年にはどんな展開が待っているのでしょうか。

 では、そろそろ2012年の“マイ・フェイヴァリッツ・アルバム・アワード”のノミネート作品を挙げていきましょう。
 

◇◇◇

<ノミネート作品>

【最優秀作品】

≪洋楽部門≫
ANTHONY DAVID『Love Out Loud』
DWELE『Greater Than One』
ELLE VARNER『Perfectly Imperfect』
ERIC BENET『The One』
ESPERANZA SPALDING『Radio Music Society』
ESTELLE『All Of Me』
THE FLOACIST『Floetry RE:BIRTH』
GEORGIA ANNE MULDROW『SEEDS』
JEFF BERNAT『The Gentleman Approach』
KEYSHIA COLE『Woman To Woman』
LEELA JAMES『Loving You More…In The Spirit Of Etta James』
MONICA『New Life』
ROBERT GLASPER EXPERIMENT『BLACK RADIO』
SWV『I Missed Us』
SY SMITH『FAST AND CURIOUS』

以上15作品(A→Z)


≪邦楽部門≫
AISHA『I,Shout!!!』
安室奈美恵『Uncontrolled』
Perfume『Perfume Global Compilation“LOVE THE WORLD”』
雅-MIYAVI-『SAMURAI SESSIONS vol.1』
山下達郎『OPUS ~ALL TIME BEST 1975-2012~』
WONDER GIRLS『Wonder Best KOREA/U.S.A/JAPAN 2007-2012』

以上6作品(あ→ん)


◇◇◇

 洋楽部門は昨年と同様に15作品をノミネート。個人的にR&Bのエレクトロ化にかなり飽きがきてしまっていることもあってか、前述で登場しておきながら、クリス・ブラウンとの共演曲「プット・イット・ダウン」が収録されていることがどうしても馴染めないという理由だけでブランディ『トゥー・イレヴン』(BRANDY『Two Eleven』)は選外にしてしまいました(ということで、クリス・ブラウン『フォーチュン』(CHRIS BROWN『Fortune』)も挙げていない)。前作よりはキャッチーで意図が明確なのは評価出来るニーヨの『R.E.D.』(NE-YO『R.E.D.』)もモータウンからのリリースとしてはダンス・ポップし過ぎてしまっている感じがして、選んでおりません。アリシア・キーズの結婚&出産後初となるアルバム『ガール・オン・ファイア』(ALICIA KEYS『Girl On Fire』)はマックスウェルのデュエットなどもあって高い占有度でR&Bをカムバックさせてくれたことは嬉しかったし、名作ではあると思うのですが、タイトル曲の「ガール・オン・ファイア」でフィーチャーしたニッキー・ミナージュがどうも邪魔で(やっつけ感丸出しのPV含め)気になって仕方ないため、これも選外に。これらはもっと聴き込めば、その後の評価は変わるかもしれませんが。

 邦楽部門はなんだかベスト的なものが多く揃ってしまいました。オリジナルとしてはAISHAと安室奈美恵のみですか。ワンダーガールズはK-POPということで洋楽部門に入れてもいいのですが、日本語楽曲もリリースしているし(BoAや東方神起的な立ち位置として)邦楽部門に入れてます。

 それでは、2012年の“マイ・フェイヴァリッツ・アルバム・アワード”を発表したいと思います!
 

◇◇◇

【MY FAVORITES ALBUM AWARD 2012】

【最優秀作品】

≪洋楽部門≫

SY SMITH『Fast And Curious』
(サイ・スミス『ファスト・アンド・キュリオス』)

Sysmith_fastandcurious


≪邦楽部門≫

AISHA『I,Shout!!!』

Aisha_ishout


◇◇◇

Robertglasper_br 洋楽部門は、コンスタントに良作を発表するヴェテラン、久しぶりの復帰組、日本には新しく紹介されたニューカマーとヴァラエティに富んだノミネートとなりました。面白いところでは、ロバート・グラスパーやエスペランサ、ジョージア・アン・マルドロウといったジャズ寄りの人たちの作品が増えたことでしょうか。といっても、完全なジャズ作品という訳ではなく(ジャズは門外漢なので)、しっかりとブラックネスやR&Bとリンクしたものだったので、自分の食指が動いたのだと思います。

