東京ファルトボートクラブは1972年設立の老舗カヌークラブで、当日エキスペートクラスがメンバーの中心で、ビギナーは数名でした。メンバー構成が逆ピラミット。ですので、よってたかって教えをこえる体制でした。新人教育のシステムも存在し、中堅の教育係がついてくれ、実践の時はトップクラスの人が同行してくれました。
クラブ内で1年学び、その後の2年かけて準備とトレーニング、賛同してくれるメンバーを集め、僕がリーダーになって吉野川を下りました。伏見さんも一緒に下ってくれました。僕にとって二人目の師匠は伏見さんです。
クラブ内では多くの学びがありました。先輩から「カヌーはリスクスポーツだ」と言い渡されました。安全やスキルアップを口にする人がカヌーの世界には多いのですが、リスクスポーツだと本当に理解している人は少ない。
教育の過程で、クラブ内で起こったインシデントや事故のレポートを読むようにと与えられたり、直接説明してもらったり、実際に川の中でシミレーション訓練も受けました。今でもこの時教わったことは自分の中で生き続けています。
楽しい思い出もたくさんあります。クラブOBの野田知佑さんを紹介された時もその一つ。当日僕はタイの川をファルトボートで下ろうと準備を進めていて、実際に数本下っている時期でした。雑誌の取材でタイの川を下る予定の野田さんがそれを知るとキラッと目が光りました。「で、地図はどうしたんだ?」と。これはすごい質問でした。僕はタイの川下りで一番苦労したのは地図の入手だったからです。この人は本物だなあと直感的に感じました。
ファルトボートは旅の道具です。キャンプをしながら川を下って行きますが、キャンプの夜、焚き火を囲み先輩の体験談や経験を聞かせてもらったのが、一番の宝、思い出です。
なにもしなかたったらじわじわ死ぬだけですから巨大な会社はまあなかなか死にませんけど、我々は何もなしでやっていたら比較的早めに死ぬでしょうから。 人見光夫
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