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心身社会研究所 自然堂のブログ

からだ・こころ・社会をめぐる日々の雑感・随想

コロナ後遺症と慢性疲労症候群

2021-10-27 17:30:11 | 健康・病と医療

コロナ感染の後遺症として、味覚障害や倦怠感・脱力感だけでなく、慢性疲労症候群もありそうなことが、患者会のインターネットアンケートで明らかになったといいます(2021.10.27東京新聞夕刊)。全国から141人の回答者のうち、29人(21%)が慢性疲労症候群と診断され、37人(26%)が慢性疲労症候群の疑いと診断されたとのこと。

 


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鼻うがいとポリヴェーガル理論

2020-09-29 16:50:09 | 健康・病と医療

コロナ対策に「鼻うがい」はいかがでしょうか?

 

これだけで万全というわけにはいかないかもしれませんが、未だ特効薬もなく、マスクや手洗い、消毒、(口からの)うがいだけでは不安な方は、ぜひコ

ロナ対策のレパートリーの1つに付け加えてみてはどうでしょう。少なくとも私は、「Bスポット療法」[堀口 1984]が一世を風靡した1980年代から、体調

怪しい時などにしばしば「鼻うがい」のお世話になってきましたが、その効果には確かな実感を持っています。おかげで「鼻うがい」ですぐに対処をして

おくと、ふつうの風邪やインフルエンザでも、ほとんど罹ることはありませんでした。私は仕事柄、朝から晩まで、風邪やインフルエンザに罹っている

方々のお宅を訪ねて回る巡り合わせになることもありましたが、それでも大丈夫でした。コロナの場合も基本的に同じことが言えるのではないかと思われ

ます。

 

なぜ「鼻うがい」はこんなに効くのでしょうか? その生理的メカニズムを堀田修先生は最近、ポリヴェーガル理論によって説明されました[堀田

2020]。その説明には、ありがたいことに、多くを拙著『ポリヴェーガル理論を読む』[津田 2019]から採って下さいました。

 

ポリヴェーガル理論によれば、腹側迷走神経複合体の活性化が、さまざまの疾患に治癒に重要な役割を果たします。腹側迷走神経複合体は、迷走神経に加

え三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経の5つの脳神経から構成されるため、多岐にわたる領域を支配しますが、この理論もあまり言及していない腹側迷

走神経複合体支配の重要な部位が、実は上咽頭部なのです。上咽頭部には、三叉神経第2枝(上顎神経)、顔面神経の副交感神経由来の翼口蓋神経節、そ

して舌咽神経、迷走神経と、腹側迷走神経複合体がほとんど一堂に会し、しかも求心性の舌咽神経・迷走神経の無髄神経線維も豊富に投射しているのです

[進 1992]。

 

上咽頭部――それは同時に、PCR検査を鼻から行なうときに採取する部位でもあります。なぜならここは、呼吸で鼻から入ってきた外気が最初に遭遇する関

門であり、外気とともに入ってきた異物や病原体が最初に付着して免疫細胞と戦う前線でもあるからです。そのためこの部位は、たえず炎症が軽度に起こ

っており、免疫系がたえず活性化しているのです。腹側迷走神経複合体支配の重要な支配領域であり、かつ免疫系がたえず活性化する重要な領域です。

 

そんな重要な部位を刺激すると、何と驚いたことに、耳鼻咽喉科の局所症状をはじめ、頭痛・肩こり・首こり・上背部痛、慢性咳嗽・慢性痰などの呼吸器

症状から、さらには関節リウマチなどの各種自己免疫疾患、慢性疲労症候群、起立性調節障害などの自律神経障害や、「機能性胃腸症」など一連の「機能

性身体症候群」など多彩な病状に効果があり、欧米の「迷走神経刺激療法」(VNS)と類似の有力な効果を示すことが、実は50年以上も前からこの日本で

はわかっていました。はじめは1960年代に、大阪大学の山崎春三[1961]や東京医科歯科大学の堀口申作[1966]による「上咽頭擦過療法」、そして私が

院生時代だった1980年代には「Bスポット療法」[堀田 1984]として、一世を風靡もしました。いわばそれは、日本発の迷走神経刺激療法!ということも

できましょう。ポージェスも恐らくご存じない迷走神経刺激療法です。

 

