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JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

狩野舞子選手2枚替え OQT総括

2012-10-27 13:59:34 | メディア注目選手のその後
ここまでOQTの各試合について狩野舞子選手の2枚替えの効果を数値化して考察してきました。ここでまとめをしたいと思います。

まずは、時系列順に、狩野舞子選手が2枚替えで入ったセット数を見てみましょう。

ペルー戦 3/3セット
台湾戦 2/3セット
タイ戦 3/3セット
韓国戦 3/4セット
キューバ戦 1/5セット
ロシア戦 1/3セット
セルビア戦 0/5セット

このように比較すると、狩野舞子選手の2枚替えの使用回数は日を追うごとに減っていきます。狩野舞子選手2枚替えが交替枠の消費数に見合わないという判断が徐々になされてきたものだと考えられます。

次に、1セットあたりの狩野舞子選手2枚替えによる効果を、参加国の最終順位で並べてみました。

1位 ロシア ±0点
2位 韓国 -0.83点
3位 セルビア 出場なし
4位 日本
5位 タイ +5.67点
6位 キューバ ±0点
7位 ペルー +1.67点
8位 台湾 +1.2点

このように見ると、狩野舞子選手2枚替えがプラスに働いたのはいずれも格下相手の試合ばかりです。逆に、格上相手の試合ではプラスに働いていません。また、セルビア戦では、中道瞳選手と山口舞選手が表センターがサーブ時にピンサとワンブロで入る新戦略が打ち出され、狩野舞子選手2枚替えに代わる道が開けました。

ロンドン本番では、もちろん格下相手との試合もありますが、勝敗が大事になってくるのはあくまでも格上相手との試合です。そのため、格下相手にしか通用しないとOQTで判明した狩野舞子選手の2枚替えは、OQT終了時点で白紙に戻すべきでした。データはそれを支持しています。

狩野舞子選手の2枚替えが格上相手に通用しないのは、OQTだけではなくWC2011から見られた傾向です。その傾向がOQTでも繰り返されたわけですから、ロンドン本番でもそうなる可能性が高いと言うことは明らかでしょう。

もちろん、格下キラー的な枠はあってしかるべきです。格下相手時に主力を休ませる役回りも必要だからです。しかし、狩野舞子選手はその役回りもできません。1試合通して出場することができず、2枚替えの3ローテ分しか主力を休ませられないからです。また、ライトには既に新鍋理沙選手と山口舞選手がいますから、分担すれば負担もありません。既にライトが2人いる中で、2枚替え専用ライト枠を設けて狩野舞子選手をロンドンに連れて行くのは不自然です。

狩野舞子選手2枚替え分析 OQTセルビア戦

2012-10-26 14:16:25 | メディア注目選手のその後
セルビア戦は2セット取ればロンドンへの出場権が獲得できる試合で、全日本女子は第一セットと第三セットを取りました。その後の第四セットと第五セットは負けておいた方がロンドンで有利になるため、全日本女子は有り得ないミスを演出して綺麗に負けました。そのため、今回は両チームが本気で戦っていた第一~第三セットのみを分析します。

第一セット
前衛2枚ローテ 5得点6失点→-1点
中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロ 3得点1失点→+2点

第二セット
前衛2枚ローテ 3得点6失点→-3点
中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロ 3得点1失点→+2点

第三セット
前衛2枚ローテ 11得点3失点→+8点
中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロ 0得点1失点→-1点

このように、この試合ではライトとセッターが中道瞳選手と狩野舞子選手に交替する通常の2枚替えはなく、表センターの荒木絵里香選手サーブ時に荒木絵里香選手を中道瞳選手に、前衛の竹下佳江選手を山口舞選手に替えるピンサワンブロの形の2枚替えが行われました。後衛では中道瞳選手がバックライトを守り、本来バックライトを守る新鍋理沙選手がバックレフトを守りました。リベロ不在を補う狙いです。ロシア戦の反省から、中道瞳選手は山口舞選手にはトスを上げず、完全に囮として使用。この使い方で、+2点、+2点、-1点と、かなりの効果が出ました。狩野舞子選手は、第一セットと第三セットに裏センターのサーブでピンサで出場し、第一セットは実質的にサーブポイントを取りました。またここでもリベロ不在ローテが回避されています。第二セットは、新鍋理沙選手を迫田さおり選手に替えるワンブロがありました。