Ellevarner_pi 新人としてはエル・ヴァーナーとジェフ・バーナットを選出。バイ・オール・ミーンズのメンバーを両親に持つ才女エルは“ポスト・アリシア・キーズ”の枕詞を得ていましたが、ヒットしたJ・コール客演の「オンリー・ワナ・ギヴ・イット・トゥ・ユー」はヒップホップソウル的なアプローチもあり、ハスキーなヴォイスからも“ネクスト・クリセット・ミッシェル”という方が言い得て妙かもと思います。まぁ、クリセット自身がネクストを持つ年齢なのか? ということはさておき。ジェフ・バーナットはフィリピン系アメリカンで、コリアン・アメリカンのサム・オック的な優しいジャジィなアプローチからのヒップホップを提示してくれました。

Swv_imu ヴェテランや復帰組では、何と言ってもSWVが素晴らしかった。この時代に迎合することなく全盛期のザ・90年代R&B/ガールズ・グループ・サウンドで颯爽とカムバック。でありながら、メアリー・J・ブライジ「ジャスト・ファイン」風の「ドゥ・ヤ」も含めつつといった懐古感を払拭した完成度は、リアル世代はもとより現代の若者たちにも充分訴求した作品だといえるでしょう。エリック・ベネイもハイレヴェルでR&B/ソウル・ミュージックを提示してくれた一人。この安定感はしばらくは続くのではないでしょうか。エリックをはじめネオ・ソウル勢は自分の最も好むところの一つなのですが、そのなかではドゥウェレが『グレーター・ザン・ワン』という完成度の高いアルバムをリリース。この人はいい楽曲は書きながらもアルバムとしてのトータル・コーディネートという意味ではややまとまりを欠く作品が少なくなかったのですが(実験的、チャレンジ精神旺盛な自作自演家ともいえますが)、今作はラヒーム・デヴォーンやモニカ・ブレアーらの手も借りつつ、デトロイト愛を見せた作品に仕上がっていました。

Leelajames_lym また、トリビュート(カヴァー)ではありますが、リーラ・ジェイムスのエタ・ジェイムスへ捧げたアルバムも素晴らしかった。ビヨンセが映画『キャデラック・レコード』で披露した「アット・ラスト」やクリスティーナ・アギレラが映画『バーレスク』で演じた「サムシングズ・ゴット・ア・ホールド・オブ・ミー」をはじめ、エタの名曲を再演。元来、デビュー作でもサム・クック「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」を収録するなどヴィンテージ感溢れるソウルとも相性がいいという声質もあって、偉大なソウル・シンガー集を編むのにもまったく見劣りしない、傑作カヴァー・アルバムだと思います。

 このほかにもアンソニー・デイヴィッドやエステル……と挙げればキリがないのですが、そのなかで一作を選ぶとすればどうすればいいのか。もうここは単純に、一番多く聴いたであろう(集計をとっている訳ではないので推測に過ぎないのですが)作品をベストに選ぼうではないかと。その観点から選ぶとすると、一番多く聴いたという印象が残っていたのが、サイ・スミスの『ファスト・アンド・キュリオス』でした。このアルバムについては、以前にCDレヴューとして記事にしていますので(2012年5月11日(金)付け:SY SMITH『FAST AND CURIOUS』)、そちらを参照してもらえればと。洗練された上質な佇まいとコケティッシュなヴォーカルで創り出す、次世代ネオ・ソウルともいうべきクロスオーヴァー作といえます。

_opus 一方、邦楽部門はオリジナル作とベストといった構図。基本的にはベスト盤をその年の“ベスト”として選出するのにはいささか抵抗がないこともないのですが、ここに挙げられた作品はベストながらも聴くべき意味を持った作品だったと思います。特に、山下達郎の『OPUS~』は彼自身のこだわりや意図がしっかりと反映されていて、現代で聴く上で最善となるようなリマスタリングなどかなり時間と手間を掛けて再構築したものとなっています。そして、これもSWV同様、時流に決して流されないグッド・ミュージックがつづら折りに収められていることも、名盤の条件の一つなのではないでしょうか。自分はほとんど彼のアルバムを購入したことはないのですが(おそらく過去にレコードで『RIDE ON TIME』を買ったくらい)、このベスト・アルバムは買う価値の高い一作だと思います。

