ただの映画好き日記

観た映画と読んだ本の自分用メモ。

溺れる人魚 / 島田荘司

2007-02-04 | 本 島田荘司


  溺れる人魚  
 
  島田 荘司 著     原書房 / 2006.7



  名探偵・御手洗潔シリーズ最新刊!
  世界的なスイマーに奇矯な行動が目立ち始め、ロボトミー手術によって廃人のようにされてしまう。
  年を経て、彼女は一人きりとなり、ひっそりとピストルで自殺する。
  そのほぼ同じ時刻、はるか離れた場所で老医師が殺された。
  不可解なことに同じ銃から発射された弾丸が見つかった。
  彼はかつて天才スイマーにロボトミー手術を施した医師だった・・・。
  書き下ろし中編「溺れる人魚」をはじめ、戦争が残した冥い野望をあばく「人魚兵器」「耳の光る児」、
  そして『異邦の騎士』外伝ともいえる「海と毒薬」を収録。






『溺れる人魚』(書き下ろし)。
ロボトミー手術によって人生を奪われてしまった患者とその家族のお話です。
なんとも物悲しい、そして、憤りを感じる作品でした。
ロボトミー、もちろん聞いたことはありますが、今の時代に生きる者として、こんなにズサンな手術があったの??と信じられない思いがしました。
といっても、医学が進歩する為にあり得る過程とも言えるのだろうし、だからといって、生身の人間が犠牲になるのはどうなのか?とも思うけど、じゃ~、人間じゃなくて他の動物ならいいのか?ってことにもなっちゃうし、考えれば考える程、生きることや生きたいと願うことに、いやいや、今生きているこの瞬間に、過去に生きた人々への感謝の気持ちを持たなくてはならないな~と思う反面、「驕るなよ医者!」と強く思いました。

『人魚兵器』
ナチス・ドイツ時代、ベルリン・テンペルホフ空港の地下要塞で行われてきた人体実験についてのお話です。
にわかに信じられないような人体実験。
DNAやクローンは戦後の発見ではあっても、方向性は同じであり、有り難いことなのか基礎となったことは確かでしょう。
人間の卵子の細胞に動物の細胞を混ぜ、それを人間の卵巣に戻し、生まれてくる(であろう)半人半獣を兵器として使用するという何でもありの戦争に呆れ果てるばかりです。
その実験で得たデータや知識は今日に役立っている部分もあるのだろうけど、人間は神ではないということを思い知るべきで、やはり強く感じたのは、「驕るなよ」ということでした。

『耳の光る児』
遺伝仕組み換え実験中に起きた事故により、なんらかの影響を受けた母親たちから生まれた子供のお話です。
遺伝子組み換えについては、やはり、驕るなよという気持ちはあります。
ただ、医薬品などを考えると大量に作れて、しかも安価となると闇雲に「驕るなよ」とは言えなくなります。
また、食品についても、地球温暖化による作物の影響を考えると、その都度、その時々の環境に適した作物が作られなければ、人間は食べ物を失うのだろうな~と思うと、今は食べ物が豊富にあるから遺伝子組み換えはね~~とは言っていられないのかな~とも思います。

ただやはり、『溺れる人魚』のロボトミー手術、『人魚兵器』のクローンと同じく、人間の領域はどこまでなのか、人間が生きていく為にどうしても必要な研究なのか、他に道はないのか、それ程までに生きながらえなければならないのか・・・と、心のどこかで疑問に思います。
今回の短編集は、御手洗潔というよりも、著者である島田荘司さんの気持ちが色濃く描かれているように思いました。

あ、そして、最後に『海と毒薬』。
こちらは、石岡くんが御手洗に宛てた手紙という設定でした。
『異邦の騎士』で登場した石岡くんですが、読者から(石岡くんは御手洗事件を執筆している)送られた手紙により当時を思い起こし、そして、その読者からの手紙とともに、自分の気持ちの変化を御手洗に報告しています。
できれば、御手洗の返事を読みたかったところですが、短編ではありながら伝わるものがしっかりとあったお話でした。
『異邦の騎士』を読みたくなりました。


講談社BOXの大河ノベル2008に島田荘司氏登場です!
偶数月1作、奇数月1作の合計2シリーズの刊行のようです。
むむむ~~~、両方とも御手洗ものだと嬉しいけど、せめて、どちらかでも御手洗でよろしくです!
去年も毎月のように単行本が発売されたけど、来年はまさしく毎月発売されるんだな~と思うと、島田荘司氏はすごい!
私も必死についていきまっす!(笑)

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2 コメント

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購入しました (由美)
2007-02-06 01:22:39
こんにちは、izumiさん。
izumiさんの感想を読んで、さっそく購入しました。
おもしろそ~
ナチスドイツの人体実験の話がからんでくる本には皆川博子の『死の泉』という長編があるのだけれど読んだかな~?
これはすごかった!!「このミステリーがすごい!!」でもたしか1位になったんじゃあなかったかな~
もし、機会があったらこの本もオススメですよ。
ちょっと本を最近たくさん購入したから島田さん、読むのいつになるかわからないけれど、解説を読むかぎりそそります。楽しみに待っていようっと♪
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由美さんへ (izumi)
2007-02-08 19:25:55
由美さん、こんにちは~。
おお~、購入しましたか~!
えっとですね~、面白いっていうのとはちょっと違うかもしてないですけど、私は読んでよかったな~という印象でした~。
皆川博子『死の泉』ですか?初めて聞きました~。
おお~、このミスで1位ですか?凄そうですね~。
ぜひ読んでみたいです。

由美さんもぜひ読んでみて下さいね~。
由美さんとご近所だったら貸し借りできたのにな~っていつも思っちゃいますよ~。
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