この形、新鍋理沙選手がスタメンなら非常に効果があります。
・竹下佳江選手を前衛で使いたくない
・山口舞選手にサーブを打たせたくない
・山口舞選手にサーブレシーブさせたくない
・山口舞選手に中道瞳選手のトスを打たせたくない
・リベロ不在ローテを減らしたい
・狩野舞子選手に攻撃させたくない
・新鍋理沙選手のレシーブに頼りたい
このような全日本女子の事情を全て解決出来るからです。また、ロンドン本番では、新鍋理沙選手スタメンなら荒木絵里香選手が裏センターに回る予定だったはずなので、ロンドン本番ではサーブが苦手の大友愛選手サーブ時に中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロを使えるはず。良い形を見いだせました。

狩野舞子選手2枚替え分析 OQTロシア戦

2012-10-24 21:55:56 | メディア注目選手のその後
OQTロシア戦はストレート負けでした。ライトスタメンは新鍋理沙選手でした。この試合についても、前衛2枚ローテと2枚替えローテの得点-失点数を計算してみましょう。

第一セット
1回目の前衛2枚ローテ 3得点3失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 4得点7失点→-3点
山口舞選手の2枚替えローテ(2ローテで終了) 2得点3失点→-1点で、これが3ローテ続けば-1.5点

第二セット
2枚替えなし

第三セット
前衛2枚ローテ 3得点4失点→-1点
狩野舞子選手2枚替えローテ 5得点6失点→-1点

まず注目すべきは、第一セットに狩野舞子選手をピンサに回して山口舞選手の2枚替えを使ったことです。監督の頭の中でも、狩野舞子選手による2枚替えの効果に疑問が生じてきたのでしょう。しかしこれは大失敗でした。その理由は、過去記事をお読みいただけばはっきりします。2枚替えセッターの中道瞳選手は、球質を優先するタイプのセッター。山口舞選手は球質などどうでも良いかわりに、きちんと約束した場所に約束した時間に到達する一定のトスを好むため、中道瞳選手とは全く合わないのです。

実際、山口舞選手はBクイックの囮に入りますが、なんとタイミングが大幅にズレてほとんどセミ状態に。次はロシアセットポイントで山口舞選手のブロードにトスが上がりましたが、ほとんど空振り状態でロシアが第一セットを取りました。

第三セットでは、お馴染みの狩野舞子選手の2枚替えが使われました。これは得点-失点数を比較しても分かるように、効果はありませんでした。さらに、狩野舞子選手は低空飛行ジャンプでレフトから打って1本は上手くリバウンドを取りましたが、次のレフト打ちはシャットアウトされました。その後はレシーブすればアタック助走にも入れなくなってしまい、せっかく狩野舞子選手が綺麗にレシーブしても前衛は実質2枚のまま、という状態でした。

そもそも、新鍋理沙選手がスタメンの時に、どれほど2枚替えする意義があるのでしょうか。山口舞選手がスタメンなら、山口舞選手のサーブとサーブレシーブを回避するために2枚替えが必要なのは容易に理解できます。しかし、新鍋理沙選手はサーブもサーブレシーブも良く、また竹下佳江選手の上を抜かれたスパイクのレシーブも合格点です。新鍋理沙選手スタメンなら、狩野舞子選手と中道瞳選手はセンターサーブ時のピンサに使い、竹下佳江選手にはワンブロを入れるべきです。

狩野舞子選手2枚替え分析 OQTキューバ戦

2012-10-19 12:53:31 | メディア注目選手のその後
OQTキューバ戦は、フルセットの激闘となりました。1、3、5セットを取った日本が勝ちました。

