みつい台周辺の花と蝶

みつい台周辺は未だ自然が一杯。
散策で出会った樹木や野草の花、蝶の姿を楽しんで。
(Ponちゃん)

番外編 エッセイ集 No6

2010年01月06日 | 特発性間質性肺炎

2010/1/6 日本全国に寒波襲来、大雪に見舞われている地域が多い中
関東だけは無風、快晴と穏やかな朝を迎えています。
昨年の今日、1/6は妻の葬儀の日、早いものであっという間に一年が過ぎました。

エッセイは残していったノートの最後のページの「おわりに」で締めくくります。
後で知ったのですが、妻も医療関係者の一員、自分の不治の病のことを、十分
認識していたようで、死の前年に書き記したよう。

生前は、このことは一言も聞いたことことはありませんでした。
本人は生きたい願望を最後まで言い通していましたが、現代の医学では的確な
治療手段が無く、救うことは叶いませんでした。残念です。

日を改めて、難病の間質性肺炎の発症の時からの診療、治療経過、投薬、看護面等、
患者さんにとっては酷な面があるかも知れませんが、参考になる事もあるかと思い、
整理しBlogにUPする予定です。


おわりに
古希を過ぎ、終いの日もそう遠くないことを認識するようになった。
長女、長男も結婚し、孫も四人となり命の継承も見た。
つれづれなるままに書き、散乱していた文章を、生きた日のあかしとして、
まとめてみようと思い立った。

あらためてふり返り、家族、両親、弟や妹、そのつれあい、友人、
知人のあたたかさの中で過ごした人生に感謝いっぱいである。

 平成19年 ・・・・・・(妻)                         H20/12/31 没

在りし日の思い出
保健師として市役所に在職。                          趣味の太極拳クラブ員と。

 
旅先にて                                北海道トラピスト修道院にて

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番外編 エッセイ集 No5

2010年01月05日 | 特発性間質性肺炎

間質性肺炎で逝った妻の遺品のエッセイ。
画像は 2010/1/3 妻が歩んだであろうエッセイの足跡を辿り撮影しました。


夕焼け小焼けの里で

晩秋の午後、急いで家に帰る用もなく私は開放された気分で八王子駅にいた。
北口に描かれている代表的な童謡「夕焼け小焼け」の壁画がはるかな郷愁をさそう。

夕焼けの空に鎮守の森、手をつないで家路をたどる子供たち・・、作詞者中村雨紅は、
八王子市恩方の人という。暮れなずむ夕焼けの空をいつか見たいと思った。
そのまま帰るつもりだったのが、陣馬高原下行きのバスが横切った途端、駆け足で
飛び乗ってしまった。

後悔めいた気持ちと、はやる心が入り乱れる。動悸の静まるのを待って後方の席に
腰をかけた。
市内の混雑を抜け三十分も走ると窓の外を田園風景が流れた。刈りきられた稲、
農家の縁側に干された大根、納屋に積まれた薪・・。
北淺川恩方ます釣り場が傾きかけた陽を受けてにぶく光っている。
間もなく八王子市の西部、夕焼小焼のバス停に着く。

 現在の「夕焼小焼」のバス停                        当時走っていたボンネットバス


「夕焼小焼の碑はどこなのでしょう」
白髪の品の良い老婦人が声をかけてきた。
「宮尾神社の境内らしいですね。左の方へ行ってみましょうか」
連れ立って北へ数分、落ち葉が積もった軟らかい土の感触を楽しみながら山道を上がる。

 宮尾神社への進入路(高留橋の脇)                        竹林の緑が映える山道


小高い山々は竹林の緑や、黄葉紅葉で空高く染まっていた。
「見事な紅葉」
「落ち葉のあざやかなこと」
思わず私たちは立ちつくした。はらはらはらと木の葉が舞い落ちる。淡いえんじ色
の柿の葉、濃いあかね色のもみじ、いちょうの木の下は黄色い絨毯である。

階段を昇ると、無人の宮尾神社があった。
 
                                                                        宮尾神社


人影もまばらな境内に詩碑は西日を背に受けて山並みをあおぐ位置にひっそりと
建っていた。

  夕焼小焼けで日が暮れて
  山のお寺の鐘が鳴る
  お手々つないて皆帰らう
  烏と一緒に帰りませう

                                                                      中村雨紅の「夕焼小焼」の石碑


碑を読んでふり返って眺めると、東に山ひだと重なりあって恩方の里が小さく見える。
私たちは東側のベンチに腰を下ろした。すでに村里は日陰であった。
遠くでからすが鳴き、にんじん畑で中年の夫婦が鍬を動かしている。
私の脳裏にふるさとの風景が重なった。
 
