JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンイギリス戦

2012-12-05 11:51:13 | メディア注目選手のその後
ストレート勝ちしたロンドンのイギリス戦では、ライトスタメンは新鍋理沙選手。この試合は格下相手なので、これまでの傾向からは2枚替えが機能すると考えられる試合でした。では実際に得点推移を見てみましょう。

第一セット
前衛2枚ローテ 6得点5失点5→+1点
2枚替えローテ 5得点5失点→±0点

第二セット
前衛2枚ローテ 4得点3失点→+1点
2枚替えローテ 4得点4失点→±0点

第三セット
前衛2枚ローテ 6得点4失点→+2点

このように見ると、2枚替えによって、第一セットと第二セットでは1点ずつ失っています。格下相手にすら通用していません。

特に私が問題視しているのは、第一セットの狩野舞子選手のライトからBセミへの切り込みからの一連の流れです。狩野舞子選手のBセミへの切り込みは、セッターと交差するくらいのタイミングでドタバタして動きが緩慢になります。そのため、そう言った攻撃があると分かっていれば、簡単にブロックできます。この場面でも、ブロックされてしまいました。次のラリーでは、ブロックされて「何とか私が活躍しなきゃ!」といった感じで、乱れた場面から狩野舞子選手が後衛レフトまでしゃしゃり出てチャンスボールを返球し、そのチャンスボールからイギリスはレフトのビーティー選手のBセミへの切り込みを使って得点しました。このシーン、実は狩野舞子選手が後衛までしゃしゃり出ていたので、ブロックに参加できなかったのです。あのチャンスボールは後衛にいた江畑幸子選手に任せるべきでした。ブロックに跳ばないなら、何のための長身選手の2枚替えなのか分かりません。

さらに不可思議なのは、監督采配です。この試合、竹下佳江選手のサーブで大量得点がありました。なのに、2枚替え終了時には狩野舞子選手にサーブを打たせて、狩野舞子選手のサーブ終了後に竹下佳江選手をコートに戻していました。どうして竹下佳江選手にサーブを打たせなかったのでしょうか。

もちろん、例えば第二セットの2枚替えでは、狩野舞子選手が相手のセッターに向かってソフトアタックをし、相手を2段にしてミスを誘うなど、良い場面もありました。ただやはり得点推移の分析結果は否定のしようがありません。この試合で2枚替えがもたらしてくれたのは、主力の僅かな休息だけでした。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンロシア戦

2012-11-28 14:16:20 | メディア注目選手のその後
ロンドンのロシア戦では、山口舞選手がライトスタメンに入り、第三セット途中から新鍋理沙選手がコートインしました。日本は第三セットを取ったものの、3-1で負けてしまいました。この試合についても、得点-失点数を計算してみましょう。

第一セット
1回目の前衛2枚ローテ 5得点3失点→+2点
2回目の前衛2枚ローテ 5得点6失点→-1点
2枚替えローテ(0.5ローテで終了) 0得点2失点→-2点で、これが3ローテ続けば-12点

第二セット
前衛2枚ローテ 4得点6失点→-2点
2枚替えローテ(0.5ローテで終了) 0得点6失点→-6点で、これが3ローテ続けば-30点

第三セット
2枚替えなし

第四セット
2枚替えなし

この計算から、2枚替えは第一セットでは-12.5点、第二セットでは-28点もの悪影響を及ぼしたことが分かります。これは大失敗です。第一セットは25-25からの2枚替えで2連続失点しました。2枚替えが直接の敗因となったと言えます。第二セットでは、14-18とリードされてからの2枚替えでしたが、この程度の点差を追い上げるシーンもあったので、第二セットの負けを決定づけたのは2枚替えと言えます。

そもそも、この試合で前衛2枚ローテはピンチだったのでしょうか。前衛2枚ローテの得点-失点数は、第一セットでは+2点と-1点、第二セットでは-2点、第三セットでは+2点、第四セットでは+1点でした。これを平均すると、+0.4点です。つまり、試合全体では前衛2枚ローテでは日本が得点を伸ばしていて、前衛2枚ローテはピンチローテではなくチャンスローテでした。そのチャンスローテに、スパイク効果率がマイナスの狩野舞子選手とセカンドセッターの中道瞳選手を入れてチャンスを潰した、それがこの試合の敗因です。そればかりか、ピンチローテとなった前衛3枚ローテで、井上香織選手を荒木絵里香選手に替えるなど、他にすべき交替がありました。それをしにくかったのは、2枚替えで4枚の交替枠を確保しなければならなかったからでしょう。

勝った第三セットでは、狩野舞子選手は井上香織選手に替えてピンサで入り、第三セットでは狩野舞子選手のナイスサーブとナイスディグで3連続得点がありました。また、第三セットでは2枚替えしなかったためにライト同士の交替も出来ました。2枚替えで入れば試合を壊し、ピンサで入れば勝利に貢献できる、これが狩野舞子選手の真の実力です。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンドミニカ戦

2012-11-23 15:18:32 | メディア注目選手のその後
ちょっと時間が空いてしまいました。その間、木村沙織選手のトルコでの動向や、栗原恵選手の清々しい笑顔など、バレーボールではいろいろとニュースがありました。ここからはペースを上げて今の連載を続けようと思います。

では、ロンドンのドミニカ戦についても、前衛2枚ローテと2枚替えローテでの得点-失点数を計算してみましょう。この試合は山口舞選手がライトスタメンだったので、出来れば2枚替えに機能してほしいところでした。

第一セット
1回目の前衛2枚ローテ 3得点3失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 7得点3失点→+4点
2枚替えローテ(1ローテ半で終了) 3得点1失点→+2点で、これが3ローテ続けば+4点