Miyavi_ssvol1 雅-MIYAVI-はヴィジュアル系出身ということもあり、このままの流れであったならば普段なら聴くことのないところなのですが、彼が打ち出した“SAMURAI SESSIONS”第1弾となったKREVAとのシングル「STRONG」で俄然興味を持ったというか。KREVAというよりも、彼が打ち響かせるギターをピックを使わずに指で弾く独自のスラップ奏法にやられました。その2011年から始まった〈対戦型コラボレーション〉をまとめたのが、『SAMURAI SESSIONS vol.1』ということになります。H ZETT Mのピアノや、三味線の上妻宏光とフラメンコ・ギターの沖仁との和風なバトルなど、斬新で強烈なインパクトのある7曲。“vol.1”ということで、第2弾も大いに期待したい作品です。

Wondergirls_wbest 邦楽作品にエントリーしたワンダー・ガールズ。2007年にデビューし、ステイシー・Q「トゥー・オブ・ハーツ」からインスパイアされた「Tell Me」がヒット。K-POPブームの礎を作った彼女らのデビューから2012年までに韓国、アメリカ、日本でリリースされた作品からセレクトされたベストが『Wonder Best KOREA/U.S.A/JAPAN 2007-2012』となります。他のK-POPグループと違って好んで聴いたのは、やはり初期の“復古3部作”「Tell Me」「So Hot」「Nobody」あたりがR&B/ディスコ・サウンドを踏襲していること。元々、プロデューサーのJYP(パク・ジニョン)がアメリカで過ごした時にブラック・ミュージックに影響を受けていることもあり、楽曲にはその影響が随所に出ていたりするので(「2 Different Tears」なんかワム!「バッド・ボーイズ」の展開にそっくり。ラストのアレンジも。)、そのあたりが反応させるのかも。まぁ、そのためか、彼が制作する楽曲は盗作疑惑がことあるごとについてくるのですが……(実際、後でクレジット変更があったものも少なくないので)。収録されている「Like this」はアン・ヴォーグあたりを想起させる90年代ガールズ・グループR&Bとエレクトロを融合させた感じだったりと、自分のツボをついてくるんですよねぇ。彼女らは“復古3部作”で自身らのイメージを決め付けてもらいたくないと、メンバーのイェウンが詞曲や編曲を手掛けたりすることもあり、「G.N.O.」などエレクトロなダンス・サウンドもあって、ヴァラエティにも富んでいます。

 といったなかで、これらを凌駕するオリジナルはないのか……と目を向けてみると、あった、あった、ありました。これは本当に久しく邦楽シーンで感じた“これだ!”という感覚でした。それがAISHA『I,Shout!!!』で、その心境は、すでに「近況注意報 音楽篇 1024」にて記していました。この“山田優or西山茉希+マリーン”なルックスの彼女が、停滞している(ように感じてしまう)日本のR&Bシーンを活性してくれるのではないかと。この歌唱力と迫力ある声量での訴求力(そしてファンクネスとグルーヴ!)は近年のシーンになかなか見られなかったもの。正直いうと、もうR&Bディーヴァを語ったキラキラセツナ系なんちゃってアーランビー・シンガーが次々と出てくる状況は勘弁して欲しいんですよ。あ、言ってしまった。(苦笑)
 スキルや歌唱力は本当に素晴らしいので、楽曲や宣伝戦略を含めて間違った方向へいかないよう、周囲のスタッフに是非しっかりとやってもらいたいと切に願うばかりです。すでに(いつ出るかどうかも解かりませんが)次作の期待感の大きさといったらありません。

 ところで、昨年、邦楽で期待していたといえば、2007年『COSMICOLOR』から約5年ぶりとなるm-flo『SQUARE ONE』でした。ヴォーカリストを発表せず(事実上、公になった共演者はいるとしても)純粋に音楽を楽しんでもらいたいという主旨とm-floの原点回帰をするというテーマは、第3期m-floの旅立ちとしてグッド・コンセプトではあったと思う。ただ、(VERBALのソロ作『VISIONAIR』でも何となく予測はついていたが)元来彼らのサウンドにも包含されてはいたとはいえるけれども、流行のEDM方面へ走ってしまっていて、クラブ仕様へと様変わりしたライヴも含め、個人的には期待が大きかったこともあって、イマイチな感覚に終わってしまったのは残念でした(ミゲルくんの「消臭力」をサンプリングして曲として成立させちゃうセンスなどは、相変わらず凄いと思うけどね)。

 なんだか最後に、昨年に続いてm-flo作品をけなしてしまっていますが、それも彼らを愛するがゆえ、ということでよろしくお願いします。(笑)


