日曜日の夜、タイの国会で行われた論戦について、The Nationの記事で見てみましょう。これは、洪水対策の失敗を非難する民主党などの野党が提出した、プラチャ法相の不信任案をめぐって行われた論戦です。野党は、なぜかは分かりませんが、インラック首相に矛先を向けるのではなく、災害対策本部（ＦＲＯＣ）の責任者である法務大臣を糾弾しました。
日本でも、首相の不信任案は最後の切り札として残しておくことが多いのですが、タイの野党もそのような戦術をとったようです。投票の結果は、当然ですが、国会の勢力図の通り、約６割の議員は法務大臣を信任しました。
この日の論戦のハイライトは、アビシット前首相と、糾弾されているプラチャ法相の直接対決でした。焦点は、夏以降の洪水対策の失敗は前政権（アビシット政権）の責任なのか、それとも現政権の責任なのかという点に集まりました。
アビシット前首相（民主党党首）は、国家の危機にもかかわらず、政府はタイ国民の政治的分裂をさらに悪化させたとしたうえで、プラチャ法務大臣の責任を激しく追及しました。「あなたは、災害対策本部のトップとしての責任から逃れることはできない。あなたは、この歴史的にも稀な災害にあたって専門家の意見を無視し、法に反して身内に肩入れした。国難をさらに悪化させる腐敗や意志疎通の断絶があった。」
これは、災害対策本部に送られてきた救援物資が私物化された事件の事や、国民に対して、洪水の見通しが正しく伝えられなかったことに対するプラチャ法相の責任を追及したものです。その管理能力や誠実さ、そして国民への説明能力の、どの点をとっても失格だと糾弾したのです。
一方のプラチャ法相もおとなしくはしていませんでした。アビシット前首相にかみつきました。アビシット前首相が議会を解散した今年５月のあと、民主党政権は、主要なダムの水が増えるのを放置したではないかと、逆に非難したのです。
「あの時点では、ダムの水量は昨年や一昨年と変わらなかった。そして台風が来ることも分かっていたのに何もしなかった。それは７月の選挙でプゥアタイ党に負けることがわかっていたので、ダムの水をいっぱいにし、（洪水が起これば）インラック政権のせいにしようと思っていたからだ。」という意味の発言をしたそうです。
さすがにこれには、アビシット前首相から鋭いカウンターパンチが浴びせられました。「インラックさんが政権に就いた８月上旬は、ダムの水量は、まだ十分コントロールすることができるレベルだったのですよ。」「もしあなたが不満を言うのなら、私に対してではなくインラックさんに言いなさい。もう水をコントロールできないとあなたが考えていた時点に、インラックさんはあなたを災害対策本部のヘッドにしたのですから。」（本当はまだまだやれることがあったのに、あなたは何もしなかったという含意のようですね）
そしてアビシット前首相は、最後にお決まりの捨て台詞を述べて論戦は終わりました。「プラチャさんがこれ以上法務大臣にとどまることを野党側は認めるわけにはいかない。もしそのような法務大臣を首相が信任するというならば、将来何が起ころうとも首相自身が責任を取らないといけなくなる。」今はやらないけれども、このままだったら、いつかは任命責任を追及しますよという紳士的な？発言です。
アビシットさん以外にも、複数の民主党議員が論戦を繰り広げたようですが、主に災害対策に計上される予算をめぐっての追及がこれからも続きそうな気配です。というのも、１９９５年の大洪水のおり、多くの義援金が政府高官に着服されたという事件が起こったようなのですが、今回も同様の不正が行われていないか、とくに膨大な復旧予算の使い方で不正が起きていないか、メスを入れていくようです。野党だから、当然ですね。義援金の着服とか、国家予算の不正使用が焦点になるようでは、まだまだ・・・・・・・・・という気がしてしまいますが。
とりあえず、美男美女のインラックさんとアビシットさんに、タイ国民のために頑張ってほしいと思います。
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