そしてこれを、患者自身が予防~疾病初期段階に容易にできる方法としたのが「鼻洗浄療法」、つまりは生理的食塩水による「鼻うがい」なのです。「鼻

うがい」は上咽頭という腹側迷走神経複合体支配の重要な支配領域、かつ免疫系がたえず活性化する重要な領域を、誰でもが日常的にできる簡単な方法で

刺激して、病原体を洗い流し、腹側迷走神経複合体を活性化し、免疫系も同時に活性化することができる、スグレモノなのです。

 

   <文 献>

堀口申作、1966 「全身諸疾患と耳鼻咽喉科――特に鼻咽腔炎について」『日本耳鼻咽喉科学会会報』補冊第1号、pp.7-78.

―――, 1984 『Bスポットの発見――現代医学が取り残した「難病」の震源地』光文社。

堀田 修、2020 『自律神経を整えたいなら 上咽頭を鍛えなさい』世界文化社。

進 武幹、1992 「臨床に役立つ局所解剖 上咽頭の血管と神経」『日本耳鼻咽喉科学会会報』第95巻11号、pp.1876-9。

津田真人、2019 『「ポリヴェーガル理論」を読む――からだ・こころ・社会』星和書店。

山崎春三、1961 「鼻咽頭症候群および症候と病理学的研究」『耳鼻咽喉科』第33巻、pp.97-101。

 

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うつ病とHHV-6の遺伝子

2020-07-01 23:08:07 | 健康・病と医療

「うつ病になりやすい体質」は遺伝することが判明しており、遺伝率は 30%~50%とみられてきました(高血圧や糖尿病の遺伝率と同程度)。

しかし、親から子への染色体の伝搬では説明がつかず、どういうメカニズムなのか全く不明でした。

ヒト遺伝子の中にうつ病の原因となる有効な遺伝子も、これまで発見されていませんでした。

 

これに対し、今回、慈恵医大の近藤一博氏らは、ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)に着目し、

ヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)が持つ、うつ病の原因となる遺伝子SITH-1を発見したことを発表し、

iScience誌オンライン版2020年5月21日号に掲載されました。

 

 HHV-6Bは小児期に突発性発疹として感染し、ほぼ100%のヒトが潜伏感染しています。

HHV-6Bは脳神経に親和性の高いウイルスで、さまざまな脳神経疾患や精神疾患に関与することが予想されます。

研究チームはHHV-6Bが嗅球で潜伏感染する際に発現するSITH-1遺伝子を発見し、その疾患との関係を調べました。

 

 SITH-1は、細胞内へカルシウムを流入させ、アポトーシスを誘導する作用をもちます。

また、マウスの嗅球による実験では、SITH-1を発現させると嗅球が細胞死を起こし、さらに脳のストレスが亢進して、うつ状態になりました。

ヒトの場合、嗅球の組織をとることは危険なので、SITH-1がカルシウムを流入させるときの特殊な構造を突き止め、

これに対する抗体を測定することで嗅球でのSITH-1の発現を調べました。

この活性型SITH-1に対する抗体を測定する方法を用い、健常人とうつ病患者におけるSITH-1発現を比較し、

また、SITH-1が脳のストレスを亢進させることでうつ病を発症させやすくなると考えられることから、

SITH-1がうつ病になる前からヒトに影響を与えている可能性を検証するため、

「健常人でまったくうつ症状のない人」と「うつ病と診断されない程度の軽いうつ症状がある人」の活性型SITH-1抗体価も比較しました。

 

