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自律神経が、がんの帰趨を左右するという画期的な発見

2019-08-03 19:36:59 | 健康・病と医療

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)細胞生理学分野の神谷厚範教授は、

国立がん研究センター客員研究員で東京医科大学医学総合研究所の落谷孝広教授、

国立がん研究センター 中央病院の下村昭彦医師、福島県立医科大学の小林和人教授および加藤成樹講師らと共同で、

国立がん研究センターで治療を受けた乳がん患者29人のがん組織を調べた結果、

 

自律神経(交感神経)が、乳がんの増大に伴って、がん細胞を取り巻くように乳がん組織内に入り込み、

がんの増大や転移に強い影響を及ぼすことを発見しました。

そして、乳がん組織の交感神経密度の高い患者群は、交感神経密度の低い患者群に比べて予後不良であることも発見しました。

 

さらにはウィルスベクターを局所注射することによって

(つまりウィルスに外来遺伝子を組み込み、そのウィルスを細胞や組織に取り込ませて外来遺伝子を発現させる技術)、

がん組織に分布する自律神経の遺伝子を操作し、その機能をコントロールする「局所神経エンジニアリング」を開発しました。

 

この技術を用いてマウス乳がん組織に分布する交感神経を刺激すると、原発がんのサイズは時間とともに増大し、

60日後には、何もしない状態の約2倍の大きさになり、遠隔への転移が増える一方、

逆にがん組織に分布する交感神経を除去すると、原発がんの増大と遠隔転移は抑制されました。

 

こうして自律神経の働きを操作する技術を応用すれば、自律神経を操作してがんを抑制しうる、

“がん神経医療”という新たな治療分野を開ける可能性があると神谷氏は語っているとのことです。

 

<文 献>

Kamiya A., Hayama Y., Kato S., Shimomura A., Shimomura T., Irie K., Kaneko R., Yanagawa Y., Kobayashi K. & Ochiya T., 2019  Genetic manipulation of autonomic nerve fiber

 innervation and activity and its effect on breast cancer progression, in Nature Neuroscience, vol.22, no.8, pp.1289-1305.

 

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