津軽ジョンがる電源日記

『KOJO TECHNOLOGY』 電源メーカースタッフ日記

IGBT

2007-08-20 19:16:58 | インポート

IGBTとは、パワーMOS FETの高速スイッチング特性と、バイポーラトランジスタの高電力特性を兼ね備えた、比較的新しいデバイスである。

Dsc01761実はこのIGBT、「Aray」心臓部のインバータ用パワーデバイスとして利用されており、フェアチャイルド製(シリコンによる半導体を専門的に製造した最初の企業)のものが採用されている。

IGBTの選定にあたっては、パワーMOS FETの採用も視野に入れ、国内外メーカ問わず、その電気的特性および聴感上の両方から行われた。

パワーMOS FETは、その高速性からキャリア周波数の高周波化が期待(高周波化により機器を小型にできる)され、試作においても40K~50KHzでの動作検証や試聴が繰り返された。しかし、スッチングスピードの高速さゆえ、発生ノイズを抑制することが難しく、採用にはいたらなかった。

一方、IGBTはMOS FETの高速性までとはいかないものの、近年の技術進歩により高速制御(モノによっては数100KHzも可)が可能となっていた。比較的低いと思われるかも知れないが、「Aray」採用でのキャリア周波数は25KHzとなっており、これも試聴を重ねての結果だ!(>_<)(高すぎても低すぎてもダメだった)

IGBTはゲート(制御端子)がMOS構造であることから、小電力での駆動が可能だが、その分HIGHインピーダンスでノイズの影響を受けやすいという特徴も持っている。IGBTは基本的に+バイアスでON、ゼロバイアスでOFFという動作をするが、「Aray」の場合、上記理由から-バイアスとすることで、OFF時の誤点弧を防いでいる。

「Aray」はフルブリッジインバータで構成されており、1スイッチあたりIGBTを4ヶパラレル(計16ヶ)使用。強大な供給電流に対し、十分耐えれる構成としている。

これまで、SIT電源という代名詞までついたDA-7シリーズに対し、IGBTを使用した「Aray」がどこまで行けるか楽しみだ。

※SITの流れをくむIGBT

こんな逸話があります。

実は、SITの生みの親であるMr.半導体こと「西澤潤一先生」(隊長の尊敬する先生)は、かつて仲間と基礎研究を行い、より高度の「SITH」(後のIGBT)として基礎的には解決していた。しかし、研究費不足で応用開発を続けられなく、その後、このIGBTが米GE社で実用化された。その開発者からは「開発の端緒は西澤博士の論文でみつけた」と言われている。