東側のベンチ                                       見渡した村里の風景


裏の畑で、学校の山で、砂ぼこりを浴び夕暮れまで遊んだ幼い日が鮮やかによみがえる。
夕焼けは。幼な心が初めてとらえた美しい風景であったように思う。
冷たい風が吹き渡った。落ち葉が葉裏を見せ、すぐに静寂が戻った。

「週三日、書道教室を開いて教え、俳句作りに今日のような小さな旅をする、老境の
日々を過ごさせていただいてます」
杖を使って立ち上がると老婦人はいった。

間をおいておだやかな声でつぶやいた。
「人生の夕暮れも輝いていたい」
私は黙ってうなずき、心の中で反芻した。

(人生の夕暮れも輝いて)静かに共感が湧きあがってきた。
西の空は夕照に輝き、山の上をまだらにおおう雲のふちを朱色に染め初めていた。

                                               おわり

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番外編 エッセイ集 No4

2010年01月04日 | 特発性間質性肺炎

間質性肺炎で逝った妻の遺品の一部、エッセイです。

父親似の娘

二十四年前の十二月に娘は生まれた。微弱陣痛で生まれた娘の小さな顔の中で、
真っ赤な鼻だけが目立ち、誰に似ているか皆目分からなかった。
鼻の赤みが薄れた十日目頃から、私は腫れぼったいまぶたの目もとが亡くなった
私の父に似ていると思ったが、友人は「あなたにそっくりね」と娘の顔をのぞき、
母は面ざしが夫の妹に似ているといった。

六ヶ月が過ぎた初夏夫が毎日のように撮った娘の写真の一枚を引き伸ばした。
訪ねてきた姑が写真を見詰めて「英雄そっくりね」と実感をこめていった。
やや広い額、太い眉、垂れ目。夫の額の三本のしわをとり、縮小してみると、
なるほどと娘の顔になった。

娘は成長するにつれ鼻の高さ加減まで父親に似てきた。夫が小学校の父兄会に
出席した時、初対面のひとから「・・・さんのお父さんですか」と声をかけられた
と得意がっていた。

   生後二日目の娘                         小学一年生


娘も中学生になると、父親似であることを自認し「お小遣いを期待します。
父親似の娘より」などと父親へのメッセージに記して効果を上げていた。

高校生になった娘は、親離れが急速にすすみ家族旅行なども敬遠しがちに
なったが、とくに父親が学校の行事に顔をだすことを喜ばなくなった。
「顔が似てるからみんなに分かっちゃうのよね」などといったりした。
娘の意を汲んだのか、仕事が多忙だったせいか、はっきりしないが、夫が
写した娘の写真の中でこの頃の写真だけがきわめて少ない。

      中学生(テニス部)                     高校生(ハンドボール部)


大学は寮生活となったので、留守番電話でのメッセージが多くなった。
「パパ、いつもお仕事ご苦労様、かぜをひかないでください。父親似の娘
・・・でした」などと娘の声が聞こえると、夫は満足そうに何度目かの
メモリーを押しながら、杯を干すのであった。

社会人となった娘は、毎日の仕事を一生懸命こなすことで、喜んだり、悲し
んだりしていたようであったが、昨年の晩秋、誠実そうな青年を連れてきた。
結婚を前提につきあっているという。
青年が席をはずしたとき「雰囲気がパパに似ているのよ」と、娘は複雑な
表情をした夫にささやいた。

今年の一月九日、夫へのバースデープレゼントが届いた。
「五十三歳の誕生日おめでとうございます、二十一世紀を生きていく人間
として、パパの娘として、誰よりもやさしく、誰よりも朗らかに、両親を
大切に生きて生きたいとおもいます。どうぞこれからも体に気をつけて、
いつまでも元気でいてください。・・・」
手作りのカードは、カルガモの親子が群れる中にワープロで書かれてあり、
父親似の文字はなかった。
夫は黙って杯を干し、私は再びカードの中に「父親似」の文字をさがしながら、
娘との別離を意識した。さびしさが込み上げてきた。

九月、娘は、はるかな福井県へ嫁ぐ。                  おわり       

  成人式 妻と子供達                       福井県へ嫁ぐ(新郎はマスクした)   


 (個人名は・・・で表記しました)



