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ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

症例報告について、質問や疑問に回答ー1

2021年10月01日 | 裸蹄管理

 今回のカンファレンスでは、症例報告中に質問がチャット形式で送られてきて、これ多分自分用の質問でしょう、というのに文書で回答する、という形式が採られました。しかし、文書の回答って、ツイッター並みの小文で、回答として不十分だなあと。ので、多分こんな質問でしたっけ?というのにもそっと詳しく回答してみます。

1)白癬症との確定診断の根拠は?

蹄スワブを白癬菌検出培地(ダーマキット)に植えて真菌培養したら陽性が出た事。但し、これは今なら直接鏡検で調べたほうがよかったかなと思っている。直接鏡検のテクニックを手にれないと・・・・・。実は、意外と簡単でフィールドでもできそうなんですよ。いや、サンプリングだけやって病院で調べて別にいいとは思うんですが。もう一つは、テルビナフィンにがっちり反応した、これに尽きます。サンプリングの手法は後程詳しく解説する予定。

2)ただ、時間が経過しただけなのでは?

テルビナフィンを投与する以前~投与開始後1年間は、削蹄裂蹄、蹄叉もグダグダの繰り返しでした。だから、「時間が経過して、たまたまよくなっただけじゃん」と言いたいんでしょうけど。あのですね、このぐだぐだは、過去5年間繰り返されてたわけ。その繰り返しがストップしたんだから、経過とは言えないんです。その理由を以下に。

 水虫や皮膚びらん等々、皮膚系の疾患はついつい外用薬でどうにかしたくなるんですが、びらん以上組織に病原体が食い込むと、外用薬だけじゃとても無理、内用薬で何とかしなくちゃなりません。爪水虫の場合、こんな感じです。

これは人間のケースですが、白癬菌が実際にいる部位はどこかというと、変色したり変形した場所じゃないんですよ。そこではすでに消滅してます。餌のケラチンを食べつくしちゃってるから。で、もっと奥の一見きれいな場所に食い込んでいる。動物の皮膚白癬だと、最初円形ハゲができたって連れてこられて、円形ハゲの中心部をサンプリングしても、すでにそこにはいない。どこにいるかというと、辺縁の毛が生えている部位。だから、外用薬も辺縁につけないと意味ない、ついつい剥げてるとこにつけたくなりますけど、それじゃ意味なし。どんどん広がってしまう。

 爪の場合、一見きれいな場所に食い込んでるから、サンプリングするとなったら生爪剥がすみたいなことをしなくちゃならない。

 で、こんな場所に届く外用薬なんぞありませんから(最近は出てきてはいますが、薬価10万円以上/5ml)内用薬で爪床から侵入を阻止する。テルビナフィンは角質移行に優れているし、いったん浸透したらその場に留まって効力を発揮し続けてくれる。しかーし、爪全体に寄生感染が広がっていると、テルビナフィンがのっかった爪に生え変わるまでは同じことの繰り返しになるに決まってるんです。爪自体は死んだ組織だから、治療に応じて即治るなんてことは起こらない。

 蹄の場合どうかというと、

 これは蟻道の例ですが、ボロボロになった箇所には、すでにいない。だから、表面の荒れてる場所からサンプリングして培養したって、コンタミばかりで白癬菌なんかひっかけられるわけがない。削って一見白くてきれいになった、箇所に実は潜んでいるので、そこからサンプリングする。逆に言うと、きれいになったとこまで削蹄したから大丈夫、ではない。その場所にこそ白癬菌がいます。だから、何の解決にもならない。むしろ、症状を進行させてしまう恐れすらあるのだ。削蹄してきれいになった~~、のに2週間後には逆戻り、は、それが理由です。


症例報告してみた

2021年09月29日 | 裸蹄管理

 社台ホースクリニック様主催のカンファレンス、今年はZOOMでオンラインなので、参加できそうかなと思って抄録をつくって送ってみたら、通ってしまった。無理かもと思ってたんですが。なので、自馬さんの症例を報告することに。いやあ、大変でござんした。

