Prog-ING日記

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アイアン・サンライズ

2007-03-25 21:55:22 | SF本


イギリスSF界の俊英チャールズ・ストロスの邦訳第二弾である。デビュー作で邦訳第一弾のシンギュラリテイ・スカイズはかなり破天荒な物語でシンギュラリテイ宇宙の全体像を把握するのにかなり苦戦したが、シリーズ第二弾の本書は、「そんな無茶な」度が減少し、推理ドラマ仕立てのしっかりしたストーリー展開があり、エピソードの全てにちゃんと意味があります。


シンギュラリテイスカイ事件の数ヶ月後(レイチェルとマーチンが地球にやっと帰還出来た時から)から物語は始まる。時制は混乱するが、「アイアンサンライズ」事件そのものは、「シンギュラリテイ」事件より前に発生したモスコウ星系の主星が悪意のある第三者によって超新星爆発(鉄爆発)を起こして星系の数十億人があっという間に全滅した事件である。この事件の引き金になった新興勢力で非人間的合理性を持ち「エシャトン」に替わる「まだ生まれぬ神」を信仰するリマスタード勢力は、政情の主要人物のパペット化(精神支配)により、領土拡大を図っており、アイアンサンライズ事件のもみ消しのため、モスコウの星外に残った大使達を連続して殺害しようとしていた。


これに、気づいた国連がシンギュラリテイ事件から帰還して間もないレイチェル夫妻を事件の解明の為に徴用する。一方、モスコウ星系の中継基地にいて難を逃れた住民の中に、エシャトンの下部構造である「ハーマン」に無線接続していて、協力者となっている少女ウエンズデイがいた。今回の主人公はこのウエンズデイである。ウエンズデイがハーマンと協力し、最終的にジャーナリストのフランクやレイチェル達と合流して事件の解決に至る謎解きの物語となっている。


前作よりもアイデアの奇抜さは減少したものの、読み物としての完成度はアップしており、わくわくして読み進めるハードSFオペラに仕上がっております。


シリーズ第三弾も英語版では出るらしいので、展開に期待しています。


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