 その結果は以下のとおりです。

・うつ病患者は健常人に比べ、SITH-1特異的抗体の検出量が有意に高かった(p=1.78×10 -15)。

・抗体陽性率はうつ病患者で79.8%、健常者で24.4%だった(オッズ比[OR]:12.2)。

・「うつ病と診断されないほどの軽いうつ症状の人」も「健常人で全くうつ症状のない人」に比べて、SITH-1抗体価が有意に高かった。

 

 こうして著者らは、「SITH-1遺伝子はうつ病の発症に大きな影響を持つ遺伝子であり、

うつ病の発症メカニズムの解明や治療法の開発に新たな展開をもたらすことが期待できる。

さらにSITH-1がうつ病になる前から作用していることが示唆されたことから、

SITH-1抗体検査によってうつ病の早期発見やうつ病のなりやすさの予測ができる可能性がある」としています。

 

<文 献>

Kobayashi, N., N., Oka, Takahashi, M., Shigeta, M., Yanagisawa, H. & Kondo, K., 2020  Human Herpesvirus 6B Greatly Increases Risk of Depression by Activating Hypothalamic-

  Pituitary-Adrenal Axis during Latent Phase of Infection, in iScience, 2020 Mar 21. https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(20)30372-2

 

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自律神経が、がんの帰趨を左右するという画期的な発見

2019-08-03 19:36:59 | 健康・病と医療

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)細胞生理学分野の神谷厚範教授は、

国立がん研究センター客員研究員で東京医科大学医学総合研究所の落谷孝広教授、

国立がん研究センター 中央病院の下村昭彦医師、福島県立医科大学の小林和人教授および加藤成樹講師らと共同で、

国立がん研究センターで治療を受けた乳がん患者29人のがん組織を調べた結果、

 

自律神経(交感神経)が、乳がんの増大に伴って、がん細胞を取り巻くように乳がん組織内に入り込み、

がんの増大や転移に強い影響を及ぼすことを発見しました。

そして、乳がん組織の交感神経密度の高い患者群は、交感神経密度の低い患者群に比べて予後不良であることも発見しました。

 

さらにはウィルスベクターを局所注射することによって

(つまりウィルスに外来遺伝子を組み込み、そのウィルスを細胞や組織に取り込ませて外来遺伝子を発現させる技術)、

がん組織に分布する自律神経の遺伝子を操作し、その機能をコントロールする「局所神経エンジニアリング」を開発しました。

 

この技術を用いてマウス乳がん組織に分布する交感神経を刺激すると、原発がんのサイズは時間とともに増大し、

60日後には、何もしない状態の約2倍の大きさになり、遠隔への転移が増える一方、

逆にがん組織に分布する交感神経を除去すると、原発がんの増大と遠隔転移は抑制されました。

 

こうして自律神経の働きを操作する技術を応用すれば、自律神経を操作してがんを抑制しうる、

“がん神経医療”という新たな治療分野を開ける可能性があると神谷氏は語っているとのことです。

 

<文 献>

Kamiya A., Hayama Y., Kato S., Shimomura A., Shimomura T., Irie K., Kaneko R., Yanagawa Y., Kobayashi K. & Ochiya T., 2019  Genetic manipulation of autonomic nerve fiber

 innervation and activity and its effect on breast cancer progression, in Nature Neuroscience, vol.22, no.8, pp.1289-1305.

 

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27年ぶりに昏睡から覚める!

2019-04-27 22:39:00 | 健康・病と医療

今朝の朝日新聞によると、UAEで、交通事故で強く頭を打ち昏睡状態になった当時33歳の女性が、昨年6月、27年ぶりに覚醒し、現在は会話ができるまでに回復し、リハビリ治療を続けているとのニュースが報じられていました。すごいですね。
 目を覚ましたきっかけは、事故当時も一緒に車に乗っていた息子さん(当時4歳)が、この母の入院していた病院で口論していたことのようで、それに対し音を立てて反応し、3日後には息子さんの名前を呼んだのだそうです。これまたすごいことですよね。

昏睡によって、あるいは昏睡の間、脳の神経細胞たちはどうなっていたのか、どうしていたのか、興味は尽きません。続報をぜひ聞きたいです。

 


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