 パワポ原稿をつくるのに一苦労。困るんす、毎回えーと何年ぶりだっけ?みたいな。一から操作法を思い出さなくちゃならない。パワポ自体はとても使いやすいソフトなんですけども・・・・。今回は、更に使いやすい方法を発見して、ホント、こりゃ便利。昔々のスライド原稿なんぞよりか、クオリティが断然違うんですよね・・・・。パワポ自体も、こうしたオンライン会議等々に適合したソフトに改良を重ねているんでしょう。

 あとね、ヘンな話、馬獣医師が中心の場所に小動物臨床医が殴り込む(別にそんなつもりもないですけど)と取られてるんだか、どこか嫌がられてる感じがするんですよ。なぜ?鳥類臨研とかで、そんな雰囲気を味わったことがないもんで(いや、人間の歯科医の会合に紛れ込んだこともあるけど、別に何も言われなかった)よく知らん奴が外野からケチ付けるんじゃない、的な感じでしょうか?とはいえ、とにかく入れてもらったんだから・・・・。

 で、自分の前に蹄癌についての報告があったのだけど、聴いてて、あーこれも爪水虫の一病態だな、と。その先生は蹄癌が広がっている、と危機感をお持ちでしたが、そりゃ当然です。理由としては、ここ数年だと思うんだけど、とにかく装蹄師の数が減っている。従って、一人の装蹄師さんが日本中飛び回ってるわけ。装蹄の仕事が地域性のあるものではなくなっているのだ。で、仕事しつつ水虫菌をばらまいてるわけだ。日本中に広がるのも時間の問題じゃないかと思うのね。牛は既に極めてまずい状況に陥っているのだけど、帯広畜産の先生にこの話をしても取り合ってくれない。なぜ?

 蹄癌の特徴として、「梅雨時に悪化」があるそうで、もう、まんま水虫でしょ。人間の水虫だって、梅雨時にひどくなって、慌てて皮膚科に行って、薬もらって、夏にちょっと良くなる、そのまま忘れちゃって、それを繰り返す(これ、絶対にやってはいけません)ケースが多そうですけどね。

 で、水虫菌の検出ですが、うまくするとフィールドでやれそうなんです。以前はやり方がよく分からなくて、やむなく培地で培養なんてメンドクサイ&検出率低い方法しか使えなかったんですけど、今って

 こんなおもちゃみたいな顕微鏡があるから、これ+スライドグラス+ライター(ちょっとあぶって組織を溶解しやすくする)+KOH溶液+スライドグラス+カバーグラスで、白癬菌検出ができるのでは、と。検出できたら、即テルビナフィン投与開始、これを最低1年間連用+活性誘導水(これはねえ、もっと早く使い始めていれば、と後悔したもんです)&ナノソイで消毒・洗浄を繰り返すことで、必ず良くなります。蹄癌だろーが、蹄葉炎だろーが、蟻道・白線病、なんだって確実に治せる。

 ということで、困っている方、ぜひ当院へご相談ください。いっしょに治しましょう、治りますから。

 なお、今回の症例報告はウマ科学会でも発表する予定です。興味のある方は聴講ください。ご質問も受け付けます。


オリンピックで・・・・

2021年08月06日 | 裸蹄管理

 今回のオリンピックは、個人的な最悪事情があって、全く興味が持てなくなってるんですけども。開会式までの一連の騒動にもげんなりしたし、それと絡んだいや~~~な思い出を蒸し返される事態が起きてまして(青梅市の聖火ランナーに、かつて我々が中学生だった頃にその中学で暴力の限りを尽くしていた遠藤良宏という体育教師(つまんないことで生徒をぼこぼこにしてましたっけ。自分が卒業後、ワイドショーで叩かれてたけどね)が選ばれてて、奴のやってたことは小山田氏に匹敵する、いや、自分の立場を利用して暴力を振るいまくってたんだから、それ以上、そんな人物が聖火ランナーってどういうこと?組織員会は何考えてるの?)、もう、勝手にやってろよ、という気分なんですけど。そもそもこんな猛暑で馬を走らせるって、虐待まがいだよなあ。。。。。

