アノニマス・コール
薬丸 岳 著 角川文庫 / 2018.11
3年前の事件が原因で警察を辞めた朝倉真志は、
妻の奈緒美と離婚、娘の梓と別居し、自暴自棄な生活を送っていた。
そんなある日、真志の携帯に無言電話がかかってくる。
胸騒ぎがして真志が奈緒美に連絡すると、梓の行方がわからなくなっていた。
やがて、娘の誘拐を告げる匿名の電話が奈緒美のもとにかかってきて、
真志は過去の事件へと引き戻されていく。
一方、真志を信じられない奈緒美は、娘を救うため独自に真相を探り始め――。
誘拐犯の正体は?
過去の事件に隠された真実とは?
予想を裏切る展開の連続と、胸を熱くする感涙の結末。
社会派ミステリの旗手による超弩級エンタテインメント!
作家生活10周年記念作品。
私には大変珍しいことに、一気読みでした。
薬丸さんといえば少年犯罪もの(?)ですが、今回は誘拐ものでした。
主人公は特に魅力的でもなく、元刑事で、妻子と別れて、やさぐれて、というよくあるパターンの人物。
そんな主人公とほぼ初対面の酔っ払いの若造や、刑事時代に逮捕した元探偵、どれもこれも全くクリーンではない人物たちがチームとなり事件を解決する…。
そんな3人が誘拐犯と立ち向かう姿が少しずつ頼もしく見えたのが面白かったのかもしれません。
中盤くらいで、犯人はどの組織か?奈緒美の父親は関与しているだろうとか、肝心のところが判ってしまいます。
事件から3年が経ち、今頃になって、真相云々になるだろうか?
警察は事件をもみ消す事は朝飯前でも、さすがに子供を誘拐するわけはないだろう、
大物野党議員の身近な存在に誘拐やら身代金の受け渡しやらの頭の切れる者はいないだろう、
奈緒美の父親はキャリアではないけど警察署長にまでなれたのって?
と、簡単に想像できてしまっても最後まで面白かったです。
正義ってなんだろう?正しいってなんだろう?と少しの疑問を残しつつ、薬丸岳はやっぱり優しいなーと心が温まりました。