◇◇◇


 以上で2012年の“マイ・フェイヴァリッツ・アルバム”を洋邦に分けて発表した訳ですが、いかがだったでしょうか。やっぱりとりとめもなく語っていくと、ダラダラと長くなってしまいますね。最後まで読んだという奇特な方には、申し訳ないことこの上ないです。

 もちろん、まだ2012年作であっても未聴の気になるアルバムもありますし、実はど忘れしていた! という作品もあるでしょう。ですから、将来的には評価が変わるかもしれませんが、ひとまず、自分の2012年を終えた段階での区切りとしては、以上の作品を2012年の“マイ・フェイヴァリッツ・ベスト・アルバム”とさせていただきたいと思います。

 前回にも記しましたが、そのうち「5年単位で優秀作品をいくつか挙げてみる」とか、あらためて選考してみるのもいいかもしれません。洋楽邦楽両部門を設けてから6年、最優秀作品を選んでから8年になりましたし。ただ、かなり時間のかかる作業となるのは解かり切っているので、その時間が作れず、企画倒れになることも考えられますが……。(苦笑)

 ということで、2013年はこれまで以上に新しい発見と眠っていた作品との再会&再認識の機会を多く持てるよう、感覚を研ぎ澄ませながら楽しみたいと思っています。

 長々とありがとうございました。

 
 
 
 



 以上です、キャップ。
 





 
  
 



 
 




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コメント一覧

野球狂。
> それは大変申し訳ないと!
http://jtt.blogzine.jp/jtt/
> それは大変申し訳ないと!
あ、いや~「最近のチェックしなさ加減に腹を立てていた」は、自分に対してでございます。もうやること大変絶頂モードなミホさんに、「チェックしとけ、おらぁ! PC開け、おらぁ!」なんていえますでしょうか。ましてや新妻でいらっしゃいますし(いわんやをや)。

> 身体は絞れたんでしょうか(いいえ、私も)。
年頭から鋭いお言葉!恐縮です。(いいえ、私も)。

今後とも、適度にダメ出し、ちょっかい出してもらえますよう、ないセンスを振り絞って綴っていきますので、よろしくお願いします!(本当に!)
申し訳ミホ
それは大変申し訳ないと!
http://ameblo.jp/keepyourheadup
それは大変申し訳ないと!
要介護3ぐらいの小さい人がいると、PC開くこともままなりませんで・・・(と言い訳)
米国ショウビズもパクリ疑惑PSYの影響で韓国アゲ!なんでしょうかねー。
ディアンジェロは今年日本来るという噂も耳にしましたが、どうなんでしょうか。
身体は絞れたんでしょうか(いいえ、私も)。
body&soul写真集の時ぐらいになってたら、鼻血出しに行きたいと思います。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。
いつも拝読してます!
野球狂。
あ、奇特な方! いえいえ、新妻さんじゃないですか...
http://jtt.blogzine.jp/jtt/
あ、奇特な方! いえいえ、新妻さんじゃないですか。(笑) あけましておめでとうございます。
最近のチェックしなさ加減に腹を立てていたところ、なんとお褒めの言葉、恐縮です。

> 2013年はもうちょっとピコピコ系の鎮静化、オールドスクール回帰な人が出るといいなーなんて

まったくもってそのとおりですね。
よりいっそうネオソウルだのフィリー系だのをインディ・レヴェルで探すことにならないよう、メジャーな人々にも頑張ってもらいたいところです。ディアンジェロとかマックスウェルとか。(なんかマックスウェルは韓国でライヴやってた?らしいです。だったら日本来いよと)

というわけで、いつも大した記事を書いておりませんが、今年もよろしくお願いします。
ミホ
はい、奇特その1です!笑
http://ameblo.jp/keepyourheadup
はい、奇特その1です!笑
あけましておめでとうございます。

私も気付いたら聴いてはいるものの、やはり野球狂。さまとは天と地ほどの差がありますね。
PVまでチェックしてらして・・・
エタへのトリビュートも聴きたい!!
キラキラセツナ系なアーランビーなんて笑 まさにもう聴き飽き系、耳にタコでございましてね。
2013年はもうちょっとピコピコ系の鎮静化、オールドスクール回帰な人が出るといいなーなんて
独りよがりな年頭所感でございます。
今年も楽しみにしておりますね!
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