パンの仏道日記

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屋良朝博さん(沖縄タイムス論説兼編集委員)の講演「沖縄海兵隊のグアム移転問題について」

2010-05-21 02:44:12 | 普天間問題
屋良朝博さん(沖縄タイムス論説兼編集委員)の講演 テーマ:沖縄海兵隊のグアム移転問題について  2010年3月17日

【湾岸戦争の時に、米軍は全軍で約50万人を動員しました。そのうち海兵隊は約9300人です。3か月から4か月かけて、この兵員をサウジアラビアに空輸しました。このときヘリコプター177機、ジェット機や輸送機194機を持って行きました。沖縄から参加した海兵隊員は、わずかに2000人です。これは民間機による輸送です。
 それでは普天間基地にはどのくらいの航空機があって、どのくらいの輸送能力があるのでしょうか。そうしたことが理解された上で議論されているのかが疑問です。普天間基地にはCH-46中型ヘリが23機あります。CH-46は乗組員が3人で、輸送できる兵員は25人です。掛け算をすると輸送人員は575人です。CH-53大型ヘリは4機しかありません。乗組員は2人で、輸送できる兵員は37人、総員は148人です。この2つの機種を合わせて、700人程度です。また米軍再編では岩国基地に移転することになる、KC-130空中給油機が12機あります。この機は兵員も輸送することができて92人です。掛け算すると1100人です。ヘリと飛行機を合わせて約1800人ですね。普天間基地の兵員輸送能力は2000人弱なのです。その2000人弱の輸送能力しかない普天間基地をどうするのかで、14年間も議論をしているのです。この他にも攻撃ヘリや連絡ヘリ、セスナ機がありますが、これらは輸送能力には関係ありません。
 海兵隊は名前の通り、海の兵隊です。船に乗って移動します。ところが沖縄はサンゴ礁に囲まれていますから、いい軍港がありません。ですから海兵隊のための強襲揚陸艦は長崎県の佐世保にいます。強襲揚陸艦にヘリやジェット機を乗せて、太平洋地域を巡回していくのです。】

【今年2月18日付の読売新聞に、面白い記事が出ていました。太平洋海兵隊のキース・スタルダ―司令官の話です。専門家による沖縄の海兵隊には緊急時の展開能力がないとされているがとの指摘に対して、スタルダ―司令官は「空軍の輸送や商業船の調達によって、いかなる緊急事態にも対処できる」と答えています。沖縄の海兵隊はそもそも、空軍の協力や商業船の調達が前提になった兵力の配備なのです。しかし沖縄には、海兵隊を運ぶための輸送機はありません。しかも商業船はどこから調達するのでしょうか。有事の際に、日本の民間船舶を米軍が調達することはできないでしょう。ですから有事の際には、大きな部隊は米本国から来るのです。その場合、米本国から人の乗っていない輸送機を沖縄に飛ばして、沖縄で兵員を積んで戦地に派遣するという手間をかけるでしょうか。最初から米本国で兵員を積んで戦地に向かったほうが早いのです。また司令官は日本駐留を疑問視する指摘に対しては、北朝鮮や台湾海峡に近い立地条件をあげて「単なる勘違い」としています。しかしどちらが勘違いでしょう。】

【米国防総省監察官事務所は、海兵隊はグアム移転で年間465億円のコストが余分にかかるといっています。これは星条旗新聞に掲載されています。日本から移転すると、日本政府からの「思いやり予算」が減ってしまうため、これくらいの余分な負担がかかるのです。
 ワシントンポストの2008年1月の記事では、グアム政府は海兵隊の移転にともない、インフラ整備のために2000から3000億円がかかるとしています。人口増にともない電気・水道・ガスなどの整備を行わなければならないのです。米軍基地の中は、日米の予算で1兆3000億円が支出されて整備されます。しかし基地の外ではどうでしょうか。グアムからは下院議員が選出されていますが、議会での議決権がありません。グアムの下院議員は、ワシントンからお金を持ってくることができないのです。国防省の担当者は、グアムの最大の弱点は予算確保の難しさだと話しています。海兵隊にしても、最初は一定の予算が回ってくるでしょう。しかし10年・20年・30年後に、十分な予算を確保できるのかを心配しています。】

【グアムは、さまざまな地域からの中間地点にあります。しかしどの地域からも距離があるのです。そのために輸送力を高めなければなりません。その一つの手段が、高速輸送船です。いまはオーストラリアから1隻チャーターしています。これからはもっと、必要になるでしょう。航空輸送を向上させるために、オスプレイも導入しなければなりません。司令部はグアムで、手足は沖縄とハワイですから、通信コストなども余分にかかります。通信機能も高めなければなりません。お金がかかるのです。米国はイランやアフガニスタンに巨額を投じていて、海兵隊に予算を回してくれるのかが不透明なのです。】

【最後に、「こうすれば海兵隊は日本を離れられるのではないか」という私の提案です。1つ目は輸送支援です。2つ目は日米共同の民生支援です。3つ目は、先の2つをもって同盟の深化と位置付けるのです。これらを、沖縄問題を考える際の、知的作業の一助にしていただきたいと思います。
また先ほど見ていただいたように、海兵隊は6か月のローテーションで沖縄に来ます。本国から沖縄・グアム・各地の訓練センターを回って6か月を終えて本国に帰ります。ですから、最初に沖縄に来なければいいのではないでしょうか。沖縄を除いてローテーションすればいいのです。もし日米共同訓練を行うのであれば、沖縄よりも広い演習場のある本土の各地に行ってもいいでしょう。そうした回し方もありだと思うのです。そこで輸送コストがかかるのであれば、高速輸送船を日本がチャーターしてもいいでしょう。そうした「WIN WIN」を考えないで、「海兵隊は出ていけ」というだけでは、交渉が成り立ちません。そうした戦略的な対話をすすめていただきたい、沖縄の基地問題を考えていただきたいと思います。
 海兵隊は米軍の中で一番小さい組織です。さらにその一部の普天間基地のために、一国の首相が首を賭けるかどうか、これは不思議なことです。】


なるほど。総理の腹案ではないかとされるローテーション案は、もしかしたら、このことかもしれないですね。
【沖縄を除いてローテーションすればいいのです。もし日米共同訓練を行うのであれば、沖縄よりも広い演習場のある本土の各地に行ってもいいでしょう。そうした回し方もありだと思うのです。そこで輸送コストがかかるのであれば、高速輸送船を日本がチャーターしてもいいでしょう。】と。

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