新古今和歌集の部屋

六百番歌合

攝政太政大臣家歌合 
六百番歌合 34首


 通称六百番歌合。藤原良経が、左大将の建久4年(1193年)に歌人12名に百首を提出させて行われた歌合で判者は俊成。春15、夏10、秋15、冬10、恋50題で、歌人は季経、兼宗、有家、顕昭、家房、経家、隆信、寂蓮、家隆、慈円、良経、定家。


 第一 春歌上
23 余寒 攝政太政大臣
空はなほかすみもやらず風冴えて雪げにくもる春の夜の月


37  春曙 藤原家隆朝臣
霞立つすゑのまつやまほのぼのと波にはなるるよこぐもの空


58  春曙 寂蓮法師
今はとてたのむの雁もうちわびぬおぼろ月夜のあけぼのの空


82  野遊 藤原家隆朝臣
おもふどちそことも知らず行き暮れぬ花のやどかせ野べの鶯


第二 春歌下
147  残春 攝政太政大臣
吉野山花のふるさとあと絶えてむなしき枝にはるかぜぞ吹く


第三 夏歌
251  鵜河 前大僧正慈圓
鵜飼舟あはれとぞ見るもののふのやそ宇治川の夕闇のそら


252 鵜河 寂蓮法師
鵜飼舟高瀬さし越す程なれやむすぼほれゆくかがり火の影


260 夏衣  攝政太政大臣
かさねても涼しかりけり夏衣うすきたもとにやどる月かげ


第四 秋歌上
359  秋夕 攝政太政大臣
物おもはでかかる露やは袖に置くながめてけりな秋の夕暮


377 稲妻 藤原有家朝臣
風わたる淺茅がすゑの露にだにやどりもはてぬ宵のいなづま


第五 秋歌下
453  秋田 前大僧正慈圓
わきてなど庵守る袖のしをるらむ稻葉にかぎる秋の風かは


531  柞 攝政太政大臣
柞原しづくも色やかはるらむ森のしたくさ秋ふけにけり


532  柞 藤原定家朝臣
時わかぬ浪さへ色にいづみ川ははその森にあらし吹くらし


544  暮秋 攝政太政大臣
立田姫いまはのころの秋かぜにしぐれをいそぐ人の袖かな


第六 冬
602 秋霜 前大僧正慈圓
もみぢ葉はおのが染めたる色ぞかしよそげに置ける今朝の霜かな


第十 羇旅歌
942  旅戀 前大僧正慈圓
東路の夜半のながめを語らなむみやこの山にかかる月かげ


第十二 戀歌二
1082 初戀 藤原定家朝臣
靡かじなあまの藻鹽火たき初めて煙は空にくゆりわぶとも


1087 忍戀 攝政太政大臣
洩らすなよ雲ゐるみねの初しぐれ木の葉は下に色かはるとも


1118 寄河戀 寂蓮法師
ありとても逢はぬためしの名取川朽ちだにはてね瀬々の埋木


1131  寄草戀 中宮大夫家房
逢ふ事はいつといぶきの嶺に生ふるさしも絶えせぬ思なりけり


1132 寄煙戀 藤原家隆朝臣
富士の嶺の煙もなほぞ立ちのぼるうへなきものはおもひなりけり


1138 曉戀 藤原有家朝臣
つれなさのたぐひまでやはつらからめ月をもめでじ有明の空


1141  祈戀 攝政太政大臣
幾夜われ波にしをれて貴船川そでに玉散るもの思ふらむ


1142 祈戀 藤原定家朝臣
年も經ぬいのるちぎりははつせ山をのへの鐘のよそのゆふぐれ


第十三 戀歌三
1223 契戀 前大僧正慈圓
ただ頼めたとへば人のいつはりを重ねてこそは又も恨みめ


第十四 戀歌四
1291 寄席戀 藤原定家朝臣
忘れずはなれし袖もや氷るらむ寝ぬ夜の床の霜のさむしろ


1292  別戀 藤原家隆朝臣
風吹かば峯に別れむ雲をだにありしなごりの形見とも見よ


1304 寄木戀 攝政太政大臣
思ひかねうちぬる宵もありなまし吹きだにすさめ庭の松風


1305 寄風戀 藤原有家朝臣
さらでだにうらみむとおもふ吾妹子が衣の裾に秋風ぞ吹く


1310 寄風戀 攝政太政大臣
いつも聞くものとや人の思ふらむ來ぬ夕暮のまつかぜの聲


1311 寄風戀  前大僧正慈圓
心あらば吹かずもあらなむよひよひに人待つ宿の庭の松風


1321 寄虫戀 寂蓮法師
來ぬ人をあきのけしきやふけぬらむうらみによわるまつ虫の聲


1327  尋戀 前大僧正慈圓
心こそゆくへも知らね三輪の山杉のこずゑのゆふぐれの空


1330  曉戀 前大僧正慈圓
曉のなみだやそらにたぐふらむ袖に落ちくる鐘のおとかな

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