「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのかー有料座席列車導入は鉄道活性化のカギ

こんにちは。大塚良治『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)で鉄道活性化策を提言しています。

西武鉄道の企業価値向上策―池袋線・新宿線特急料金の通算制導入を!

2014-04-26 07:19:25 | 日記
皆様、こんにちは。

西武鉄道やプリンスホテルなどを傘下に持つ西武ホールディングス(HD)は23日、東京証券取引所第1部に上場しました。終値でみた時価総額は6055億円で、2013年7月のサントリー食品インターナショナル(初値時価総額9640億円)以来の大型上場となった(『日本経済新聞電子版』2014年4月23日)模様です。今後、グランドプリンスホテル赤坂跡地や長野軽井沢の再開発等を通じて企業価値向上を目指すようです。

上場企業である以上、株主価値向上は至上命題と言えますが、従業員や顧客、地域等の他のステークホルダーの「利益」を擁護する「ステークホルダーアプローチ」の視点で経営を進めることが大切です。

つまり、鉄道会社にとって、株主、利用者、地域、自治体等がともに"win-win"になる方策を考える必要があります。

その方策として、私は西武池袋線と新宿線の特急料金の通算制とイールドマネジメントによる特急料金の値下げを提案しています(詳しくは拙著『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)155~164ページをご覧ください)。

現状では、西武特急の料金体系を改善することで、さらなる乗車人員増と特急収入増を実現することが可能と考えています。

西武池袋線と新宿線では、朝通勤時間帯上り方面および夕方以降下り方面は多くの通勤客に利用されていますが、逆方面および日中時間帯は相当低い乗車率に留まっています。

また、西武特急の利用の大半は池袋線池袋~所沢間および新宿線高田馬場~所沢間であり、池袋線所沢~飯能・西武秩父間および新宿線所沢~本川越間の乗車率は低くなりがちです。

以下では実際に、西武新宿線の夕方上り方面特急の様子を見てみましょう。

昨日は、西武新宿線本川越18時30分発特急小江戸38号西武新宿行き(列車番号138)6号車に乗車しました。10000系10104編成7両(座席定員406人)による運行です。

本川越では一般列車は比較的多くの乗降がありましたが、小江戸38号は閑散としており、本川越出発時点で6号車は私一人だけでした。



その後6号車では、狭山市で2人の乗車があったものの、所沢と東村山からの乗車はゼロでした。

東村山では急行西武新宿行き(列車番号2682)を追い越しましたが、2682列車では若干の立席も見られる程多くの乗車がありました。

高田馬場では全号車で20人程の旅客が下車し、西武新宿で下車したのは全号車で10人前後だったようです。全区間での乗車人員は30人前後だったと推定されます。

西武新宿到着後、折り返し19時30分発小江戸35号本川越行き(列車番号35)となります。多くの通勤客でほぼ満席となっていました。



西武線特急日中時間帯および夕方上り方面は空気輸送なのが実態ですが、一般列車では多くの乗車があります。西武特急の場合、多くの旅客は速達性もさることながら、着席を求めて利用しています。つまり、一般列車が空いている(=空席がある)場合、わざわざ特急料金を支払ってまで着席を求めて特急を利用する旅客は少ない、ということです。

ですから、一般列車乗車率が低い場合、それに応じて特急料金を引き下げることで、特急の需要を喚起することができるでしょう。

さらに、現在の特急通過駅(池袋線石神井公園、小手指、高麗、吾野等、新宿線小平、新所沢等)へ閑散時間帯に特急を停める方策を併せて実施することで、さらなる需要の掘り起こしが可能となります。

また、小江戸38号車内において、所沢では10分間の待ち合わせで特急むさし42号池袋行き(列車番号42)と特急ちちぶ31号西武秩父行き(列車番号31)に接続することが案内されていましたが、新宿線の特急と池袋線の特急を乗り継ぐと、それぞれ別々の特急料金が必要であることを考えると、新宿線特急と池袋線特急を乗り継ぐ旅客がどれほどいるのか、疑問に感じます。

例えば、本川越→飯能間を全て特急で移動する場合、本川越→所沢間360円、所沢→飯能間360円、合計720円の特急料金が必要となることを考えると、やはり特急の乗り継ぎは敬遠されるのではないでしょうか。

一方、池袋線と新宿線の特急料金の通算制が導入された場合は、本川越→飯能間の通算特急料金は420円となることから、お得感は確実に増し、需要が増えることは確実です。特急料金の割高感から乗車を敬遠していた旅客も特急にメリットを見出すようになるはずです。

実際に、特急料金の通算制は近畿日本鉄道が導入し、多くの旅客が特急乗継制度を利用しています。

また、JR東日本の首都圏エリアでも、改札口を出ない場合、普通列車グリーン車の乗換え(通算料金)が認められています。東北本線沿線在住の私の知人は、熱海や湯河原等からの帰りは普通列車グリーン料金の通算制を利用し、小田原や戸塚等で東海道本線普通列車グリーン車から湘南新宿ライン東北本線直通列車グリーン車へ乗り換えているそうです。

西武ホールディングス(HD)の大株主サーベラスは、西武特急料金の25%値上げを提案したとされますが(「経営改善には大きな疑問符 サーベラス提案の矛盾と欺瞞 西武vsサーベラス 全交渉秘録 ~猛犬はかくして牙を剥いた【後編】」『DIAMOND online』)、西武特急の乗車人員向上には、料金制度の見直しが有効な方策であると考えています。

さらなる乗車人員増と特急料金収入増を実現し、西武HDの企業価値を向上させるために、西武特急の料金体系の改善を提案いたします。


西武HD、初日終値1,770円 9年ぶり再上場 売り出し価格上回る
SankeiBiz 2014年4月24日(木)

西武鉄道やプリンスホテルなどを傘下に持つ西武ホールディングス(HD)は23日、東京証券取引所第1部に上場した。2004年12月に西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止となって以来、約9年4カ月ぶりに株式市場に復帰。初値は売り出し価格と同じ1,600円で、終値は1,770円と初日の取引を最高値で終えた。東京都内で記者会見した後藤高志社長は「いい形で上場できた」と感想を述べた。

 終値ベースの株式時価総額は約6,055億円。上場する首都圏の私鉄の中では東京急行電鉄(8,137億円)、小田急電鉄(6,559億円)に次ぐ水準で、東武鉄道(5,377億円)などを上回った。