楽園づくり ~わが家のチェンマイ移住日記~

日本とタイで別々に生活してきた私たち家族は、チェンマイに家を建てて一緒に暮らし始めました。日常の出来事を綴っていきます。

当面は軍政継続か

2014-05-27 15:51:54 | タイの政治経済

今日もニューヨーク・タイムズのトーマス・フラー記者の新しい記事を下敷きにして書きます。

先週木曜日のクーデターから4日が経過した昨日、正式に「国家の平和と治安維持委員会」の議長に就任したプラユット陸軍司令官は記者たちの前で演説を行い、当面の施政方針を説明しました。

この演説の中でプラユット司令官は、タイに「純粋な民主主義を作る」と明言しました。しかし、それがいつになるのかという、記者たちの最大の関心事には「状況次第」として、期限には言及しませんでした。

2006年の前回のクーデター後、軍によって樹立された政府は失敗だったと評価されています。そのため、6,700万人の国家を軍が治めていくことは困難だと言う人も多いのです。ところがプラユット司令官はこう述べたのです。

「我々(軍)に、その能力があるのかどうか、疑問に思うかもしれませんね。私ははっきり申し上げます。我々にはあらゆることをやる能力があると。」つまり、これは軍がすべての行政と立法の機能を掌中におさめている現在の状況を当面維持する、と言っていることになります。国内の対立抗争がなくなるまで、軍は実権を手放さないと言っているようにも聞こえます。

プラユット司令官は、これまでは軍の政治介入にはとても慎重なスタンスをとり続けてきました。2010年、当時のアビシット民主党政権に抗議する運動がバンコクで激化し、政府が武力での鎮圧に踏み切り多数の死者を出したことはまだ記憶に新しいのですが、当時プラユット司令官は陸軍のナンバー2でした。

昨日の演説の後、記者たちは当然のように質問を試みたようです。しかしプラユット司令官は「皆さんの質問に答えていたら、仕事をする時間がなくなってしまいます。たくさん質問しないように。」そう言って(煙に巻いて)会見を打ち切ったそうです。プラユット司令官独特のユーモアかもしれません。

2006年のクーデターは汚職にまみれてしまったタクシン政権を崩壊させることには成功しました。ところが、国内のタクシン派と反タクシン派の対立の火に油を注ぐ結果になったというのが定説になっています。その理由の一つが、クーデター後に設立された政府が脆弱であったことと、新しい憲法に基づく選挙の実施が拙速であったとも言われています。今回は、前と同じ轍を踏まないように、民政への移行にすこし時間をかけてみようということなのでしょうか・・・

でも、それによって反クーデター運動が激化し、軍の思惑に反して事態がもっと泥沼化していく懸念を伝えるメディアもあります。プラユット司令官は、友好国の大使や日本を中心にしたタイ進出企業の関係者を呼んで、クーデターがタイ経済の悪化につながらないよう気にかけているようです。でも軍事政権が長引けば長引くほど、海外からの投資意欲がなくなってしまう恐れもあります。

今回軍は、一部の学者・知識人など、いわゆる「タクシン派」というわけでもなく、ましてや王政を批判するようなことは決してない良識的な人たちを、短期間とはいえ拘束してしまったようです。マスコミや市民の言論を弾圧するような、どこかの一党独裁国と同じような動きはいただけません。フェイスブックなど、いわゆるソシアル・メディアへの介入をもしも本気でやるとすれば、タイは文字通り軍事独裁国家そのものになってしまいます。プラユット司令官が述べた「純粋な民主主義」の実現のためにも、暴力的でない「国民の多様な言論」の価値を認めることが必要だと思います。

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
部外者にはよくわかりません (トイプードルのチェリー)
2014-05-27 23:34:49
こんばんは、
タイの混乱がどこにあるのか部外者にはよくわかりません。
タクシン派が多数を占めており、選挙をすれば必ず勝つのが不満な反タクシン派。
でも、部外者が思うには民主的な選挙で多数を占めたほうが政権を取り、不満であろうがなかろうがそれに従うのが民主主義のルールなのですが?
部外者には本当によくわかりませんね。
ただ、言えることは順調な経済に水を差し、中国に付け入られる隙を作ったことですかね。
共産(正確には全体主義)化すれば、今の王制は必ず倒されますがね。そのときタイの国民は大きなものを失ったことに気付くと思いますが、時すでに遅しになることが心配です。
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トイプードルのチェリーさんへ (うさぎ)
2014-05-28 00:34:48
コメントありがとうございます。
これまでの選挙のあり方にも問題があったのかなという気がします。

タイ国民は国王を尊崇していることは確かです。でもタクシン氏は王政を終わらせようとしているという噂まで出ていましたね。これも真実は分かりません。

タイ国軍は王様の軍隊ですから、軍が共産化することは考えられませんし、軍が力を持っていれば王政はとりあえず安泰でしょう。「天皇の軍隊」と言っていた日本軍が、かつて暴走したようなことはタイではありえないと信じたいところです。
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タイ経済は以前から不調でした (まさ)
2014-05-29 21:18:55
鋭い文章を読ませていただいております。

