高水分サイレージの発酵品質の改善
はじめに
近年収穫作業機の大型化により作業時間が短縮されたために高水分サイレージが増えています。
水分の高いサイレージにはどんな特徴があるのでしょうか。
1.高水分サイレージの特徴
高水分でサイレージが調製されると、酪酸菌の活性が高まり酪酸が生成されやすくなります。
また酪酸菌が増えると原料草中のアミノ酸を分解するので、アンモニア態窒素/全窒素%の値が高くなります。
農業青年のプロジェクト活動でわかったこと
サイレージの発酵品質を確認するためにタッパーに原料草をつめタッパーサイレージを作成し、粗飼料分析結果をまとめました(写真一)。
サイレージの発酵品質の判断には評価法のひとつであるVスコアを使用しました。
八十点以上が発酵品質の良いサイレージの基準となります。
水分とVスコアの関係をみると、水分が七十六%以上では、Vスコアがばらつき、八十点以下のものが多くなります(図一)。
このように原料草の水分が高くなると発酵品質が低下する傾向があるとわかりました。
Vスコアとは?
アンモニア態窒素/全窒素%、酪酸、酢酸の値で発酵品質を評価する方法。
2.高水分サイレージへの対応
やむを得ず高水分な原料草でサイレージ調製を行わなければならないことがあります。
そのようなときの対策として、ギ酸や乳酸菌を使用する方法があります。
農場での改善事例
A農場では高水分の、スラリー散布の原料草でサイレージ調製が行われていました。
前年までは乳酸菌を使用していましたが、水分八十%以上の原料草のため、発酵品質が安定しない状況でした。
プロジェクトのデータでは、ギ酸を添加したサイレージにおいてVスコアが低いサンプルはみられませんでした。
それを受け今年からはギ酸との併用が可能になるよう、ハーベスターにギ酸タンクを取り付ける台を設置しました(写真二)。
その結果、今年のサイレージはギ酸を使用し、.アンモニア臭もなく、良質なサイレージが作られました。
牛の採食暈も多くなったとの声が聞かれています。
今回はギ酸の例を挙げましたが、高水分サイレージの対応として、スラリー散布方法や植牛の改善等も有効ですので、普及センターまでお問い合わせください。