●ベッチー的映画三昧日記
何を演ってもキムタクはキムタクだが、ホテルマンになりきろうとしたキムタクの本気度が見えた「マスカレ―ド・ホテル」
今最も実写映像化される作品の多い作家東野圭吾のベストセラー小説「マスカレード・ホテル」を木村拓哉と長澤まさみ主演で映画化したもの。
都内で起きた3件の殺人事件の現場に残された数字を解読した結果、次の犯行場所がホテル・コルテシア東京であることを突き止めた警察は、ホテルに潜入捜査をする。暗号を解読した刑事新田(木村拓哉)は語学力を買われホテルのフロントマンに扮することになったが、ホテルマンとしてのプライドを持つ指導係の山岸(長澤まさみ)とたびたび衝突する。しかしお互いのプロ意識を認め、次第に力を合わせて捜査を進めていく…。
推理小説の実写化は、二つのハードルがある。
映画は時間が限られており、まず多くの伏線の中から、どれを選び、どれを削るかが、ファンの満足度を掴む分かれ目になる。私は原作ファンのひとりであるが、本作では2時間10分の枠内にそれぞれのキャラの設定と事件、怪しい宿泊客のエピソードについて簡潔に過不足なく描かれて、シナリオ化はほぼうまくいったように感じた。
二つ目のハードルはキャスティングである。ベストセラーであればあるほど、色々な読者が主人公たちに自分なりの人物像を膨らませているから、読者の想像力を満たす配役は難しくなる。私は映画を観る前は主人公の新田役と木村拓哉のイメージが結びつかなかった。キムタクは何を演じてもキムタクになってしまい、本作でもやはり最後までキムタクのままだった。それを原作のエリートっぽい新田像をシナリオ段階でキムタクを意識した人物像にしたことで、あまり違和感なく観ることが出来た。珍しくキムタクが自慢の長髪をホテルマンらしく短くしたのは驚いた。「HERO」でも長髪で通したキムタクの本作に賭ける思いが伝わったように思えた。山岸役はもう少し若ければ吉田羊がドンピシャのイメージだが、長澤まさみもコメディ演技を封印し、凛々しく、芯の強そうなフロント職員をそつなくこなしていると思った。もう一人光ったのが新田の相棒だった能勢刑事を演じた小日向文世だ。彼はキムタク、長澤両人と最近もTVドラマで共演していたので気心が知れているのだろう。小日向とキムタクが絡んだシーンが特に良かった。小日向の飄々としていて、鋭い観察力を持ったコロンボのようなキャラがキムタク演じる直情型の新田を活かしていたように思える。
小説「マスカレード・ホテル」シリーズは3冊出ていて本作は第1作の映画化だ。第2作目は新田と山岸が主人公だが、1作目の前日壇で二人が直接遭遇しない話なので実写化は無理だろう。3作目は、再びホテルに潜入捜査に入るという話で、ほぼ1作目同様の事件展開でホテル内だけのグランドホテル形式の群像劇だけに、実写版第2弾としては苦しい。下手に第1作との違いを出そうとするとせずに、割り切って原作に忠実に描けば良いかも。
何を演ってもキムタクはキムタクだが、ホテルマンになりきろうとしたキムタクの本気度が見えた「マスカレ―ド・ホテル」
今最も実写映像化される作品の多い作家東野圭吾のベストセラー小説「マスカレード・ホテル」を木村拓哉と長澤まさみ主演で映画化したもの。
都内で起きた3件の殺人事件の現場に残された数字を解読した結果、次の犯行場所がホテル・コルテシア東京であることを突き止めた警察は、ホテルに潜入捜査をする。暗号を解読した刑事新田(木村拓哉)は語学力を買われホテルのフロントマンに扮することになったが、ホテルマンとしてのプライドを持つ指導係の山岸(長澤まさみ)とたびたび衝突する。しかしお互いのプロ意識を認め、次第に力を合わせて捜査を進めていく…。
推理小説の実写化は、二つのハードルがある。
映画は時間が限られており、まず多くの伏線の中から、どれを選び、どれを削るかが、ファンの満足度を掴む分かれ目になる。私は原作ファンのひとりであるが、本作では2時間10分の枠内にそれぞれのキャラの設定と事件、怪しい宿泊客のエピソードについて簡潔に過不足なく描かれて、シナリオ化はほぼうまくいったように感じた。
二つ目のハードルはキャスティングである。ベストセラーであればあるほど、色々な読者が主人公たちに自分なりの人物像を膨らませているから、読者の想像力を満たす配役は難しくなる。私は映画を観る前は主人公の新田役と木村拓哉のイメージが結びつかなかった。キムタクは何を演じてもキムタクになってしまい、本作でもやはり最後までキムタクのままだった。それを原作のエリートっぽい新田像をシナリオ段階でキムタクを意識した人物像にしたことで、あまり違和感なく観ることが出来た。珍しくキムタクが自慢の長髪をホテルマンらしく短くしたのは驚いた。「HERO」でも長髪で通したキムタクの本作に賭ける思いが伝わったように思えた。山岸役はもう少し若ければ吉田羊がドンピシャのイメージだが、長澤まさみもコメディ演技を封印し、凛々しく、芯の強そうなフロント職員をそつなくこなしていると思った。もう一人光ったのが新田の相棒だった能勢刑事を演じた小日向文世だ。彼はキムタク、長澤両人と最近もTVドラマで共演していたので気心が知れているのだろう。小日向とキムタクが絡んだシーンが特に良かった。小日向の飄々としていて、鋭い観察力を持ったコロンボのようなキャラがキムタク演じる直情型の新田を活かしていたように思える。
小説「マスカレード・ホテル」シリーズは3冊出ていて本作は第1作の映画化だ。第2作目は新田と山岸が主人公だが、1作目の前日壇で二人が直接遭遇しない話なので実写化は無理だろう。3作目は、再びホテルに潜入捜査に入るという話で、ほぼ1作目同様の事件展開でホテル内だけのグランドホテル形式の群像劇だけに、実写版第2弾としては苦しい。下手に第1作との違いを出そうとするとせずに、割り切って原作に忠実に描けば良いかも。