横レスですが。
>順調な経済に水を差し、中国に付け入られる隙を作った

というご意見がありましたが、タイ経済は反政府デモが起きる晴か前から不調でした。車の税金還付などがあって一見好調に見えていただけです。昨年の初めくらいから景気は悪くなってきています。それもこれもタクシン派の非常識な経済政策から来ています。
インラック政権が続いていたら、タイはそれこそ奈落の底に落ちていたでしょう。クーデターで外国からの投資が鈍る可能性はありますが、ここで国の立て直しをすれば、以前よりもはるかに良くなります。

インラック政権は中国の新幹線を導入しようとしていたことでも分かるように、親中国でした。その政権が倒れたのですから、中国に付け込まれることはありません。
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まさ さんへ (うさぎ)
2014-05-30 00:16:05
コメントありがとうございます。
2011年にインラック政権ができた当初から、最低賃金の大幅引き上げなど、その経済政策に問題があると指摘する声はありましたね。また年数%の経済成長でバラ撒き政策はいつまでも続けられません。

ただ、新しい政権ができても、タクシン氏が創設した医療保険だけは継続してほしいと望む人が多いようです。エリート層や公務員だけに手厚い政治に戻ることは、さすがにできないでしょう。

タイは、いわゆる「中国系」の人がかなり多いのですが、国としての中国とはかなり距離感があるように見えますね。というか、タイは歴史的に見ても、大国とは微妙な距離を保って独自の道を歩んできた国です。今後もそうあってほしいと思います。
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農民人口の減少政策 (エカマイ)
2014-05-30 21:50:31
>タイの混乱がどこにあるのか部外者にはよくわかりません。

タイの混乱の根源はタクシンファミリーです。

タイの民主主義=選挙は「金券」「買収」「バラマキ」であって、先進国の民主主義とは全く違います。

タクシンファミリーはバラマキ・買収選挙で政権を取ってきました。
しかし、コメ高値買取り政策が象徴するように、バラマキ政策は財源不足で必ず終焉するのです。

タクシンファミリーの選挙民の「票」買収のバラマキで、タイ国は危うく破産しそうになり、軍事クーデターでかろうじて、徳俵で踏みとどまったのです。

それにしても、インラック・タクシン政権は失政のオンパレードで、好調だったタイ経済を崖っぷちに落としてくれました。

新政権に求められるのは次の2点です。
●資産の再配分政策として、固定資産税の導入、相続税・贈与税の導入
●多過ぎる農民(40%以上)を20%以下に減らす政策

タクシンは、タクシン・チナワット家の解体を恐れて、税制改革には絶対にタッチしませんでした。

タイが発展途上国から中進国に進むには、産業構造の変化(農業国から工業国)に対応した人口移動が必須なのです。

日本だって、1億総中流になれたのは、工業従事人口が大半となり、農民人口が4%以下にまで減少したからなのです。
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タイの選挙制度は異質 (エカマイ)
2014-05-30 23:48:53
日本人が、タイの政治システム(民主主義とクーデターの併用制)が理解できないのは当然かもしれませんね。

というのは、タイの選挙システムは日本など先進国とは全く違っているからです。

タイの人口の過半数が住む北部、東北部の農村では、投票の自由が無いのです。

村長がタクシン派で、村民が反タクシン派の候補に投票しようものなら、村八分になるのです。
村民は飴(買収金)とムチ(監視)で縛られているのです。

いわば、北朝鮮の密告社会のようなのです。

農村で育ち、18歳になり、バンコクの大学に進学した若者が一番ビックリするのが、バンコクでは(日本のように)自由に投票ができる、ということです。

>ただ、新しい政権ができても、タクシン氏が創設した医療保険だけは継続してほしいと望む人が多いようです。

2002年にできた30バーツ医療は、2009年、アピシット政権に引き継がれ、無料になっています。

しかし、この制度は巨額な財政負担が必要で、予算を超えた赤字部分は国公立病院が負担する必要があり、国公立病院は疲弊してしまい、優秀な医者は満足な給料がもらえず、市立病院に転職してしまい、制度が空洞化しています。

日本でも健康保険会計は赤字ですが、タイの場合は全額国庫負担なので、国の財政負担が重く、十分な治療は期待できませんね。

タイの政治・経済事情は、チェンマイ在住者の下記ブログが平易でわかりやすいですよ。
http://uccih.exblog.jp/
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エカマイさんへ (うさぎ)
2014-05-31 02:35:40
コメントありがとうございます。

「北朝鮮の密告社会のような」というのはないと思いますけど、ちょっと前までの日本の田舎と似たようなものですね。たとえばチェンマイは、サンカムペーンのような特別な地域を別にすれば、新しい人がどんどん入ってきている場所では、ほとんど締め付けはできないようです。本当の田舎は当然圧力が強いようですね。

ついでに事実関係だけ書かせてもらうと、医療保険はタダではありません。今も1回の診療で最低30バーツは必要なんですよ。国公立病院の医者のほとんどは、転職ではなく、私立病院と掛け持ちして稼いでいます。日本も大体同じですね。

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