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番外編 エッセイ集 No3

2010年01月03日 | 特発性間質性肺炎

1/3 穏やかな三が日です。恒例の箱根駅伝、若者の活躍を見ながらBlogを編集してます。
妻のエッセイ集の続きです。

日曜日の朝

六時の目ざまし時計は鳴らない。今日は日曜日。市役所づとめの私の休息日、
覚醒しかかった私の脳細胞は安心して再入眠する。
午前十時、春の日差しが部屋にふりそそぐ。
「起きろ 起きろ、みな起きろ」
夫が私と長女の布団を剥ぐ。昨夜一週間ぶりに大学の寮から帰宅した長女は、
みの虫のように布団を巻いて防御する。
「寒いなぁ・リビング暖かい?」
「ああ、一時間前から暖房しているよ」
夫の返事に私は階段を駆け降りる。
「・・・、・・・ご飯よ、天気がいいからお布団ほしてね」
階段の下から二階に向かって私は叫ぶ。

トントントン。長女が降りてくる。二十一歳、彼女は三年の短大を三月八日
卒業予定。
トントントン。長男は寝惚けまなこだ。昨日までに何校か大学入試の結果が
発表になった。昨夜は遅くまで数人の友人が彼の部屋を訪ねていた。
一週間ぶりに家族そろっての朝食、豆腐とわかめの味噌汁が湯気を立て、
炊きたての御飯がつやつや光る。テレビは”タモリ”の「笑っていいとも」を
映している。

「わたしの卒業式にパパもママも出席するんでしょう。だったら式が終わったら
”みのち”におそばを食べにいこう、三人で」
長女が思いついたようにいった。
「いいわね。両親に三年間の感謝をこめて、あなたがご馳走してくれるの?」
私がからかう。
「いいわよ。貯金をおろしておくわ。みのちのおそば おいしいよ」
「パパ聞いた?、貯金おろすんだって!、豪華なおそば、楽しみね」
私は夫に同意をもとめる。
「ああ、いいね」
会社人間から解放された日曜日の夫は気のない返事をして顔も上げず新聞を
読み続ける。

四月から大学入学予定の長男が二膳目の茶碗を出しながらいった。
「スキーの道具一式、忘れないでね」
「約束のお祝いだからいいわよ」
山盛りの茶碗を返して私は答える。
「大学に入ったら小遣いはいいよ。バイトするから」
「助かる。そうして頂戴」

かたわらで長女が思案顔でつぶやいた。
「初月給で、おばあちゃんに何をプレゼントしようかなぁ」
他愛ないおしゃべりの中で、ふと子供たちの自主に触れたりする日曜日の朝食。
健康な四人の顔がそろい、ゆったりとした時間が流れるこのひとときは、私の心り
糧にもなっている。さあ、明日からも頑張って働こう、と、気持ちが充実する。
 (個人名は・・・で表記しました)                  
                                                                                    おわり
娘の卒業式(日赤短大戴帽式) この後「みのち」へ

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番外編 エッセイ集 No2(2/2)

2010年01月02日 | 特発性間質性肺炎

妻のエッセイ集 No2  1/1より続く


「雑種だから鳴くんだよ。器量も悪いね」
「目の上のかもめがおかしいよ」
睡眠不足の家族は悪口を言う。そのうえ息子は与三郎の名前をよく間違える。
「名前、なんだっけ? 権左ェ門などと呼ぶ。
「そうね、与三郎は器量が悪いんだから権左エ門でもいいね」
私も無責任に妥協する。こうして与三郎は権左ェ門と名が替わって呼ばれる
ようになった。

二か月後の初秋の夕、私は権左ェ門と散歩に出た。喜んで走り回る権左ェ門を
追いながら「権左ェ門どのォ」と歌舞伎調で私が呼ぶと、道行く人が不思議
そうな顔でふりかえる。私が気おくれした隙に、権左ェ門は、たちまち姿
を消してしまった。(しまった)私は鎖をはずしたことを後悔し
「権左エ門どのォ」とやや悲痛に叫んだ。

遠いところで「チビ、チビ」と呼ぶ子供たちの声がする。急いで近づくと
我が家の子供たちよりやや小さい小学校低学年の女の子に権左ェ門は
嬉しそうにじゃれていた。
おばさん家の犬?小さくて可愛いね」子供たちは「チビ、チビ」と歌うよう
に去っていった。

次の日、昨日の女の子が二人、我が家を訪ねてきた。
「チビにさわらせてくださぁい」門のところで声を揃えていう。その後も
何回か「チビ、チビと戯れていった。

いつの間にか私たちも権左ェ門をチビと呼ぶようになった。
我が家の愛犬の名は、目下「チビ」である。
生後九ヶ月チビはチビでなくなりつつある。
気まぐれな私たち家族は、今後「チビ」を何と呼んだら良いだろうか。

