ただの映画好き日記

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誓約 / 薬丸岳

2017-09-22 | 本 薬丸岳


  誓約

  薬丸 岳 著     幻冬舎文庫 / 2017.4



  家庭も仕事も順風満帆な日々を過ごしていた向井聡の元に、一通の手紙が届く。
  「あの男たちは刑務所から出ています」。便箋には、ただそれだけが書かれていた。
  送り主は誰なのか、その目的とは。
  ある理由から警察にも家族にも相談できない向井は、姿見せぬ脅迫者に一人立ち向かうが。
  故郷、家族、犯した罪……。
  葬ったはずの過去による復讐が、いま始まる。





いつもの薬丸さんとは少し違った印象を持ちました。

生まれながらに顔に大きな痣があり、親に捨てられ施設で育った主人公は、強盗や窃盗、暴力の道へと進んでしまいます。
挙句、暴力団の男を失明させるほどの大怪我を負わせ、命を狙われる逃亡生活が始まりました。
そんなある日、老婆に出会い、食事をさせてもらうようになり、老婆の娘が2人の男に拉致され、陵辱され、殺されたことを打ち明けられます。
実は老婆はまだ50代、苦しみと憎しみのあまり、一気に老け込んでしまったのだと主人公は驚きます。

主人公も嘘を交えながら自分の状況を説明し、新しい戸籍を手に入れ整形手術をするしか道はないと話します。
ならば、その費用の500万円をあげるから、私の願いを叶えてと老婆に言われました…。
自分はガンを患い、残りわずかな命のため、犯人が出所するまでは生きられず、娘の仇を討つことはできない。
だから、代わりに2人を殺してと…。

新しい戸籍を手に入れ、顔を整形し、その後、真面目に働き妻と娘と幸せに暮らしていた主人公の元に手紙が届きます。
出所した犯人2人の住所が書かれており、いよいよ復讐の日がやってきたのでした。
だけど、2人を殺すことなど、今の自分にはできない…。
それに、老婆は亡くなっているはずなのに誰が手紙を?

ミステリー色が強いこともありますが、10代の頃から暴力ばかりの主人公が、新しい戸籍を手に入れ、顔を整形し、生まれ変わったかのように真面目に暮らす…、本当にこんなに変われるものかなー?とどうしても疑ってしまいました。
そういうこともあるのだろうとは思いますが、どうしても、過去の暴力的な印象が拭えず、気持ちが微妙になってしまいました。
でも、そう思われることを薬丸さんは承知なのだろうとも思いました。
生まれ変わって真面目に暮らす人もいるんだよ…と言われているような気がしました。

そしてラスト…、急いだ感が拭えず少し雑に感じました。
真犯人も真相も中盤には予想ができてしまい、ほぼその通りだったので拍子抜けです。
厳しいことを言ってしまうと、結局、老婆との約束は反故になってしまいますし、じゃー、500万円はどうなるの?と思いましたし、
現在の顔や名前が全国に知れ渡った以上、主人公は命を狙われるんじゃないのかな?と思いました。
それらのことは特に触れられておらず、主人公は全てを知った上で家族に受け入れるであろう…というラストでした。

もちろん、あのような約束を守ることは普通ならあり得ないと思いますが、そう思いつつもなんとなく納得できないというか…。
最終的には主人公も苦しんだからチャラってことになるのでしょうか…。
それと、娘の仇を討って(殺して)という気持ちになるとは思いますが、だからと言って、赤の他人に犯罪、しかも、2人も殺したら極刑になるようなことを頼むかなー?と思いました。
意地の悪いことを思ってしまいましたが、やはり、いつもの薬丸さんとは違ったかなと思いました。

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