心身社会研究所 自然堂のブログ

からだ・こころ・社会をめぐる日々の雑感・随想

ポリヴェーガル理論はノーベル賞候補か?

2023-08-25 13:11:18 | ポリヴェーガル理論

スティーブン・ポージェスがポリヴェーガル理論に則って作成したSSP(Safe and Sound Protocol)を請け負う

UNYTEのホームページに7月4日に投稿された、レベッカ・ノウルズという人の論考によると、

 

ポリヴェーガル理論の提唱者スティーブン・ポージェスは、

最近、Research.com が5月8日に発表した「最優秀心理学者」(Best Psychology Scientists)のPsychology分野で、

36,052件の被引用数と237の出版物により、アメリカ人で655位(全世界で1028位)にランクされました。→こちら

ポージェスは心理学だけを専門としない科学者であることを考慮すると、この数字はいっそう意義深いものとなってきます。

 

そんな分野横断的な彼の研究の影響力を示す一端として、AD Scientific Index 2023によれば、

彼の論文で最も多く引用された、1997年の『Psychophysiology』誌に掲載された「心拍変動: 起源、方法、解釈上の注意点」は4409件引用され、

次に多く引用された、生物学的心理学におけるポリヴェーガル理論について説明した2007年の論文「The Polyvagal Perspective」は3526件引用された、

といったところです。

 

さらに、完璧とは言いがたいものの、研究者の科学論文の到達点と影響力を表わすもう一つの指標である、

AD Scientific Index 2023のH-indexでも、ポージェスは名誉ある数字を示しています。→こちら

 

H-indexは、当の研究者が執筆した論文のうち、少なくとも同数の引用を受けた論文の数によって計算されるものですが

(例えば、H-indexが10というのは、著者の出版物のうち10本以上が10回以上引用されていることを意味します)、

ポージェス博士のH-indexは99で、51000回以上の引用がなされていることになります。

そしてこれほど高いランキングは、何と、ノーベル賞受賞者を含む世界的な科学者に限られるのだそうです。

 

それはそれですばらしいことですが、

でもノーベル賞は人気投票ではないのだから、引用件数だけで決まるような単純なものではなく、

大事なのは、その引用した多くの論文の方が、いかに科学的に意味のある研究へと結実しているかということです。

今回のノウルズ氏の論考は、あくまでSSPを請け負うUNYTEサイトの、

プロモーション・ライティングでもあることは留意しておかないといけません。

 

 

<文 献>

Knowles, R.,2023  Revolutionizing the study of the autonomic nervous system : the growing legacy of Dr. Stephen Porges, posted July 4, 2023, on 

        https://integratedlistening.com/blog/revolutionizing-the-study-of-the-autonomic-nervous-system-the-growing-legacy-of-dr-stephen-porges/

 

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4万6000年の仮死状態の眠りから覚めて繁殖をくり返す線虫

2023-08-10 23:15:07 | 生命・生物と進化

シベリア北東のコリマ川の永久凍土で、4万6千年間にわたり「クリプトビオシス」(cryptobiosis)と呼ばれる仮死状態で過ごしたとみられる線虫が、

発見時には全く代謝が検出できない状態だったのが、シャーレのうえで動き出し、みごとに復活したことを

ドイツやロシアなどの研究チームが発表したとの驚くべきニュースが報じられました。

 

動き出した線虫は単為生殖で増えるため、次々に繁殖をくり返して、100世代以上もの繁殖に成功し、数千匹に増えたとのこと。

DNAの解析から新種であることも判明し、「パナグロライムス・コリマエンシス」(Panagrolaimus kolymaensis)と名づけられたとのことです。

 

もちろん、水や酸素がなかったり、極端な温度にさらされたりする厳しい環境になると、長期間にわたり仮死状態になって耐える生物は、

これまでもクマムシやワムシなどが知られていますが、今回の線虫の仮死状態の期間ははるかに長いとのことです。

 

脊椎動物が背側迷走神経複合体で行なう不動化の反応の、無脊椎動物における極限的な形での表現ということができましょう。

 

 

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訃報:立岩真也さん逝く!

2023-08-02 10:59:32 | ごあいさつ

立岩真也さんが7月31日午後、悪性リンパ腫のため京都市左京区の病院で死去されたとのこと。享年62歳。

大変驚き、かつショックを受けました。

 

立岩さんとは、1980年代半ば、施設に閉じ込められていた重度身体障がい当事者たちが、

施設を離れて地域で自立生活を決行し始めた頃、

その彼らの支援をし、介助に入って半ば生活を共にし、

共に闘い、共に怒り、共に悲しみ、そして何より共に笑い合った夢のような時代に、

そう、今の私の原点の時代に、

同じ当事者宅に関わることのあったお1人でした。

 

立岩さんが最初に公刊された、安積遊歩さんたちとの共著『生の技法』の中にふんだんに載せられた、

たくさんの写真の群れの中には、当事者宅で私の制作した物も収められています。

つい最近のような、はるか遠い昔のような、あの当時の光景を思い浮かべるにつけ、

言葉を失うほかありません。

 

心よりご冥福をお祈りします。

 

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