 しかし、それなりに面白いニューㇲも耳にしました。

 障碍飛越で裸蹄馬が2位&4位。これは、ニュースでしょう。別に、裸蹄でも障碍飛越は普通にできる、という事。勿論、健康な蹄なら、ですが。

 自馬さんの裸蹄状況は、現在こんな感じ。こないだ、本当に久しぶり(多分5か月ぶりくらいじゃないかと思う)に削蹄師さんに削蹄、というか、蹄尖の蹄壁が剥がれた部分を切り詰めてもらいました。これは右前肢。

左前肢はこっち。

蹄尖のひび割れはまだまだありますね・・・・。そこをグルーガンで埋める。

 あとは、左前肢の蹄底。蹄尖が伸びるのに引っ張られて蹄叉まで延びちゃってたので、それをちょっと削ってもらって。やらないでほしいと頼んだのは、蹄壁のヤスリ掛けと、蹄底を削り込むこと。結局蹄尖を切って蹄縁部をちょと丸めて終わり。後肢はほぼ何もせず。蹄縁をちょっといじっただけ。仕事が少ないのは、この暑い時にはいい事だと思うんですよね。けどねえ、前肢の蹄尖、蹄壁が剥がれ落ちちゃってたにも関わらず、いや~~ガッチガチに堅いもんだから、当方の力では手に負えなくて。プロにやってもらうしかなかったので。削蹄直後にナノソイでガンガン消毒。削蹄師さんに嫌味っぽく取られるのは全く本意でないので、その時に獣医としての自分の診断治療について解説しましたが。削蹄師さんの仕事内容、じゃなくて、道具の衛生管理に問題あり、という件について。

 面白いんだけど、全然蹄底を削ってないのに、蹄の高さが全く変わってない。そもそも、蹄って必要以上に伸びるものではないんだと思う。「1か月に1㎝伸びます」っていうのは、爪水虫に対抗するため無理に伸ばしている結果。つまり、その伸び方は「異常」だということ。

 装蹄師さんは、不安そうでしたけどね、自馬さん自身は、めっちゃ調子いいから。蹄に問題あり、という雰囲気では全然なくなってきてるし。とにかく、その時その時の「見た目」が良くなるように、という削蹄はやめてもらいました。

 あれこれおかしい、とは言われたけど、その理由はなにか?前回やった削蹄がおかしいのか?違います。爪水虫のせいでもろくなった蹄は、本来の形を維持できない、から。「傾きマンション」みたいになっちゃってるってこと。本来のち密な蹄に生え変われば、勝手にいい方向にいく、はずで、それは後肢にはもう現れている。あとは前肢、特に左側ね。もうちょっとの辛抱じゃないかと。


裂蹄の補修

2021年02月27日 | 裸蹄管理

 蹄疾患の厄介な点は、「一回壊れてしまった蹄組織は元に戻らない」点でしょう。なぜって、蹄=爪=もう死んでる組織だから。死んでいる組織は当然ながら自己修復できない、これは爪水虫が完治しにくい一因でもあります。こういう場合、体の免疫反応は「組織ごと切り捨て」」という乱暴な方法をとるしかないので、蹄脱落が起きるんですね。

 脱落しなくても、白癬菌でボロボロになった蹄組織は体重や運動に耐えられず剥がれたり、めくれたり、白癬菌が食い込んだ箇所が抜け落ちちゃう(これが蟻道の正体)。対抗するにはどうすべきか、白癬菌自体には、前も書いた通り、テルビナフィンをはじめとした抗真菌剤の内服以外にありません。じゃあ、ぼろくなった蹄を修復するにはどうしたらよいか?

