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鷹の城

2021-05-11 13:33:46 | 読書

山本巧次の『鷹の城』(光文社)を読了したので、感想を書く。スカイエマさんの表紙絵に惹かれて購入。時代小説だけれど、漫画のように読みやすい1作だった。

現代人が過去に戻ったり、昔の人が現代に来るタイムスリップ物はよく見るけれど、これは昔の人(江戸時代)がもっと昔(戦国時代)にタイムスリップする話だ。主人公・瀬波新九郎は南町奉行所定町廻り同心、強盗殺人の犯人を追って崖から落ちると戦国時代にいた。なんやかんやで籠城中の青野城、別名“鷹の城”に密書を届けに行くことになり、そこで遭遇した密室殺人の謎を解くことになる。

作中で新九郎は奇妙な恰好をしたやつだと言われているが、一応受け入れられている。200年の時を挟んだ江戸の同心と戦国の武将たちでは所作も口調も違って、新九郎が怪しいことこの上ないのではないかと思ったのだが、そこはファンタジーなのでご愛敬と思って読み進めた。

なかなか勝気な青野城の姫・奈津姫さまと新九郎の淡いロマンスには、ほっこりする。奈津姫さまはお姫さまだけれど、なんでも見てる聞いてるやり手の女性。好きだなぁ。

江戸に戻ってみれば、新九郎が青野城に行ったことにも意味があったようで…

がっつり推理物という感じではないが、適度にミステリー、ほんのりロマンスで、娯楽に読むにはさらっと読める楽しい小説だ。