                                      おわり。
 小学生の娘に抱かれたチビ(権左ェ門) 1975年撮影

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番外編 エッセイ集 No2(1/2)

2010年01月01日 | 特発性間質性肺炎

2010/1/1 明けましておめでとうございます。穏やか朝を迎えています。
昨夜から孫の家に一泊し年越しをしました。

マンションですが素晴らしいご来光が見られました。

今年もこのBlogを宜しくお願いします。


暫く、妻のエッセイ集が続きます。娘が小学生時代の出来事を想いだし書いたようです。


愛犬の名前

昨年の春、我が家の愛犬「ブルブル」が事故死した。二度と生き物は飼うまいと
家族で話し合ったのに、主のない犬小屋が妙に気になって落ち着かない。そんな時、
市報の「子犬あげます」が目にとまった。

「可愛らしいかったらもらおうよ」
「今度は雄がいいね」夫と小学生の息子も急に活気づく。我が家から比較的近い
犬目町のAさん宅を選んで電話した。
息子が留守番に残り母、私たち夫婦、小学五年の娘と一家総出で子犬の主をたず
ねたのは、盛夏の日曜日の午後であった。

新興住宅の裏手に、やさしい目をした薄茶色り雌の子犬が寝そべっていた。
犬小屋の奥からのっそり出てきた雄の子犬はチョコレート色、足だけが白く、三角の
目の上にかもめが飛んでいるようなしわがある。雌犬のほうが可愛いい。私は
心で迷った。

「雄は父親似で器量がいい。器量がよいので与三郎と呼んでいます」
ごしゅじんは、私の心を見抜いたように語調を強めた。

やがて車に乗せられた、与三郎は心細げに娘に抱かれていた。
家についてからも与三郎は二晩鳴き通した。
「キャン、キャン」と甲高い声で一家中を起こした。  1/2に続く。

当時小学五年生の娘の絵日記から(モデルとなったワンちゃん)。


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番外編 エッセイ集 No1

2009年12月31日 | 特発性間質性肺炎

番外編です。
2009年も今日は大晦日、昨年の大晦日は難病(間質性肺炎)と闘っていた妻に
先立たれ、今年は淋しい幕開けの年でした。
遺品の中にいくつかのエッセイが見つかりました。
今日が一周忌にあたります。このBlogには相応しくありませんが追悼を兼ねまして
暫く続けてUpさせて戴くことお許し下さい。今日は命日、墓参に出かけます。
皆々様方、良いお正月をお迎え下さい。

先ず、最初は誕生の地の想い出を綴ったものです。


ふるさとの海
「磯節」の民謡で知られる大洗町は、わが国有数の海水浴場であった。
あかるく日の長い夏が来るとホテルや旅館の客室に灯がともり、歌声や
手拍子が近くの我が家にまで流れてきた。

この時季には浜辺まで歩いて二・三分の我が家にも親類の泊り客が増えた。
青空に入道雲が高く湧く日中の浜辺には、よしずばりの売店が並び氷水と
赤く書かれたのれんが潮風に揺れていた。
小麦色に陽焼けしたおばさんたちが香ばしい匂いをさせて、いかやとうもろ
こしを焼いていた。

砂浜ではビーチパラソルの花が咲き、すいか割りの子供たちの歓声もあがった。
波打ちぎわはひしめく人波でにぎわい、沖ではゴムボートや遊覧船が白波を
立てていった。
活気あふれる夏の海が私は大好きであった。

やがて短い夏が終わると海辺に建ち並ぶ家々はひっそりと静まりかえった。
訪れる人のいなくなった海辺に潮騒だけが響いていた。

寄せては返す波を見ていると、私の胸にもわびしさが染み渡っていったものだった。
いま、ふるさとの海は大洗港が建設され北海道の室蘭、苫小牧とダイレクトに
つながったと聞く。その周辺の海水浴場はどのようになっただろうか・・・。

故郷を出て二十五年、私の青春の思い出と共に浮かぶ大洗は、昔ながらの海の
まま遠い風景の中に鮮やかである。

 大洗町の生家と旅館・昔の海浜の位置(google earth より)


生家の跡地・現在は旅館の駐車場になっていた。                生家に近かった昔の防波堤
                                           防波堤の右側はかっては海水浴場でした。  


    最初に勤務した大洗海岸病院                     現在大洗港から出航しているサンフラワー号
  一生を看護婦・保健婦として世につくす                   茨城県大洗港と北海等苫小牧間を就航

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