 これも、もう、色々やりました。巷で販売してる「蹄用の外用塗り薬」みたいな奴は、総じてダメです。白癬菌に食い荒らされてスカスカになった蹄組織の強度を上げることはしてくれないから。

 この目的にかなうものが、百均にあるとはねえ

 一つ目はこれ 要するに、マニキュアです。人間の爪に塗るのだもの。百均では山ほどマニキュアを売ってますが、速乾性の透明なトップコートを選びましょう。トップコートは一番強度が強いから。速乾性だと、すぐ乾くから楽。でね、初めてこれを使った時、蓋にくっついている付属のチャチい筆で塗れるんかい?と不安だったんですが、結論から言うと、全然大丈夫でした。存外広範囲を塗れる。蹄壁が剥がれ落ちてしまった箇所をこれで塗って強化します。剥がれるか?蹄の微細な穴に入り込んだマニキュアは落ちません。当たり前っちゃ当たり前なんだけど。。。。それに、剥がれたらまた塗りゃいいじゃないか。

 もう一つ、百均で使えるのはグルーガン&グルー。

ダイソーのグルーガンは¥300でしたけど、スティックは20本も入って¥100.安すぎ・・・・。ただ、百均のグルーガンは電源コードが必要です。安物だからなあ・・・・。ので、電源を取れない場合は、写真みたいな充電式がオススメ。馬が電線を踏んじゃったり、という面倒も回避できます。グルーはかなり熱くなるので、最初は心配したんですが、全然大丈夫だって。

 これで補修した蹄がこちら。

 グルーガンのいい点は、こうやって充填して、意外と落っこちない事(1週間~10日くらい全然大丈夫。騎乗や放牧しても落ちない)。それと、落ちる時にあとくされがない。ポロっと落ちて、蹄と中途半端にくっつき続けたりしない。ちなみに写真で蹄縁のテラテラ箇所はマニキュアを塗った場所です。蹄を美しく見せたければ、これでいじゃないですか。

 マニキュアを毎回塗っていると、かなり強度が上がるようです。


削蹄されてない馬の蹄

2020年11月22日 | 裸蹄管理

 ということで、知人宅のお馬さんの蹄。種類は道産子の雑種みたいなお馬さんです。背中が丸まっこいので、裸馬でそのまま乗って楽しめるタイプですね。そんなに運動してるってわけでもないです。

蹄壁ひび割れの一つもなし。丈夫な品種だから、で済ましていいんでしょうか?

 知人はこの人たちが生まれてからこっち、全くプロ削蹄師を入れず、時々縁をちょこっとヤスリで磨いている程度だという。普段いる場所は土で、すり減りやすい場所に住んでいるという訳でもない。で、これですよ。

 じゃあ、プロ削蹄師って何やってるんでしょうかね?

 結局、削蹄も「足し算管理」ってことかな。

 そうなんですよ。例えば、鹿だって、山にいるってことは、そもそも蹄が「すり減る」場所に住んでいるわけではないでしょ。でも、必要以上に伸び過ぎることもない。逆に奈良の鹿、アスファルトの道路をウロウロしてて、だから蹄病が蔓延して、なんて話も全然聞かない。普通に暮らしてるわけで。

 野生動物と家畜動物との違いを云々して蹄病の原因を考察する、こと自体が間違ってる。というか、言っちゃ悪いけど、今プロの削蹄や装蹄を一回でも受けたら即水虫菌をうつされる、と考えてよい。つまりまあ、世界中の牛馬の大半が水虫に罹患してるってことで、これを基準にして考えるから、見方を間違っちゃう。「普通」=「正常」ではない、のだから。

 ここんとこ、江戸時代あたりまで、米ってどうやって作ってたんだろうと考えてるんです。米=金だったわけだから、今よりずっとシビアだったのになあ、除草剤なし、肥料は人糞程度・窒素リン酸カリみたいな知識もなし、どうしてたんか?でも、こんな動画を見たら、ある程度納得できるんです。

ひょっとして、当時の農家さんて普通にヒマだったのかもなあ。これも、引き算管理ですけど。蹄も、色々あーだこーだやるほどおかしくなるような気がしてね。