これはあつい!
そう、英国SF界を代表する俊英アステア・レナルズの第二長編は文庫本なのに1135ページ。掟破りの厚さ45mmもある堂々たる本なのだ。にもかかわらず全く退屈しなかった。電車で立って読むのに重さで手が疲れる難点があるものの、ホントに一気に読んでしまいたくなる。主人公タナーの一人称で語られる物語で、スカイズエッジ星から冷凍睡眠でイエローストン星の首都カズムシテイに敵を追ってやってきたタナーが次第に失っていた記憶を回復していき謎解きに至る物語なのだが、科学的背景の説得力も十分あり、予想を裏切るストーリイ展開で飽きさせない。前作「啓示空間」よりもコチラの方が私は高い得点を付けたい。今年読んだSFの中でもベストに数えられると思う。
レナルズの宇宙史世界で気に入っているのは、宇宙船が光速を突破できない事。従って宇宙を旅行するには数十年間宇宙船に乗っていなくてはならない。必然として冷凍睡眠や人間の長命化が必要で、初期の恒星船は世代型になっていた。現在は身体改造で長寿命となったウルトラ族が数キロの長さのある巨大恒星船で星間交易を担っている。恒星船はなんと流線型である。「真空中を走るのになぜ?」という話もあるが、光速に近いスピードで宇宙を航行すると、いかに部室密度が低くても粒子をかき分けて行く必要があるのだ。これは今までにない発想だと思う。
そんなわけで、まだ読んでいない方は是非どうぞ。「啓示空間」とは舞台を共有してるだけで別の話ですので、どちらが先でもいいですよ。
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