今回も、前衛2枚ローテと2枚替えローテで得点-失点数を計算しましょう。

第一セット
前衛2枚ローテ 3得点4失点→-1点
2枚替えローテ 4得点5失点→-1点

第二セット以降は2枚替えなし

これを見れば分かるように、この試合では2枚替えは効果がありませんでした。第一セットは日本が取ったものの、それは木村沙織選手のサーブで土壇場で7連続得点があったからです。それが無ければ負けていた試合で、2枚替えもその敗因になっていたはずです。あの場面では、既に4人の交替枠を2枚替えで消費していたので、第二セット以降有効に行われたライトや裏センターや裏レフト同士の交替が難しい状況になっていました。チーム力と有効なメンバー交替で得点するはずの全日本女子が土壇場で個人技に頼らざるを得なくなったのは、2枚替えという無効な交代で4人の交替枠を使い切ってしまったからなのです。

このように書くと、あたかも狩野舞子選手が準戦犯であったかのようですが、それは違います。第五セットの終盤で、狩野舞子選手はピンサで大変素晴らしい活躍をしました。それが無ければ負けていたかも知れません。第一セットから継続的に狩野舞子選手をピンサで使っても良かったはずです。それなのに2枚替えにこだわってしまった起用法に問題を感じます。

狩野舞子選手2枚替え分析 OQT韓国戦

2012-10-12 13:01:44 | メディア注目選手のその後
OQT韓国戦は、第二セットは取ったもののまさかの1-3負け。この試合の狩野舞子選手2枚替えは、どれほど効果があったのでしょうか。

前衛2枚ローテと2枚替えローテの得点-失点数を計算してみましょう。

第一セット
1回目の前衛2枚ローテ 4得点3失点→+1点
2回目の前衛2枚ローテ 4得点6失点→-2点
2枚替えローテ(0.5ローテで終了) 0得点1失点→-1点で、これが3ローテ続けば-6点

第二セット
1回目の前衛2枚ローテ 4得点4失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 5得点5失点→±0点
2枚替えローテ 4得点3失点→+1点

第三セット
前衛2枚ローテ 5得点8失点→-3点
2枚替えローテ 5得点6失点→-1点

第四セット
2枚替えなし

このデータより、第一セットは-5.5点、第二セットは+1点、第三セットは+2点の効果が2枚替えによりもたらされたことが分かります。これだと、2枚替えをする意味はありません。また勝った第二セットも、2枚替えが終了後にキムヨンギョン選手をブロックできて、日本に流れがきました。本来は狩野舞子選手が2枚替え中にやるべき仕事だったはずです。

さらに疑問なのは、ライトと裏レフトの起用法です。この試合、なぜか前衛3枚のローテが回せないという不可解な現象が何度も見られました。ということは、ライトスタメンの山口舞選手と裏レフトスタメンの江畑幸子選手に問題があったのではないでしょうか。これには、ブロード主体のライトであるキムヒジン選手の存在が関わっています。キムヒジン選手は、韓国のBチームで、ライトから何回もブロードで打っているはずで、韓国のAチームのレフトの選手はそういった動きに慣れています。つまり、山口舞選手は怖くないわけです。では、山口舞選手を新鍋理沙選手になかなか替えなかったのはなぜでしょうか?さらに、全日本では、Aチームの山口舞選手がライトからブロードで打つのをBチームの迫田さおり選手が止めているはず。であれば、裏レフトに迫田さおり選手を積極的に使うべきだったはずです。迫田さおり選手投入が遅れたのはなぜでしょうか?

その答えは、まさに2枚替えです。2枚替えする前提では、ライト同士の交替は使えなくなります。また、2枚替えで4つの交替枠を使うと、残る交替枠は2となり、裏レフト同士の交替をしにくくなるのです。2枚替えにこだわって他の有効な交替が出来なくなったのも敗因の1つです。