第二セット
1回目の前衛2枚ローテ 5得点5失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 6得点3失点→+3点
2枚替えローテ(半ローテで終了) 1得点0失点→+1点で、これが3ローテ続けば+6点

第三セット
日本が2枚替えした時にドミニカも2枚替えしたので、比較不可能。

このように見ると、第一セットは+2点、第二セットは+3点、それぞれ2枚替えにより得点したと言えます。ドニミカはもともと負けていると終盤に崩れるため、実質的には+1点か+2点くらいの効果でしょうが、これは一応2枚替えの最低条件は満たしていますね。

第三セットは、相手も2枚替えしたので比較はできません。しかし、第三セットでは2枚替えが機能せず、途中で2枚替えを戻してしまいました。この2枚替えは言うまでもなく失敗です。4回の交替枠を使って、さらに連続失点ですから。第三セットは、一部で、山口舞選手を新鍋理沙選手に交替した方が良いように見えたローテもありました。結果論ではありますが、
・山口舞選手を後衛で新鍋理彩選手に替える
・中道瞳選手を表センターサーブ時にピンサ
・中道瞳選手ピンサ時に竹下佳江選手にワンブロ
・狩野舞子選手を裏センターサーブ時にピンサ
という4つの交替から3つを選んで行った方が良かったのではないでしょうか。

ということで、ドミニカ戦は第一セットと第二は2枚替えが機能したものの、第三セットでは機能しなかったことが分かりました。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンイタリア戦

2012-10-29 13:52:07 | メディア注目選手のその後
ロンドンのイタリア戦は、第三セットは日本が取ったものの、第一第二第四セットはイタリアが日本のレフト攻撃のコースを徹底的に分析して拾って繋ぐバレーを展開し、日本が負けてしまいました。データが無かった大友愛選手と新鍋理沙選手は通用する部分もありましたが、やはりポイントゲッターではないため苦しい試合でした。ライトスタメンに新鍋理沙選手を配置したこの試合についても、各セットの前衛2枚ローテと2枚替えローテの得点-失点数を計算しましょう。

第一セット
前衛2枚ローテ 6得点7失点→-1点
狩野舞子選手2枚替えローテ 3得点6失点→-3点

第二セット
2枚替えなし

第三セット
1回目の前衛2枚ローテ 4得点4失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 5得点3失点→+2点
山口舞選手2枚替えローテ(1ローテで終了) 0得点3失点→-3点で、これが3ローテ続けば-9点

第四セット
2枚替えなし

さて、第一セットでは狩野舞子選手2枚替えにより-2点の効果があったことになります。これは2枚替えの最低条件を満たしていません。イタリアはもともと日本と同レベルのチームで、この試合に限っては完全に格上でした。狩野舞子選手2枚替えが格上には通用しないというOQTからの傾向が繰り返されたことになります。

このように、狩野舞子選手2枚替えの失敗がきっかけで、第三セットには山口舞選手を使った2枚替えを行いました。しかし、山口舞選手が中道瞳選手のトスを打つこの2枚替えは、相性的にもデータ的にも最悪です。実際、-10点の効果がありました。この2枚替えは途中で戻されてしまいましたが、山口舞選手がS1でレフトから打ち切れなかったのが原因です。それなら、新鍋理沙選手がサーブを打つローテまでは2枚替えせずに、江畑幸子選手サーブ時に2ローテのみ2枚替えして、山口舞選手がレフトから打つローテを回避すれば良かったのではないでしょうか。新鍋理沙選手はサーブも良いですし。もしくは、OQTセルビア戦と同じく、裏センターのサーブ時にピンサとワンブロで中道瞳選手と山口舞選手を投入しても良かったはず。

このように、この試合では絶対に苦しくなると分かっている狩野舞子選手2枚替えで失敗し、その代案として不適切な山口舞選手2枚替えを第三セットに行ってしまいました。監督のデータ活用力を疑わざるを得ない結果となってしまい、残念です。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンアルジェリア戦

2012-10-27 23:01:34 | メディア注目選手のその後
一つ前の記事で書いたとおり、OQT期間中で狩野舞子選手2枚替えは格下にしか通用しないことが分かりました。なのに、ロンドンでも狩野舞子選手が2枚替えで出場しました。分析しましょう。

第一セット
前衛2枚ローテ 7得点4失点→+3点
2枚替えローテ 4得点4失点→±0点

第二セット
2枚替えなし

第三セット
前衛2枚ローテなし

この試合で比較分析が可能なのは第一セットのみです。第三セットは2枚替えがありましたが、前衛2枚ローテがなく、メンバーもローテも代わっていたので比較対象がありません。

さて、格下ということで2枚替えの最低条件は満たされると期待したいところですが、なんと第一セットでは-3点の効果。これは目を疑う結果です。そのうち-1点分は狩野舞子選手自身のスパイクミスでした。

もちろん、この2枚替えが完全に失敗であったわけではありません。アルジェリアが狩野舞子選手のブロックを警戒し、頼りないライト攻撃を主体とした単調なバレーを展開したからです。しかしやはり最終的には点数が全てです。

このような具合で、ロンドンの初戦は2枚替えによる-3点というハンデを追ってスタートしたのでした。

もちろん、狩野舞子選手は一本良いブロックをしましたし、繋ぎの部分ではサイドアタッカーとは思えないような質のトスを上げていました。サーブもかなり良かったです。このあたりは、2枚替え分析連載が終わってから取り上げます。それまでは狩野舞子選手に対して批判的な言葉が並びますが、連載終了後までお読みいただいてから総合的に考えていただければと思います。