●ベッチー的映画三昧日記
主人公が最後の行動に至った胸の内、心の燃え上がりをどうみるか「バ―ニング 劇場版」
「ペパーミント・キャンディ」で韓国映画界のニューウェーブの旗手として一躍カルトファンを得たイ・チャンドン監督の8年ぶりの新作「バーニング 劇場版」。第71回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作で是枝監督の「万引き家族」とパルム・ドール賞を競ったという作品だ。日本つながりは、もう一つあって、本作の原作は村上春樹の短編「納屋を焼く」ということだ。
大学卒業後、アルバイトをしながら小説家を目指しているジョンスは、ある日幼馴染のヘミと再会する。ヘミの旅行中に猫の世話を頼まれたジョンスは餌やりのためヘミのアパートへ通うが猫と遭遇することはなかった。旅行先のアフリカから帰ったヘミを迎えに空港へ行くと旅先で知り合ったという男ベンを紹介され、男二人と女一人の奇妙な関係が続くようになる。ベンは正体不明だったが教養がありポルシェを乗り回し、高級マンションに暮らしていた。自分と何もかも境遇の違うベンに、ジョイスは言いようのない感情を持つ。ベンがジョイスに「自分はたまに古いビニールハウスを燃やしている。今、次の燃やす準備をしている」と語る。それからしばらくして、忽然とヘミが姿を消す。ベンの言動に不安を持ったジョイスは、ベンを付け回す…。
ヘミの失踪は自分の意思なのか事件なのか?ベンが燃やすビニールハウスとは?色々な事が、はっきりせず、曖昧な形で物語は展開していく。事象の解釈は観客に委ねられていていて、いかようにも考えられるようになっている。ジョイスが体験したことが現実なのか幻想なのか、はっきりしないあたりの後味の悪さは、村上春樹の小説でよく抱かされる感想である。しかし、村上春樹の原作小説が数ページの短編というから、かなりの部分は脚本も手掛けたイ・チャンドンの創作によるものだろう。
ミステリー要素はあるが、別に事件の顛末を明らかにしようとする意志は、イ・チャンドン監督にはないらしく、むしろジョイスが最後の行動に至った胸の内、心の燃え上がりを描きたかったようだ。
本作のタイトルが劇場版(本編148分)となっているのは、昨年12月末に劇場公開に先行してNHKで90分のバージョンがテレビ放映されているからだという。その短縮版を見逃してしまったことが惜しまれる。残念!
主人公が最後の行動に至った胸の内、心の燃え上がりをどうみるか「バ―ニング 劇場版」
「ペパーミント・キャンディ」で韓国映画界のニューウェーブの旗手として一躍カルトファンを得たイ・チャンドン監督の8年ぶりの新作「バーニング 劇場版」。第71回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作で是枝監督の「万引き家族」とパルム・ドール賞を競ったという作品だ。日本つながりは、もう一つあって、本作の原作は村上春樹の短編「納屋を焼く」ということだ。
大学卒業後、アルバイトをしながら小説家を目指しているジョンスは、ある日幼馴染のヘミと再会する。ヘミの旅行中に猫の世話を頼まれたジョンスは餌やりのためヘミのアパートへ通うが猫と遭遇することはなかった。旅行先のアフリカから帰ったヘミを迎えに空港へ行くと旅先で知り合ったという男ベンを紹介され、男二人と女一人の奇妙な関係が続くようになる。ベンは正体不明だったが教養がありポルシェを乗り回し、高級マンションに暮らしていた。自分と何もかも境遇の違うベンに、ジョイスは言いようのない感情を持つ。ベンがジョイスに「自分はたまに古いビニールハウスを燃やしている。今、次の燃やす準備をしている」と語る。それからしばらくして、忽然とヘミが姿を消す。ベンの言動に不安を持ったジョイスは、ベンを付け回す…。
ヘミの失踪は自分の意思なのか事件なのか?ベンが燃やすビニールハウスとは?色々な事が、はっきりせず、曖昧な形で物語は展開していく。事象の解釈は観客に委ねられていていて、いかようにも考えられるようになっている。ジョイスが体験したことが現実なのか幻想なのか、はっきりしないあたりの後味の悪さは、村上春樹の小説でよく抱かされる感想である。しかし、村上春樹の原作小説が数ページの短編というから、かなりの部分は脚本も手掛けたイ・チャンドンの創作によるものだろう。
ミステリー要素はあるが、別に事件の顛末を明らかにしようとする意志は、イ・チャンドン監督にはないらしく、むしろジョイスが最後の行動に至った胸の内、心の燃え上がりを描きたかったようだ。
本作のタイトルが劇場版(本編148分)となっているのは、昨年12月末に劇場公開に先行してNHKで90分のバージョンがテレビ放映されているからだという。その短縮版を見逃してしまったことが惜しまれる。残念!